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アドミュージアム東京で考えた広告のこと

先月、日本で唯一の広告のミュージアムと謳う「アドミュージアム東京」に行ってきました。

こちらは株式会社電通の第4代社長の名前を掲げた「公益財団法人 吉田秀雄記念事業財団」によって運営されていますが、なんと入館料は無料です。

ただし、現在入館するには事前予約必須のためお気をつけください。また、開館日は火曜〜土曜で、週末しか行けないであろうサラリーマンには残念なことに日曜日は休館です。

カレッタ汐留のこちらの入口はいってすぐ

さて、今回印象に残った広告を少しだけご紹介します。

1907年のウォーターシュート

上野公園の不忍池に、さあ飛び込もう!

こちらは1907年に上野公園で開催された「東京勧業博覧会」のポスターで、目玉となった進水戯と書いて「ウォーターシュート」とルビがふられたアトラクションが大きく描かれています。今は分かりやすく「船滑り」と表現することが多いようですが、当時は随分とハイカラな表記だったんですね!

それはさておき、本当にこんな急勾配で滑り落ちたのだろうか?…と、つい疑ってしまい、気になって当時の写真をウェブ上で探して比較したところ、やはりポスターでは勾配と高さがやや誇張されて描写されているように見えます。
広告たるもの、注意を引きつけるためにやや大げさに描かれるものなのかもしれません。(気になる方はこちらの「上野観光連盟」のページで確認してみてください。上から2/3くらいにウォーターシュートの写真があります▼)

みんなを仰天させた日本初のヌードポスター

ぶどう酒といえば茶色だった明治時代、この紅色が多くの人を惹きつけた

日本初のヌードポスターは、サントリーホールディングスの創業者である鳥居信治郎氏が1922年に打ち出したこちらのポスター。
なお、サントリーという社名を使用し始めたのは1963年で、1922年当時は株式会社壽屋ことぶきやという社名でした。このとき売れた赤玉ポートワインの赤玉=太陽=「sun」と、名字である「鳥居」をくっつけたのが「サントリー」の名前の由来だそうです。

それにしても、ヌードという点だけでなく、印刷技術が発展しておらずまだイラストポスターが中心だった時代に「写真」を使った点や「広告主名が無い商品名だけの広告」という点にも驚きます。

また、考えてみれば、第二次世界大戦ごろまで横書きの日本語は今と逆で「右から左」に書かれたものが多かったように思います。(最初に挙げた1907年のウォーターシュートも、横書きの文字は右から左に向かって書かれていました。ちなみに当時右から左へ書いたのは、縦書きと同じ方向に合わせたからです)
そんな中で、ワインを嗜む地域の言葉と合わせて「左から右」に日本語を書いているところにこだわりを感じますね。

世界各国の現在の広告は似通ってきている…!?

さて、古い日本の広告を二つほど取り上げましたが、アドミュージアム東京内には、世界各国の「最近話題の広告動画」を見れるスペースもあります。

一人暮らしをはじめてからテレビの無い生活を続けているため、海外の広告はもちろん、日本の最近のCMもまったくわからない状態で一通り視聴しました。1分〜3分くらいの動画を20〜30本見たような気がしますが、正直にいうと、最終的に「どれも似たようなものばかりで、げんなりする」と思ってしまいました。

何がそんなに似ているかというと、どれもこれも広告の内容について次のようなことを表示させます。

  • YouTube、Twitter、Instagram等のソーシャルメディアでの拡散状況
    (「全世界で再生回数○万回、○億インプレッション」「○万いいね、○万シェア」などの文字が次々と画面に表示され、実際にあったと思われるコメントや引用リツイート画面もそれに続きます)

  • 広告内容への賛同企業
    (具体的な数字だけではなく、世界地図や企業ロゴなども表示させます)

  • ニュース番組や新聞等の大手メディアでの取り上げ度合い
    (実際のニュース番組のシーンや新聞記事などが表示されます)

広告内容の対象はそれぞれ違うし、内容自体はおもしろいと感じるものもたくさんありました。ただ、「こんなにみんながいいと言っているよ!(だから君もぜひ!)」という見せ方がとても似通っています。
昨今「多様性が大事」とあちこちで聞きますが、今後広告動画は一つの様式に収斂していくのではないかと危機感を覚えるくらいです。
日本国内のテレビで日常的に流れるCMも、最近はこういうものが多いのでしょうか…?

さらに、これらの見せ方は「視聴者が数字や権威にどれほど影響を受けやすいか」ということを表しているとも言えそうです。そういったものにとらわれず、自分の確固たる信念や美意識を持つことも重要ではないでしょうか。

やや批判的に書いてしまいましたが、今回様々な広告に触れることで、広告に対する自分の考えを改めて認識することができ、非常にいい体験となりました。

最後になりますが、この世界各国の話題の広告動画で取り上げられていて特に印象的だったものを三つほどご紹介します。
(実際に流れていた広告動画ではなく、広告の中で取り上げられていた内容に関するネット記事へのリンクになります)

ムンバイに設置された「懲罰的な信号」とは▼

日本で車のクラクションを鳴らすことは少ないですが、ムンバイの街ではひっきりなしに鳴り響くようです。クラクションによる騒音を軽減するためにムンバイ警察が行ったことが説明されています。

愛犬の健康チェックのために公園でおしっこをさせよう▼

フランスで愛犬の散歩コースの定番である公園に、犬用尿検査トイレを設置した話です。英語かフランス語で見ることに抵抗が無ければ、「PURINA  STREET VET」で検索して動画を見ることをおすすめします(動画の方がわかりやすいです!)

「DNA割」に興味ある?▼

「テキーラもブリトーも好き、でもメキシコは嫌い」というアメリカ人が少なくないことから「DNA検査でメキシコ人の血を確認できれば割引します!」という大胆なキャンペーンを打ち出したアエロメヒコの話です。
「DNAデータ市場」はこれから広まるかもしれませんね。少々怖い気もしますが…。

※「何をもってメキシコ人の血とするんだ」と疑問を持たれた方もいるでしょう。メキシコ先住民の血なのか、先住民を制服したスペイン人の血なのか、そもそもどうやって判定するのか…。私も調べてみましたが、具体的なことは公表されてないようです。
加えて、「実際にDNA割をしたのか」というのも不明です。アエロメヒコの公式サイトをチェックしましたが、本件のプレスリリースは確認できず、"キャッチーな広告を出しただけ"かもしれません。

表現された世界から自由に想像するのは好き
主張のある広告から「こう考えよう!」と説得されるのは苦手


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