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【企業戦士必読!】起業の天才!〜 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男〜

この本は、いまや時価総額8兆円を超える日本を代表する大企業リクルートホールディングスを作った創業者、江副浩正さんの経営者としての一生を綴ったノンフィクション物語。

一言でいうとめちゃくちゃ面白かったです。

そして心を揺さぶられるような一冊でした。

ただそれと同時に読み終わった後のなんとも言えない後味の悪さと、何か切ない気持ちにもなりました。。。

この本の主人公江副さんは、とにかく時代の先を読む先見性に長けていて、その結果、今日の当たり前をいくつも作り今日まで続く日本を代表する企業リクルートを作りました。

インターネットのない時代のグーグル。

現在アマゾンの収益源の柱となっているAWS(企業向けクラウド・コンピューティング)を、 30年以上も前に構想していた。

そしてこの会社のすごいところは、圧倒的な先見性を持った創業者が約30年前にリクルート事件をきっかけに表舞台から一発退場させられてからも更に成長を続け、現在もまだまだ伸び続けているところです。

つまり江副さんがそういう仕組みを作ったという事なのですが、江副さんが表舞台から消えたときのリクルートはまだ売上が2600億円くらいだったので、そこからの伸びを考えると本当すさまじいの一言です。


ちなみにリクルート事件を知らない人も多いと思いますので、一言でまとめますと、利益が確実に出るとわかっていた自社株(上場予定の子会社の未公開株)を多数の超大物政治家などに賄賂として渡してしまったという事件です。

詳しくはWikipedia

更にこの本に出てくる登場人物からして歴史上の人物レベルの人が普通にでてきて、もはや超近代日本史を学んでいるようでした。笑

例えば松下幸之助、本田宗一郎、稲盛和夫、盛田昭夫、中曽根元総理、竹下登元総理、果てはジェフベゾス!なども ・・・ etc


そんなわけで、ここからは本に書かれている江副さんの軌跡を、わかりやすく時系列でまとめてみました。


1955年


江副さん東京大学へ入学


1956年


東京大学新聞でアルバイトを始める。
ここでアルバイトをしていた時に、高度経済成長の入り口で人材難に飢えている企業に目を付け、学生と企業をマッチングさせる求人広告を東大新聞の広告に掲載。

これが時代のニーズにドンピシャで企業からの依頼が殺到。

この時代はちょうど朝鮮戦争の特需で息を吹き返し、これから日本が高度経済成長を迎えようとしていた時代で、企業は人材を求めていたがどうやって人材(学生)を集めていいかわからない時代だった。

そこにちょうど江副さんが企業と学生をマッチングさせるいう今までになかった手法を形にした事で、結果新しい情報産業を生むことに成功。

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1958年6月25日号に掲載されている広告(『東京大学新聞 第3巻』不二出版より)

1960年


卒業後、上記のビジネスモデルを元に株式会社大学広告(のちのリクルート)を設立。


1962年


学生向けの無料求人情報誌「企業への招待」のちのリクルートブック(リクナビの前身)を創刊。  


1963年


社名を「株式会社日本リクルートセンター」に変更


1965年  ※ここでまだ昭和40年

   
「企業への招待」の高校生版を創刊。

これによって新たに社会にでていく数百万人に直接アプローチできる日本唯一の企業の地位を確立。
データを活用して学生と企業をつなぐハブになるサービスを確立、 いまでは当たり前だが当時は画期的なサービスだった。


1974年


昭和49年、創業から14年で売上100億円突破(正確には103億円)
当時と現在の貨幣価値は違うので、 現在の価値にするとおそらく200億~400億くらいの売上価値はあったんじゃないでしょうか。

この時点でも十分勢いはすごかったようですが、とはいえ採用ニーズは景気に左右されやすい為不安定。そこで新たな収益の柱として不動産事業にも参入。

同年、環境開発株式会社、現在のコスモイニシアを発足し不動産業にも参入。

またここでもタイミングがドンピシャで、この時期は地価が上がり続けていた事もあり更に順調に会社は伸び続けたようです。


1975年


中途採用専門誌「就職情報」のちのビーイング創刊。


1976年


不動産雑誌「住宅情報」現在のSUUMOを創刊。


1980年


女性専用専門誌「とらばーゆ」創刊。 ※これでもまだ41年前です。

ここまでくると就職・転職雑誌業界での地位を不動のものに。

さらに同年リゾート開発にも参入。


1982年


アルバイト情報誌「フロムエー」創刊。


1984年


海外旅行情報誌「エイビーロード」創刊。
中古自動車情報誌「カーセンサー」創刊。

同年、社名を「リクルート」に変更 銀座の一等地に本社ビルを建てる。

その金額なんと500億円!

尚、この時の売上は315億円で経常利益42億円の時です。

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※銀座の旧本社ビルG8

ちなみにこの有名な銀座の自社ビルはすでに売却済みで、現在の本社は東京駅駅前のグラントウキョウサウスタワーになってます。ただし、まだリクルートとして賃貸でそのまま使っているようです。


ここまでの躍進の原動力であるリクルートの情報誌ビジネスは、情報のほしいユーザーと情報を届けたい企業をユーザー無料の広告モデルによってダイレクトにつなげる、いわば紙のgoogle。


それまでの新聞や雑誌、テレビの広告は対象を狙い撃ちできないマス広告だったが、求人情報誌はターゲットが就職活動中の学生に絞れている事が最大のポイントで、つまりgoogleの検索連動型広告のような形で、当時はまだなかった適切なユーザーに適切な広告を出せる仕様となっており、インターネットのない時代のgoogle広告のようだったと言われています。


そんな大躍進の中、このころから江副さんは「情報誌ビジネス」への情熱を失い、今度は「情報サービス」へ舵をきるようになりました。


と同時にリクルートが勢いを増せば増すほど、情報誌ビジネスは新聞社が独占していた不動産広告の利権や、新分野テレビ広告枠を抑える広告代理店の利権を破壊する行為であり、他社から距離を置かれるようにもなっていきました。


そういった背景もあって、江副さんはそんな状況でもリクルートの存在感を高めようと政財界と深く関わるようになり、 その結果闇落ちしてしまい、これがのちのリクルート事件につながります。


ここから5年後の1989年にリクルート事件によって逮捕され表舞台からは消えてしまいますが、ここまでくる間には上記以外にも様々なイノベーションを起こしていました。


その中でも、逮捕までの28年で会社がここまで急激に成長できたのは、どこよりも早くコンピューターなどの最新技術を導入した先見性と、脱日本型組織が大きいと言われています。


1966年からコンピューターを導入。
1968年には小型の汎用コンピューターを導入 。

1983年には時代に先駆けて、オンラインの中古不動産情報サービス「住宅情報オンラインネットワークス(JON)」を立上げ。


これは加盟店のコンピューターで、地域や価格を入力するとデータベースから物件を見つけられて地図や間取りを印刷できるサービス(SUUMOの先駆け)

googleの設立は1998年なので、それよりも15年も前に日本でコンピューターを使った検索サービスを始めていた。

しかし時代を先取りしすぎた為、サービスにインフラがおいつかず、4年でサービスは一旦終了。早すぎたアイデアだった為技術不足により運営できなかった。(1枚の間取りを印刷するのに10分、コンピューターのレンタル代が数十万かかるなど)


更にAWSのはるか前に、AWSと同じような仕組みのクラウドシステムを構想。

そのままいけば、もしかしたらAWSのような世界的なサービスが日本から生まれていたかもしれなかったが、リクルート事件によってこの計画は頓挫してしまいました。


他にこういった事業系のイノベーション以外にも、今では一般的ですが当時は画期的だった、

脱日本型経営

終身雇用、年功序列の廃止

完全実力主義

をいち早く取り入れていたり、創業当時からティール組織で、リーダーが指示しなくても進化し続ける組織作りなど、モチベーションを軸として多種多様な人材を自由に働かせる事で会社を発展させていきました。  


中でも特に印象的なのが以下の考えで、全てはこの考えを元に経営し、会社をひたすら大きくしていきました。


「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」

「圧倒的当事者意識と社員皆経営者主義」


とにかく全員が当事者意識をもって、自ら機会を作り自分で成長していく事でしか会社は成長していかないという事で、何年経っても色褪せない必勝の考えだと思います。


こういった数々の江副さんの偉業からリクルート、いや日本のHR業界は作られていった訳ですが、それから何十年かたった現在、日本のHR業界は20年間根本的には大きな変化がないと言われています。

現在は未曾有のパンデミックで経済もしばらくは停滞していますが、あと数年後には確実に今の反動による旅行ブームや、景気が良くなる事で人手不足が起こるのは確実な訳で、仮に江副さんなら必ず今から何かを仕込んでおくはずです。

実際に2020年の1年間で日本の家計貯蓄は36兆円増えたとのことで、実際にそのお金が景気が回復したときにどこに向かうのか?

それに向けていまから何を仕込んでおくのがいいのか?

この時代江副さんならどうするか?

江副さんに習い、先見性を持って動いて行くためにも、こういった現在の状況をふまえていまからしっかりと考え、どういう立場で次の節目を迎えていくかが、これからの大きなチャンスになるのではないかと思いました。

とにかく久々に色々と考えさせられる良書でした。

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