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【水島予言#07】1983年から87年、PLが彩った甲子園と明訓が彩った『大甲子園』

 野球雑誌で定期的に特集が組まれるもののひとつに、「高校野球最強王朝はどこか?」というものがある。最近であれば、2014年から2018年の5年間で夏2回、春2回と、甲子園で4度優勝している大阪桐蔭が筆頭だろう。大阪桐蔭は2012年と2018年に2度も春夏連覇を達成。2010年代最強校の呼び声も高い。
 もちろん、「いやいや、松坂大輔で春夏連覇を果たした98年の横浜高校も!」「夏連覇&3年連続甲子園決勝に進出した04〜06年の駒大苫小牧」「80年代前半、やまびこ打線で夏春連覇の池田高校」……と議論は尽きない。ただ、昭和世代で77年生まれの筆者からすれば、80年代PL学園の強さ、とくに桑田真澄、清原和博の「KKコンビ」が入学した1983年以降のPL学園の強さ、そして存在感は別格ではないかと思う。

 まずはそのデビューが鮮烈だった。81年82年と春のセンバツ連覇を果たした大阪の名門校PLが「1年生のエースと4番」に牽引されて83年夏の甲子園に出場。下馬評は低かったにもかかわらず、この年の“絶対優勝候補”で夏春夏の3季連続優勝がかかっていた池田高校戦では、桑田真澄が自らのホームランで奪ったリードを守りきる完封劇で番狂わせ。決勝戦では清原和博の先制弾が決勝点となって全国制覇を果たしたのだ。この「池田王朝からPL王朝へ」という時代の変わり目を、高校野球が最も盛り上がった瞬間、と声を挙げるオールドファンは多い。
 以降、5季連続で甲子園に出場したKKコンビはその全てでベスト4以上(2度の準優勝とベスト4)という成績を残し、85年の最後の夏に再び全国制覇を達成。有終の美を飾った。
 そしてKKコンビが3年時に入部したのが立浪和義、片岡篤史、野村弘らの世代だ。彼らが3年になった87年には、偉大なKKコンビもなし得なかった春夏連覇を達成。まさに「PL王朝」と呼びたくなる強さだった。

 高校野球はひときわ熱く盛り上がった5年間。まさにこの期間に連載され、高校野球人気を牽引したのが水島新司漫画の集大成ともいえる『大甲子園』だ。連載開始日は、清原・桑田が入学する直前の1983年2月25日(金)。そして、春夏連覇を成し遂げて連載終了するのは立浪世代が甲子園で春夏連覇をする直前の1987年7月24日(金)。まさに、1手先を歩み続けたのだ。
 この夢の企画がどのように成立したのか。水島新司本人が伊集院光との対談で明かしていたので引用したい。

ひとつ計算してやったのは、いろんな出版社に描いている高校野球漫画の、高校3年の夏だけは全部残したこと。それは、先へ行って『大甲子園』ってタイトルでこの練習を一堂に会させて、夏の大会を描きたかったから。(中略)ただし『一球さん』、『球道くん』、『ドカベン』。出版社がまたがってる。ぼくは『ドカベン』でやりたいわけだから、秋田書店で『大甲子園』をやった。その話を持っていて果たしてOKしてくれるかどうかは不安だった。でも幸い、すんなりOKしてくれましたがね。マンガ界では画期的なことだった(『球漫―野球漫画シャベリたおし!』)


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80年代のプロ野球と高校野球で起きた出来事を、水島野球マンガは事前にどう予言していたのか? 有料設定にしていますが無料で読めるものも多いで…

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