【人生最大のトラウマ】UFOキャッチャー(前編)

私は中学3年生まで、極度の人見知りでした。
より正確に言うと、女性と話すことが極端に苦手でした。

学校の男子学生とは問題なく会話できるのですが、女子生徒とは全くといって良いほど、会話ができません。

どれほど、会話ができないかと言うと、休み時間中に教室で話かけられた場合、切りの良いタイミングで用事を思い出したと言って(嘘)、休み時間が終わるまでトイレで籠城するほどでした。

高校生以降になってからはある程度解消されたのですが、
私は未だに妻以外の女性と会話をするのが得意ではありません。

何故こうなってしまったのか。
私には心当たりがあります。

今回は、私が女性と会話するのが苦手になったきっかけと思われる出来事であり、人生で初めてにして最大のトラウマエピソードをお話しします。


私の母は歌うことが大好きでして、よく会社の同僚や私の友達の親と一緒にカラオケに行っていました。

母は時々、私を連れてカラオケに行くのですが、私が人前に立つことが苦手だと知ってか知らずか、マイクを持たせて壇上に連れていきます。

壇上と聞いてピンとこない人がいるかも知れませんが、私が幼少期の頃の多くのカラオケボックスは部屋の隅に壇があって、マイクを握った人はその上で注目の的になりながら歌うのです。

今となってはカラオケが大好きな私ですが、幼少期の私は人前で話をすることが苦手で、ましてや歌を歌うなど以ての外でした。
母にマイクを持たされるのが嫌で嫌で仕方がなく、部屋中を逃げ回っていた覚えがあります。


さて、そんなある日のこと。
私が5歳の時の話です。

その日の夕方頃、母親に連れられてカラオケに行くことになりました。
メンバーは母と私、母の同僚とその子供達、合計で10人ほどでした。

その時に行った店舗は、ゲームセンターとバーとディスコが1つの建物内に存在するという、今となってはかなり珍しいカラオケ店でした。

個室に入った後、大人たちは順々にマイクを手に取って歌を歌います。
先の通り、私は歌う事がとにかく嫌だったので、マイクが渡ってくることにかなり怯えていました。

一通り、大人が歌って2週目、と思いきや子供達のターンになりました。
子供達はアンパンマンやドラえもんの主題歌を歌っています。
このままでは歌うことは避けられません。

私は母親の目を盗んで個室から脱出することにしました。

カラオケ以外に何か楽しい事はないだろうか?と店舗内を散策しているとゲームセンターに目が行きました。
レースゲーム、シューティングゲーム、UFOキャッチャー等、定番の筐体が所狭しと並んでいます。
しばらく、そのキラキラした光景に目を奪われていたのですが、
ふと、後ろを振り返ると、同い年くらいの女の子や幼い男の子達が私の跡をを着けてきていました。
大人達のリサイタルよりも私との冒険の方が魅力的に感じたのでしょう。
私達はゲームセンター内を散策することにしました。

とは言っても、誰もお金は持ってません。
やる事と言えば、ただ散策するだけです。

UFOキャッチャーは私達の背丈では何が置かれているか分からず、ただ下からクレーンを見上げるだけ…
たまに車やバイクのレースゲームを見つけるとお金を入れずにその筐体に乗っかって(アクセルに手足が届かないのに)雰囲気で遊んでいました。
今となっては、はた迷惑な話ですが…

 一通り、見終わった私達はやる事が無くなったので、仕方なくカラオケの個室に戻ることにしました。
トボトボと通路を歩いていると、通路の端に小さめのUFOキャッチャーが置かれていることに気が付きました。

このUFOキャッチャーは大人の腰程の高さで、左右の壁がガラス張りになっているので、小さい子供でも何が景品になっているのかよく分かりました。
景品はいずれも丸いカプセルで中に何が入っているかも一目瞭然です。

私はガラスに顔を押し付けるように一つ一つ景品を見ていたのですが、
あるカプセルに目が留まりました。

大人っぽい花柄模様のハンカチが入ったカプセル

私(絶対に取れる…)

幼いながらに確信しました。
私は子供達を残して大急ぎで個室に戻り、母に100円玉をねだりました。
母は親バカなので、すぐに資金援助してくれました。

大急ぎで件のUFOキャッチャーに戻ります。
私は改めてUFOキャッチャーの回りをよく観察し、どの位置にクレーンを移動すれば取れるかを的確に分析しました(5歳児です)

さて、後は実践あるのみです。
私は満を持して100円を投入しました。

クレーンがゆっくりと移動し、お目当てのカプセル上まで到達します。
私を見守るギャラリー(子供達)にも緊張が走ります。

クレーンがゆっくりと降下し、お目当てのカプセルをガッチリと掴みます。

私(取った!)

確信しました。間違いありません。
カプセルを掴んだクレーンはゆっくりとゴールまで進んでいます。
そして、ゆっくりと景品出口まで到達して…

「ガコン!」

という音の後に、楽し気なファンファーレが鳴り響きました。
私は見事、お目当てのカプセルを獲得したのです。
ギャラリーの子供達も大喜びでした。

私は人生で初めての挑戦と成功に、満面の笑みで達成感を味わったのです。




さて、いつまでも余韻に浸ってはいられません。
大手を振って送り出してくれた母親に、私の挑戦と成功を報告する義務があります。子供達もワクワクしながら私を見ています。
私は満足げに戦利品のカプセルを撫でた後、力いっぱいこじ開けました。





享年5歳。私は死にました。社会的に。





分析に分析を重ね、満を持して挑んだ挑戦。
それによって私が獲得したカプセルの中身は…
大人っぽい花柄模様のハンカチなどではなくありませんでした。



それは、大人っぽい花柄模様の…






Tバックでした。





もう一度言います。




Tバックでした。






茶葉を入れているやつ?
それはティーバッグですよね。
私が獲得したのは女性物の下着






Tバックでした。







1夜にして。いや、たった数分間で人生で初めての成功と人生最大の屈辱を味わうことになりました。

私はTバックを手に持ったまま、数秒硬直していたのですが、ハッと我に返りました。幼いながら、これを所持していることはあまりにもリスクが高いことだと確信したのです。

私は子供達に見えないようにハンカチをクシャクシャに丸めてポケットに突っ込みました。そして、子供達にはあくまでオシャレなハンカチであったと貫き通しました。

これ以上、UFOキャッチャーの傍にいると感づかれるかも知れません。
私の提案で、この場はでカラオケの個室に戻る事にしたのです。



長文駄文となりまして、大変申し訳ありません。
ここまで読んでいただきまして、本当にありがとうございました。

実はこの話はまだ続きます。
この続きも含め、私の人生最大のトラウマエピソードとなるのです。

本日はここまでとなります。
また次回お会いしましょう。


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