ループループループ

私はどうしてもそれを見ることができなかった。
それはきっと私が彼を許すことが出来なかったからだ。でも、本当は許すのは自分の方で──そして、彼は私のそんな葛藤を見越していたんだと、後から知ったのだけれど。

***
それから、一ヶ月半が経った頃。
私は、再び彼と二人で食事をしたり、話をしたりした。
気まずい空気、ぎこちない会話、何だかお互いにお互いを警戒して距離を取ってしまっているような雰囲気……それらが全て嘘のように感じられた。まるでついさっきまで、私達の間に横たわっていた見えない溝や緊張が嘘だったみたいに。そう思えるくらい自然に言葉は交わされ、一緒に笑ってもいた。
ただその最中にも時々あの時のことを思い出すことがあった。
私達は付き合っていたんじゃなかったんだろうかとか。
あれって本当に冗談なんかじゃなくて……キスをされたんだよな? なんてことを考えてしまう度に心臓の鼓動が強く早くなっていくようだった。だけど同時に「君とは幸せになれない」という言葉を思い出したりして。結局答えも見出せないまま時間だけが過ぎていき、気が付けばあっという間に三学期を迎えていた。……そして今。
3月6日金曜日。
朝から空は雲一つなく晴れ渡っていて、今日もまた暖かな春の陽射しに恵まれている。天気予報によると夕方からは天気が崩れるらしいのだが、今のところはまだ穏やかな春の気配が感じられるだけに留まっていた。
(そろそろ学校行かないと……。遅刻になる)
はっとして目を開ける。いつの間にかうとうとしていたようだ。
時計を見ると時刻は既に、、、あれ?
この記憶はなんだ?私は何をしている?
どうしてここにいいる?
あなたは誰?……そうだ、思い出した。私の名前は、橘真琴。
そしてここは…… 慌てて身体を起こすと同時に、頭の中でけたたましいアラーム音が鳴る。思わずびくっと肩を震わせてしまったほど大きな音が、辺り一面に鳴り響いた。
「え?」真琴は再び周りを見回す。……どう見ても自分の部屋であるそこはベッドルームだ。
「あぁ、夢か……」
ホッと胸を撫で下ろしつつ枕元のスマホに手を伸ばす。

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