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【美術】光、空間の調律者から純粋なる存在への道程「テート美術館展 光 — ターナー、印象派から現代へ」(新国立美術館)レビュー
光とは、我々にとっていかなる存在なのだろう? この展覧会を訪れた日、ようやく訪れたかのように見えた秋の涼しさは早々に休息をとり、残暑の厳しい光が私のうなじを焼いていた。昼に訪れた新国立美術館は太陽に燦々と照らされ、いかにも現代建築らしい無機質な肌が輝いている。中に入れば、複雑な骨組みを持つガラス張りの大きな窓から、光が木漏れ日のように降り注ぐ。その光景は、美術館の空間にふさわしく、ある種のインタスタレーション的な性格すら帯びていた。 そう、何も年々高くなっている入館料を
【美術】どこでもない風景画の光「野又 穫 Continuum 想像の語彙」展(東京オペラシティ アートギャラリー)レビュー
野又穫の描く風景は、随分と奇妙なものだ。それは彼の絵が、どこの、いつの時代とも知れない建築を描くからではない。突如として屹立する建造物は廃墟のようでもあり、作りかけのようでもあるようで、それでいて何処からも人の匂いがしない。だが、そうであるはずなのに、野又の絵は見る者を何かしら懐かしい気持ちへと誘う。懐かしい、という感情は、私はそれをかつて見たことあるという感覚――翻せば、それはどこかに存在していたという感覚に支えられている。 つまり、野又の絵が持つ奇妙さとは、何処にも存