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「大変申し訳」の大洪水。

週4回、コールセンターで、電話を取っている。

たいていは、お客さまから質問の電話がかかってきて、それに答えるわけだが、たまに即答できない内容がある。そういうときは一度電話を切って、調べて、回答が用意できたら、こちらから電話をかけなおす。

その先輩オペレーターは大ベテランだ。彼の手にかかれば、ゴネ気味のお客さまとの対話もすんなりと終わる。そんな彼が、こちらから電話をかけるときのことである。相手が出るなり、彼はこう言う。

「大変申し訳ございません、○○コールセンターの○○と申します。○○さま、いらっしゃいますでしょうか? 大変申し訳ございません」

少しの間のあと、電話の相手がかわる。

「大変申し訳ございません、○○でございます。先ほどは大変申し訳ございませんでした、お調べいたしましたのでご案内してもよろしいでしょうか?」

そして、用意した回答を伝え終わると、

「……というわけですので、大変申し訳ございませんが、そのようにしていただけますでしょうか。このたびは大変申し訳ございませんでした、○○が承りました。お忙しいところ大変申し訳ございません。失礼いたします」

彼の声は、とてもよく通る。でも、誰も、なにも言わない。この職場では、自分以外のなにかについて、言及するのは得策ではないのだと、私もようやくわかってきた。なにごとにも知らん顔をして、自分の手元にまわってきた仕事のみを、粛々と片付けるのが任務のすべてだ。

みんな、なにをそんなに避けたいんだろうな。(2020/01/20)

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