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バズワードの先行によって誤解されるNFTの本質


はじめに

NFTというバズワードが先行している状況の中で、かなり多くの誤解を招いているという現状があります。その一つが、「NFTでアイテムを販売すること」 = (イコール) 「デジタルアイテムを仮想通貨で購入できるようにすること」と捉えている人が多いことです。私も過去の記事でも扱いましたが、ブロックチェーン自体が、DeFiなど決済ソリューションとしての仕組みにも利用されていることから、"NFT"と"決済としての仮想通貨"の混同が起きているように思います。

理解できていると言われる方も多いかもしれませんが、最近は既存のマーケットのテコ入れとしてNFT化を後付けで始めるようなプロジェクトを立ち上げるケースがありますが、こういったケースでは意外に混乱が生じやすいように思います。既存マーケットへの組み込みの場合、既に販売されているデジタルアイテムと平行する動きが求められ、気がつくと、デジタルアイテムの仮想通貨払いサービスが出来上がっていることがあります。なぜそうなってしまうのでしょうか。
NFTはサービスの根本にある思想であり、コンセプトであり、テーマです。決済手段を増やすように、後で追加できるような種の仕組みではないということが言えると思います。そのことを理解せずに始めると、NFTのメリットを活かすどころか、ただ単純に購入のハードルの高いサービスを設計してしまうことになりかねません。NFTの価値を今一度再確認することを目的として、この記事を書きたいと思います。

デジタルアイテムの仮想通貨払いとNFTはどう違う?

ビックカメラでのビットコイン決済や、不動産のビットコイン決済など、決済に仮想通貨を利用している事例は多くありますが、インバウンド需要を見越して、国をまたぐボーダレスな送金が可能であるという特徴を活用している事例だと思います。NFTはというと、もちろんそのメリットはあるのですが、そのことが全てではありません。NBATopShotの事例をあげると非常に理解しやすいのではないかと思います。


NBATopShotの中で、レブロンジェームズのレブロンジェームズの「ハイライト」が$47,500という価格で販売されました。


さて、このデジタルアイテムは、仮想通貨決済によって、これらの金額で取引されるようになったのかと言われると、そうは思いません。
NBATopShotは、クレジットカード支払いとFlowという仮想通貨支払いに対応しており、これまでのブロックチェーンゲームに比べて一度仮想通貨を挟まずに済むことは一般ユーザーに対するUXとしてはむしろ良くなっていると考えるべきです。ここで注目して欲しいのはコンテンツとしての価値の方向性です。カードを購入したユーザーは1分程度の動画の切り抜きを視聴することができますが、視聴を目的としているのであれば、この数分の切りきに$47,500払うはずはありません。雑誌の切り抜きとトレーディングカード、新品のユニフォームとサイン入りの中古のユニフォーム、大量生産のコップと作家さんの一点物のコップ。後者の事例はどれも、直接的に受ける価値よりも、ユーザーが所有することの楽しみに向けられていることがわかると思います。NBATopShotのカードも、このシーンを自分が保有しているという所有感に対して、ユーザーはお金を支払うわけです。月の土地を1エーカーあたり2,700円で所有することができるそうですが、住むために所有する人は、まだこの2021年現在ではいないはずです。月の土地と同様にして、所有感に対する見返りとして人はNFTにお金を支払うと言えます。

ブロックチェーンが可能にするデジタルアイテムの所有感

ブロックチェーンという技術によって、デジタルのアイテムを所有することができるようになりました。簡単にその理由を説明したいと思います。

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https://medium.com/@eleganttechltdbd/the-difference-between-blockchain-and-relational-database-38039ccbf2f1

デジタルアイテムの所有感のことをDegitalTrueOwnershipと表現することがあります。この図は、ブロックチェーンと既存のデータベースを比較するときに用いられる図ですが、サイロ化された中央集権的なサーバーにデータを溜め込むのではなく、P2Pの仕組みによって、相互にデータを提供し合うことによって、

1.(最後の一人になるまで)データが失われることはない
2.誰もがデータの整合性を検証することができる

のようなことが可能となります。

デジタルデータが、紙の漫画のように譲渡や売買ができない理由として、無限にコピーがされてしまうことにあると思います。しかし、ブロックチェーンのデータは、この事例の1,2の特徴から、オリジナルを担保しつつ、そのデータを永続的にユーザー自身が管理することができるため、限りなくリアルな物に近い所有感を与えることができるのはこのようなテクノロジーのおかげであると言えます。最後の一人まで本当に、データが保管されるのかと心配されると思いますが、各ユーザーが利用するソフトウェアウォレットには、フルノードとSPVクライアントタイプがあり、フルノード型の場合は、ブロックチェーンがこの世に生まれてから最初の取引から、容量としては350G以上のデータが保管されています。ビットコインの場合は、Bitcoin Pizza Dayをと言われる初期にビットコインが取引された履歴から各ユーザーが保有しています。

NFTにおけるキラーコンテンツとは

冒頭で、NFTを後付けで行うケースについて書きましたが、究極はブロックチェーンであることを感じさせず、すべてのものと、滑らかに接続できることが究極の形であると思います。ゲームのアイテムや、スポーツのチケット、デジタルのコミック、デジタル配信された音楽、アイドルの写真など、すべてのデジタルデータが意識せずブロックチェーンで作られ、それらは海賊版などの心配に怯えることはなく、透明性を持って権利者に利益が還元され、発行元が倒産してもデータはユーザーの手元に残り続け、プラットフォームを選ばず必要な時に、他人に譲渡したり、売買、相互に交換、リサイクルが可能となる未来です。しかし、今は、過渡期です。スティーブ・ジョブズがiPhoneを発売する時に「携帯電話を再定義する」と言ったように、我々は、デジタルデータの所有権(DegitalTrueOwnership)を再定義する必要があります。そして、その初期におけるキラーコンテンツは、所有感というものに最大限フォーカスされたサービスであるべきだと思います。今は、その定石となるものは確率されておらず、先に述べたとおり、ゲームのアイテムや、スポーツのチケット、デジタルのコミック....どのような形がもっとも最適であるのかを探す旅はまだ始まったばかりです。

ニャンキャット = 590,000ドル

パンク6965 = 154万ドル

5000個のビープルの作品のコラージュ = 6900万ドル


Conclusion


ブロックチェーン技術は、過去に幾度となく、誤った認識で捉えれてきました。数年前は、ブロックチェーンというワード自体、なんとなく怪しいと言うイメージで捉えらていた人も多いと思います。理由としては、仮想通貨や、ICOをはじめ、投資や投機の対象というイメージが先行しており、様々な詐欺のプロジェクトも事実として多かったこともあると思います。私が過去に登壇したテクノロジーのカンファレンスでも、質問コーナーなどで、Ethereumの今後の値段の話題や、リターンの出そうなプロジェクトについての質問が出たこともあります。
テクノロジーとして、ビットコインやEthereumも、サービストークンというチェーンに紐づいたトークンを持ち、それらが、取引所で交換されるという文脈はあるものの、あくまで、中央集権的ではなく、有志が参加してネットワークを維持していくために発明された"マイニング"を成立させるための
手法
に過ぎず、それらは、トレーサビリティなど他にも様々な特徴を持っていることを知っておく必要があります。今、まさにNFTというバズワードが先行するような形で、価格を吊り上げて暴利を貪ることがNFTの本質だと誤解されるすると、とても悲しいことですし、ブロックチェーンはなんだか怪しいと誰かが言っていた過去の時代に逆戻りしてしまう気がします。
NFTの本質は、デジタルデータの所有権(DegitalTrueOwnership)を再定義し様々なものと滑らかな接続性を持ち、これまでにない新しい価値を生み出すことという風に捉えることができると、もっと世の中が良くなるような気がします。

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