ピーマンの肉詰め

ところで妻の作るピーマンの肉詰めは本当においしい。食べているとピーマンとは豚肉を詰められるために中を空洞にして生まれてきた野菜であることを確信する。

最近の我が家では妻が作ってくれた料理を食べながらその料理に使われている素材や調味料が何かをあてるというクイズ大会がちょくちょく開催される。

たとえば「この味付けは…醤油?」「ブブ―」「砂糖は入ってる?」「入ってないよ。正解はオイスターソースでした」「うわーその発想はなかったー!」てな具合である。

大会が開催されるのは、私が勝手に開催するからだが、その理由は生まれてこの方の料理オンチを克服したいと、40歳も手前にして今更思うようになったから。

きっかけはやはり子どもである。今は主に6歳の長男に向けてだが(その下は3歳と1歳なので)、子どもたちは料理のサイエンスに私よりもうちょっとでも興味が向くといいなと思って自分自身の挑戦のテイで彼らを巻き込んでいる。

自分について振り返ればこれがたとえば音楽であれば自分が良いと思う曲と出会ったときに、なぜ自分が良いと思うのか、その構成からコード進行やら歌詞の配置や韻の構造などなどを分解し、再現性を解析することに自ずと行動が向いた。しかしこと料理においては、なぜだかそういう好奇心はあんまりわかず、ただただ旨い旨いと食うばかりの人生であった。別にそれで損したとも思っていないのだが、思っていないだけでたぶん損をしているのである。

話を戻すと、ピーマンの肉詰めだ。我が家の味付けなーにクイズにおけるピーマンの肉詰めの登場はもうかれこれ5回目くらいのことだが、私も長男も一向に正解を覚えない。

この、肉から出る脂とあいまった茶系のしょっぱいソースというより汁といったほうが適切な汁はいったい何の調味料でつくられているのか。「色がついていてしょっぱい」時点でもう私の脳の回路では何度挑んでも懲りずに「醤油」というアンサーしか導かれないのだがこれがなんと「ブー」なのである。そうなるともう、しょっぱいという事実からとりあえず「塩」が使われているというなけなしのひとつめクリアは果たすもそのあとがまったく続かない。長男は長男で「みりん?」「ブー」「わかった、油だ!」「…まぁ焼くときに少しひくけど、ほとんど豚肉から出てる脂だよ」とこちらも苦戦している模様。次男にいたっては「えんぴつ!」とさらなる斜め上である。

最終的にほぼほぼ答えみたいなヒントを出してもらってなんとか「コンソメ」という隠し味(じゃない)に辿り着くも、繰り返すがこのお題はもう5回やってるのだ。

まぁ毎回新鮮な気持ちでクイズを楽しめるからこれはこれで幸せかーとかいってちゃんちゃんにするのだが、料理のサイエンスとやらはどうしたと、あとから自問自答したりしなかったり(しなかった)。ちゃんちゃん。

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