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小椋 杏
2015年3月26日 05:17
俺は寝不足で赤くなった目を擦って、油断すると漏れそうになる欠伸を噛み殺した。こんなことで依頼主の機嫌を損ねてしまっては、依頼料に響くかもしれない、そう考えたからだった。「……ここには嘘はひとつも混じっていないんですね?」 今日七度目の質問を、依頼主はまた口にした。そんなに俺を信用できないなら、自分で調べろよ――俺は内心でそう悪態をつきつつ、それでも満面に笑顔の仮面を隙間なくぴったりと貼り付け