ビジネス書『ファクトフルネス』と月ノ美兎

ある編集さんがオススメ書籍として贈って下さった5冊のビジネス書の中にあった一冊『ファクトフルネス〜10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣〜』。

(……つまんなそう。なんか難しそうだし。妙に分厚いし)

というのがこの本の第一印象でした。なんかビルゲイツやオバマ元大統領も絶賛のコメントを寄せてるらしい超ベストセラー本らしいのですが、(あー、せっかくわざわざ贈ってもらったんだしちゃんと読まなきゃなぁ。やだなぁ)と思っていました。しかし読み終わってみると頂いた5冊の中で最も心に残ったのがこの本でした。


読んでいない人向けに手短にこの本を紹介するなら

『いろんな先入観を解除し、正確に世の中を読み取る方法が書いてある』

…になるかと思います。いろんな先入観が何を指すのかというと、例えば"人口爆発は止まらずに増え続ける"というイメージや、"世の中はまだまだ未解決の悲惨なことが山ほどある"というイメージのことだったりします。

読んでみるとなるほど、人口爆発はあるラインで一定値になり、延々と増え続けるということはないということが理屈としてわかったり、世の中の未解決なこと、悲惨なことはどんどん減っているということが全体像として見えてきたりします。

この本のポイントは(世の中は良くなってる?いや、そんなことはないんじゃない?)というこの心理自体についてだったりします。


ここで、ちょっと関係ないような関係のある話なのですが、月ノ美兎さんというとても賢くて清楚な大人気バーチャルYouTuberさんがいるのですが、この方が今年の6月頃にゴシップ系配信者にあることないこと噂を吹聴されたことがあり、その際に彼女が語った配信が『噂について全部答えます』といった趣旨のものでした。

その際に彼女は、噂通りのこと、噂とは全く異なる事実のこと、ややカスってるがズレていることを一つ一つ(視聴しているかぎりはかなりフェア性にこだわっている様子で)解説し、そして締めくくりに言ったのがこの言葉でした。

"「強い噂」は拡散力があり、信じる人も比例して多くなりがちですが、薄味の真実はなかなか広まりにくいです"

(月ノ美兎さんのその配信アーカイブ↓)
https://youtu.be/LYK2W-SEqtA?t=1769


ファクトフルネスを読んで思い出したのは、この件でした。世の中で起こっている色んなことは実のところドラマ性の低い薄味な真実であることの方が多いのですが、噂は風にのり、人から人に伝わる中でどんどん"過激に誇張されていき"、事実からはズレていくという仕組みの話。

思った以上に貧困に苦しむ人は少ないし、ワクチンが行き渡る人数はめちゃくちゃ増えてるし、最低限の教育を受けることが出来ている子供もめちゃくちゃ増えてるし、全体像として世の中は"まんべんなくゆっくり、特にドラマチックではなく良くなっている"のですが、その事実はキャッチーじゃないんですね。つまらないわけです。

考えてみれば、たとえばSNSでの噂話なんかもこういうかたちで事実が膨張していることが多いように思います。なんなら、ニュースサイトやまとめサイトが事実を"曲げる意図で広める"ようなこともよくある昨今だとも思います。

噂話は人の性ですし(自分もよくやりますし)、それ自体をとどめることはまず出来ないですし、すべての瞬間に注意を払うのも難しいことだとは思います。しかし、少なくとも"誰かを傷つけうる噂"については、記事タイトルだけを見てせっかちに憤慨せず、トレンドワードだけをみてワーッとならず、まずはちゃんとその内容を読んで、その内容が手に入りうる一番正確な第一次情報であることを確認するのが、せめて出来る範囲の大事な思いやりかもしれないなと、思ったりします。


○おまけ
月ノ美兎さんの件の配信で一番グッときたのは、"この情報は月ノ美兎サイドの情報であり、これを真実だと証明する方法はない"ということをくれぐれも伝えた上で解説しているという誠実さでした。ここまで徹底して伝えても確かに、彼女の語る事実の信憑性は当事者以外は誰にも分かりえないわけですが、やたらと感情に訴えてファンに「私を信じて!」とは絶対にしないその姿勢と知性に感動したという、その件も思い出しつつの今回の記事でした。ファクトフルネスも月ノ美兎もいいぞ。

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