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アメリカに琵琶を持って行った備忘録②アメリカ側の書類及びP3ビザ編(2023年5月)

前回のあらすじ

琵琶奏者・荻山泊水は、2023年5月、アニメイベント出演のため、薩摩琵琶を持ってアメリカへ渡航することになった!
しかし、その琵琶には、現在輸出入が禁止されている象牙が使われているため、最悪税関で没収されてしまう可能性がある!
そのため、荻山は経済産業省に「楽器証明書」を発行してもらった!

安心するのはまだ早い~長い名前のアメリカの書類

無事に楽器証明書も発行され、わーいこれで安心よーとばかりに、海の向こうのイベント主催者側にその旨を報告したのですが、
「いや、まだ油断はできません」
とのお返事。
楽器証明書は、あくまで日本で作成した書類。アメリカ側でも、同様の書類を申請する必要がある、というのです。うん、それはそうかも。
そして、主催者側の担当者さんと弁護士さんが取得して下さった書類が、

DECLARATION FOR IMPORTATION OR EXPORTATION OF FISH OR WILDLIFE

という長い名前の書類。
直訳すると「魚類または野生生物の輸出入申告書」。
内容は、楽器証明書と同じく「象牙を使用した物品をアメリカ国内に持ち込んで持ち出します(販売目的ではありませんよ)」というもの。
私の現住所とアメリカでの滞在先、到着する空港、該当種名「ELEPHANTIDAE」などが明記されています。
発行元は、U.S. FISH AND WILDLIFE SERVICE(アメリカ合衆国魚類野生生物局)という機関で、野生動物の保護・管理を専門的に行うところだそうです。

この書類に関して私がやったことといえば、琵琶の大きさや重さ、象牙を使用している部分、価格などを先方にお伝えしたくらいで、手続きは全て主催者側の担当者さんと弁護士さんが行って下さったので、詳しい取得方法は分かりません。ごめんなさい。
ですが、この書類のおかげで、より確実に琵琶を持って帰って来られたと思います。深謝。

はじめてのビザ取得①申請編

主催者側のお話によると、アメリカでは前政権発足後、海外のパフォーマーの入国に関して、以前よりとても厳しくなっているのだそうです。
過去には、ミュージシャンのゲストが、楽器を携行できなかったケースもあったとのこと。
そのため「荻山さんは、P3ビザを取得して下さい」とのお知らせが。
P3ビザとは「個人またはグループの一員として、文化的に独自なプログラムへの出演や指導を行うアーティストやエンタ―テナー」に発行されるもので、基本的に、滞在に必要な日数のみ有効となります。

まず、「米国ビザ申請」のサイトで(米国大使館のHPからも入れます。日本語表示もあります)、オンラインの申請書(DS-160)に入力して申請し、在日米国大使館または領事館での面接を予約する必要があります。
このDS-160がなかなかの難関でした。
ありがたいことに、主催者側の担当者さんと弁護士さんが、パワーポイントで申請のチュートリアルを送って下さいましたので、それに沿って入力したものの、基本英語表記(一部日本語訳あり)、当然英語での入力。慣れぬ者としてはgoogle翻訳さんをお供に、脳みそフル回転で挑むしかありません。
しかもこのサイト、セキュリティ上の仕様なのか、一定時間が過ぎると自動ログアウトとなり、またログインし直さなければなりません。
幸い、ログアウト前までに入力した情報は残っているので、再ログイン後はその続きからの入力となるのですが…でも、でも、うん、面倒だ…!
あとですね、登録する時に、顔写真のデータが必要です。
これもけっこう細かい規定がありますので、「米国ビザ申請」サイトで確認して下さい。

はじめてのビザ取得②面接編

弁護士さんのチェックを経て、無事にDS-160の申請を終え、ビザ申請料金も納入すると、面接の予約です。
私は大阪在住なので、大阪市北区にある、駐大阪・神戸米国総領事館での面接を申し込みました(これもオンラインです)。
予約が完了すると、申込時に記入したアドレスにメールが届きます。

当日は、必要な書類を持って、予約時間の15分前に建物の入口に向かいます。
持って行ったのは下記の書類です。
・パスポート(6か月以上有効なもの)
・DS-160の確認書類(申請時に生成されるPDFファイルを印刷します)
・面接予約の確認書類
・主催者側の弁護士さん作成の推薦状

このうち、推薦状については「この人物は、何年何月何日にどこどこで開催するこのイベントで、こうしたユニークな芸能を披露するために、我々によって推薦された人物である」ということが書いてあります(多分)。

入口で、スマホの電源を切るように言われ、その後、謎のリトマス紙みたいなものでスマホを拭われ、少し待ってから「行ってよし」の合図。未だに、何の操作だったのか分からずじまい。
空港にあるような保安検査をくぐり、必要書類の確認を受け、指定のフロアへ向かいます。
そこでもう少し細かく書類のチェックと、渡航先などについて質問を受け、カウンターの機器で指紋を取られてから、面接のフロアへ移動。
ここからです。
面接待ちの列に並んだ状態で(つまり立ったまま)、1時間以上待機。
しかも、スマホの電源を切っている上、スマホ以外の電子機器は持ち込み禁止。現代人の暇をつぶす術が封じられた状態。
事前に見たとあるサイトで「絶対に本や雑誌を持って行け」と書いてあった意味が分かりました。
腰をトントン、むくむ足を地味にストレッチしながら読書に勤しみ、ようやく順番が回って来ると、カウンターで待ち構えていた面接官が「おはようございます」。
こちらも「おはようございます」と返すと、そこから先は全て日本語でのやりとりになりました。挨拶で使用言語を判断するシステムなのでしょうか。
ひとつ前のフロアで聞かれた内容を共有しているようで、パソコンのモニターと書類を交互に見ながらいくつか質問をされ、もう一度指紋を取られた後、
「あなたのビザは承認されました。1週間ほどで届きます。お疲れ様でした」
面接時間、5分程度。
恐らく、主催者側の推薦状のおかげで、私のビザはあっさり下りたのでした。
そして、面接官の予告よりも少し早く、5日程で、顔写真付きのビザが張り付けられたパスポートが自宅に届きました。

ビザに使用した宣材写真(申請時は顔だけ切り取りました)。ちょっと恥ずかしい。

これで持って行くべき書類は揃った!
次回、琵琶運搬編。乞うご期待!!

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