Twitterの有料化に共なって進む、非中央集権的なSNSの議論

Twitteでこれまで無料で公開されていたAPIの有料化などに伴って、これまで利用されてきたTwitterログインをはじめとする機能が落とされるなど、ユーザーにとっては不便を強いられる状況があります。開発者にも、これらの仕様に関連する変更などが突如、降ってくるケースが多いのではないでしょうか。

かつて、Mixiの足跡機能などの仕様変更が波紋を呼んだこともありますが、企業によるアプリケーションの仕様変更については、マネタイズを含めて、様々な要素が絡み合うため、時には非常に難しい判断となります。同時に、ユーザーにとっては、受け入れるか、使わないという判断をする以外にない点、もどかしさがあるかもしれません。使わないという判断をした場合、これまでの投稿などのデータは、多くの場合、他のサービスに移すことは難しく、ユーザーにとっては不利になるケースが多いのが現状です。そういった中、こうしたデータについてもう少し自由な枠組みで捉えられないかという考えの中で、データを分散的に管理することについての議論が生まれています。

下記のツイートでは、ジャック・ドーシー氏はTwitterを中央集権的な企業としてではなく、HTTPといった非中央集権的な通信プロトコルにしたかったということを言及しています。

元々、ブレイン・クック(OAuth プロトコルと WebFinger プロトコルの共著者)というエンジニアは、ツイッターをオンラインコミュニケーションのバックボーンにしたいと考えていたようです。ユーザーの会話をツイッターの中に閉じ込めるのではなく、他のSNSのユーザーとも自由にメッセージを交換できるようにしようというのコンセプトでもありました。いくつかの記事にも書かれていますが、分散化についてのメリットとして、当時10名程度しかいなかったTwitter社にとっては、プロトコル化の道はパートナー企業がイノベーションを促進しながら、コンテンツ管理の負担を共有できることを意味すると書かれています。急速に成長するサービスをフレキシブルに成長させていくための道筋の一つとして、分散化はメリットになるかもしれません。

As Twitter’s popularity surged, Cook pitched a new direction for the app: Instead of people only interacting with other Twitter users, the network would be decentralized to allow for conversations between users on competing platforms.
Cook reasoned Twitter, which at the time only comprised of around 10 employees, didn’t have the capacity to meet its growth. An open protocol would mean partner companies could share the burden of content moderation while also encouraging innovation.

https://www.saanichnews.com/news/nelsons-blaine-cook-helped-build-twitter-and-he-has-a-few-ideas-on-what-should-come-next/

分散型SNSを代表するFediverseとは何か

FediverseはFederationとUniverseを組み合わせた造語で、SNSを提供するアプリケーション同士がコンテンツ情報を相互運用している状況です。例えば、facebookからtwitterにいいねができたり、リツイートができるようなイメージがわかりやすいでしょう。
もちろんこれらを実現するためには、共通のプロトコルが必要となりますが、その方式がActivityPubと言われるもので、MastodonやMisskeyもActivityPubを採用しています。Mozillaは「Mozilla to Explore Healthy Social Media Alternative」で分散型ソーシャルネットワークのテストインスタンスを2023年前半に立ち上げ、Fediverseに参加すると宣言し話題を呼びました。

Our intention is to contribute to the healthy and sustainable growth of a federated social space that doesn’t just operate but thrives on its own terms, independent of profit- and control-motivated tech firms.

私たちの意図は、利益や支配を目的とするテック企業から独立し、独自の条件で運営されるだけでなく繁栄する、連合型ソーシャルスペースの健全で持続可能な成長に貢献することです。

Mozillaの説明によると、最初はMastodonのインスタンスを立ち上げ、その後さらにそれを発展させていくように読み取れます。

Today we see the rising tide of the Fediverse, through Mastodon, Matrix, Pixelfed, and many others as a promising next step in that direction.

今日、私たちはMastodon、Matrix、Pixelfedなどによるソーシャルメディア連合の台頭を、有望な次の段階だと見ています。


Mastodonとは何か?については、こちらの動画がおすすめです。TwitterやTumblrのように気軽に投稿できるOSSであることが紹介されていますが、今や、Mozillaの発表であるとか、TumblrがActivityPubを採用しMastodonと接続する話題であるとか、こうしたFediverseの動きの中核を担うようなシステムとなっていることは非常に面白いと思います。こうした動きは、アルゴリズムの透明性を高め、人々が自分の個人データを管理できるようにしようとする動きにつながります。

FilecoinやIPFSで知られるProtocolLabsは、IPFS の上に「エッジ コンピューティング スタック」を構築していると書かれており、コンセプトとしては、WASM (WebAssembly) を使用して、コード実行のための安全な機能指向のコンテナを目指すと書かれています。WASMは、ブロックチェーンのスマートコントラクトでも現在注目されている仕組みでもあります。

BlueskyとATProtocol

さて、Twitterに改めて話を戻して、元々2021年末にTwitterから資金提供され設立された組織(Bluesky PBLCC)によるBlueskyというSNSが注目を浴びています。そして、その中で使われているAT Protocolという仕組みが、連合型と、P2P型のアーキテクチャの長所を合わせ、オープンなソーシャル環境を作るために開発が始まりました。

自己認証型ソーシャルプロトコルを採用し、公開鍵と暗号ハッシュを用いてデータが参照されるようにすることで、データそのものを信頼できるようにします。これにより、ポータビリティ、ストアアンドフォワード・キャッシュによるスケーラビリティ、信頼性の確保を実現するものです。元々、ブロックチェーン自体もこうした相互運用を担保するために作られてきましたが、Layer3のIPだけを参照するP2Pでは解決することが難しい問題が多く、ActivityPubなどはLayer4のTCPで解決できるため、L3-L7まとめて処理するプロトコルが作られつつある現状があります。

ActivityPubとの違いについては非常に興味深く、言及されていますが、注目度が高いのは、グローバル発見性 (global discoverability)というものです。

Mastdonなどをはじめ、ActivityPubでは、データ自体がインスタンスの中に閉じていたため、横断的な検索や、仮にインスタンスが閉じた場合にデータが失われてしまう点が課題となっていました。これに対して、ATProtocolでは、個別のインスタンスのデータを集約するBGSと呼ばれる場所を確保することによって、横断的にデータを見ることができるようになる点はメリットがあります。とはいえ、現状では、こうした仕組みがワークできるかについては、実験的な段階です。Odeoのエヴァン・ヘンショウ=プラース氏は、Blueskyと多くの共通点を持つ「Planetary」というP2PのSNSを運営していますが、こうしたP2PのSNS同士がネットワークで接続され、相互作用を可能にする未来が訪れるかもしれません。

。両者はともにアルゴリズムの透明性を高め、人々が自分の個人データを管理できるようにしようとしている。AT Protocolがいったん稼働すれば、目指すのはPlanetaryとBlueskyのネットワーク間で一定の相互作用を可能にし、パワーバランスをユーザー側に傾けたいという共通の願いに動機づけられた一種の連合体を生み出すことだと


Noster + Damus

もう一つ、Jack Dorsey氏が支援する、「Damus」についても、触れておく必要があります。先日、AppStoreのDamusの投げ銭機能が、ガイドライン違反に当たる可能性があるという指摘についての議論が、話題となっていました。

この問題について、EpicのTimSweeney氏も言及しているなど関心の高さが伺えます。

Damusは、検閲に強いグローバルSNS構築を目指すオープンプロトコ「Nostr」上で動作するアプリケーションです。ビットコインコミュニティの匿名の開発者fiatjaf氏(https://twitter.com/fiatjaf)が開発を始めたオープンソースの分散型プロトコルでもあることから、多くのビットコイン支持者に支持されていることや、ライトニングネットワークにおける投げ銭機能のリリースなど、ブロックチェーンの仕組みとの強い関わりを見てとることができます。通常のSNSと異なり、ユーザーは公開鍵と秘密鍵によって管理されます。たとえばエドワード・スノーデン氏が使っている公開鍵は npub1sn0wdenkukak0d9dfczzeacvhkrgz92ak56egt7vdgzn8pv2wfqqhrjdv9
などのように鍵によって管理されています。
(Edward Snowden)
https://twitter.com/Snowden/status/1620789340199882752

技術と規約は別物

NFTの議論でも見られるように、この手の相互運用については、技術的なものと法的なものは別物として捉える必要があります。

「Bluesky Webサービスにコンテンツを投稿する場合、あなたはここにBlueskyとそのライセンシーに対し、世界中で永久、ロイヤルティフリー、非独占的な使用権とライセンスを付与することになります。」

しかし、ユーザー コンテンツを所有し、そのコンテンツへの権利を譲渡できるということは、BlueSky が「セーフ ハーバー」によって保護されていない可能性があるため注意が必要です。

Conclusion

私と同じ、今、30-40代の人たちは、SNS全盛期に、今のBlueskyのようなMixiの招待を体験しているのではないでしょうか。そしてゲームなどの仕組みであるハンゲームやモバゲーなどでバーチャルなフレンドによる盛り上がりを経験後、徐々にバーチャルグラフからリアルグラフに流れる過程でfacebookに移行が進みました。そして、その先は、InstagramやTicktokなど多くのSNSが登場するというSNSの流れを体験してきているのではないかと思います。そうした中、このような分散型SNSという新たなムーブメントが今、起きている状況もまた非常に面白いものだと思います。とはいえ、これまでのようにSNSを引き継ぐときに、過去のフィードや、フレンドなどすべてのデータを持ち出すことができる点は、これまでとは異なる、非常に好ましい点ではないかと思います。




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