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「美少女戦士セーラームーン」11〜20話レポート

あたし、小川紗良。23歳大卒。ふたご座のB型。誕生石はムーンストーン。性格は人よりちょーっとあまのじゃくで、ちょっと頑固ってとこかな。ある時、へんてこなウイルス・コロナが現れて、外出自粛にしてくれたんだけど、家事とオタ活に勤しめ〜なんて言われちゃって、不安たらたら〜ってカンジ。でもま!なんとかなるか!ははは!

何言ってんだかって人は、ひとまずYouTubeでセーラームーンを見て。

ということで、今週は「美少女戦士セーラームーン」第11〜20話のレポートを綴っていく。

「美少女戦士セーラームーン」11〜20話あらすじ

第10話までで3人集ったセーラー戦士。
今週はその3人の団結力が試される期間であった。
相変わらずおっちょこちょいなうさぎ(セーラームーン)、勉学ばかりに夢中な亜美(セーラーマーキュリー)、気の強い心霊少女レイ(セーラーマーズ)。
普通の生活では絶対に関わり合うことがなかったであろう3人が、時に仲間割れをしながらも絆を深めていく。

「3人で力を合わせたから勝てたの。今日のことを忘れちゃダメよ。」

その他、敵の出現やタキシード仮面の謎の解明など色々あったが、それらについては詳しく後述する。

乙女の胸に理想は2つ

第13話「女の子は団結よ!ジェダイトの最期」で夜空を見上げ、星座を思い浮かべるうさぎ。

「ゲーセンのお兄さん座…タキシード仮面座…あたしったら浮気者!2人に恋しちゃって!罪深い女だわ〜。」

はたまた、第16話「純白ドレスの夢!うさぎ花嫁になる」で結婚相手を夢見るうさぎ。

「タキシード仮面様!元基お兄さん!ははは!幸せ。」

手の届かない憧れのタキシード仮面と、身近で優しい元基お兄さん
うさぎの胸にはいつだって2つの理想がある。
それは浮気心か、それとも乙女心か。

考えてみれば、「花より男子」のつくしだって強気な道明寺と優しい花沢類の間で揺れるし、「勝手にふるえてろ」のヨシカだってずっと好きな「イチ」とずっと好いてくれる「二」の間で揺れる。

乙女とは常に、メルヘンでの理想とリアルでの理想を胸に掲げ、ゆらめく生き物なのかもしれない。

「当たり前のことを言ううさぎちゃんなんて魅力的じゃないよ。僕なんか、どっちかといえば、個性的な女の子の方が好きなんだ。」

と、うさぎに寄り添う元基お兄さん。

「ちぇ!かわいくねえやつ!もうちょっとマシな、普通の女の子っぽい口が聞けないのか?」

と、うさぎをあしらう衛(実はタキシード仮面)。

元基お兄さんを選べば簡単に幸せになれることはわかっている。
わかっているけれど、心のどこかで冒険を夢見てしまうのが、罪深き乙女の宿命だ。

月の光は社会的メッセージ

「月の光は、愛のメッセージ」

いつも次回予告で流れる台詞だが、セーラームーンを見ていると社会的なメッセージが節々から聞こえてくる。

例えば第13話「女の子は団結よ!ジェダイトの最期」で敵のジェダイトに立ち向かうセーラー戦士たちの台詞。

マーズ「今時女よりも男の方が偉いだなんて言ってるのは、おじさんだけだわ!」
マーキュリー「そうよ!女を侮辱するなんて、封建時代の名残よ!」
ムーン「男女差別はんたーい!」

さながら70年代のウーマンリブのような団結と活気で、最後にはこう言い放つ。

「女の子をバカにしないで!女の子はいつも泣いているばかりじゃないんだから!」

あれだけ「おっちょこちょいで泣き虫」が押し出されていたうさぎの成長っぷりと勇ましさに胸を打たれる一言だ。

また、同じく第13話で妖術をかけられた警察官に追われるうさぎのセリフ。

「なんでおまわりさんが襲ってくるの〜!やだやだ!日本の政治が信じらんな〜い!」

中2の女の子が週末の全国放送で発した言葉だと思うとすごい。

第15話「うさぎアセる!レイちゃん初デート」では、都市開発における環境問題に触れている。

敵のネフライトが公園管理のおじいさんに妖術をかける時のセリフ

「人間は自然の恩恵を忘れている。思い上がった人間たちに、自然の怒りをあなたが教えてやるのです。」

敵にしては珍しく正論を言っている。

「人間はもっと自然を大切にすることを考えた方がいい。」

普段は屁理屈ばかりの衛まで正論を言う。
この回はネフライトという悪役以前に、環境破壊というより大きな悪が人間界に存在することが強調されていた。

そして第20話「夏よ海よ青春よ!おまけに幽霊もよ」では親子のしつけ問題にも触れている。

うさぎ・亜美・レイ・ルナがセーラー戦士の合宿という程でやってきたペンションで出会った少女、さきこ。
どこか寂しげな彼女は父親から

「他人と口を聞くなと何度言ったらわかるんだ!」
「親子2人きりのこの父さんの言うことが、聞けんというのか!」

などと厳しく縛り付けられている。
そのしつけの果てで苦しんださきこは、結局心霊パワーを暴発させてしまう。

「これ以上お父さんの言うことを聞きたくないっていうさきこちゃんの気持ちが増幅して、コントロールが効かなくなってしまったのよ!」

毒親や過保護、過干渉といった親子間における問題を思わせるエピソードを、週末アニメで放送していたことに、強いメッセージ性を感じる。

セーラームーンというヒロインを通すことで、よりポジティブかつ強烈な形で社会的メッセージが視聴者に届く。

ジェダイト・ロス

好いてはいけないあの人を好きになってしまった背徳感。
それでも私の想いはもはや抑えることができなかった。

「美少女戦士セーラームーン」において、魅力的なのはセーラー戦士だけではない。
敵キャラがものすごく魅力的なのである。

闇の女王クイン・ベリルの支配下にあるダークキングダムの四天王で、一番手として序盤からセーラー戦士の前に現れたジェダイト
癖っ毛の金髪にシュッとしたシルエット、いつもクイン・ベリルの期待に応えようと必死で、その反面女性蔑視のきらいがある。

はじめこそただの嫌味な悪役だと思っていたが、次第に彼の弱みやそれをカバーしようとする強気な一面に興味を惹かれ、気づけば私はセーラー戦士の変身以上に彼の登場シーンを待ち望んでいた。
なんとも思っていなかったあいつのことがある日突然気になりだしてしまう、あの現象である。

「ジェダイト、名誉を挽回する機会はもうわずかしか残されていないぞ。」
「よいか、お前の代わりはいくらでもいるのだ!」

10話までの段階でかなりしくじってしまったジェダイトは、クイン・ベリルに追い込まれる。

焦りを募らせた彼は、いかにも悪役らしい良いセリフを連発する。

「来るがいいセーラー戦士ども。貴様たちのエナジーも一滴残らず搾り取ってやる!」
「おのれセーラー戦士ども、この借りは必ず返す!」
「チッ、忌々しい小娘め!」
「フンッ、悪あがきしおって!」

こんなに強気なジェダイトだが、度々ツンデレな一面も見せる。

「せいぜい恋の花を咲かせるが良い、この愚かどもめが。」
「成功したら、褒めてやろう。」
「小娘と思って侮っていたが、以前会った時よりかなり腕をあげたようだな。」

また、彼は度々弱みが垣間見えるところも良い。
例えば第12話「私だって彼が欲しい!豪華船のワナ」で、豪華船の船長に扮したジェダイトが、カメラマンに扮したうさぎと出くわしたシーンでは

「何か気になるこの女…」
「なんだ、この妙な予感は…この俺がこんな小娘に警戒心を持つなんて。」

と、明らかに翻弄されている様子が見れる。
また、同じく12話でセーラー戦士にとどめを刺そうとしたジェダイトは

「フンッ、こざかしい、これで終わりだ!」

と、意気揚々と襲いかかるのだが、たちまちセーラー戦士たちの前から姿を消し、クイン・ベリルによってダークキングダムに引き戻されてしまう。
その際の間の抜けた感じも、悪役にしてはなんとも言えない人間味があって良い。

結局クイン・ベリルの警告後も失態を繰り返してしまったジェダイトは、いよいよ

「セーラームーンたち3人の邪魔者を倒すのだ。倒せなければ、永遠の眠りの刑だ。ジェダイと、わかっておろうな、永遠の眠りの刑に課せられたものは闇の底に落ち、二度と蘇ることはない。」

とクイン・ベリルに命じられる。
ついに崖っぷちに立たされたジェダイトは、セーラー戦士たちをおびき寄せ、こう言う。

「花の命は短くて、苦しきことのみ多かりき。お前たちの命も今日限りだ!」

ここにきて林芙美子の短詩を用いるインテリジェンス。
その後ピンチに陥ったセーラー戦士のもとにタキシード仮面が駆けつけるが、それをも突っぱねこう叫ぶ。

「泣け!わめけ!男がいなければ何もできぬのか!所詮女などは浅はかなものよ!ははははは!」

ジェダイトの根底にある女性蔑視が露呈した発言だが、その思想はクイン・ベリルによる長き支配によるものだと私は知っている。
彼はずっとクイン・ベリルに言われるがままに、期待に応えようと、必死だったのだ。
その言わば共依存のような関係が、彼の女性に対する思いを歪ませ、拗らせてしまったのだ。

結局セーラー戦士を倒せなかったジェダイトだが、セーラー戦士の正体という重大な情報を手にする。
その手柄をクイン・ベリルに報告しようとするのだが…

「言い訳など見苦しい!永遠にお眠り!」

と切り捨てられ、永遠の眠りの刑に処されてしまう。
かわいそうなジェダイト。
まさに花の命は短くて、苦しきことのみ多かりき。

こうなることはわかっていた。
だって最初の敵キャラなんて物語全体で見たら超弱いに決まっている。
ドラゴンボールで言ったらピラフくらいのものだろう。
だからこそ、私は彼が1日でも長く生き延びることを願っていた。
あわよくば、改心してセーラー戦士の側につくことを期待していた。
しかし当然そんなことはなく、ついに息絶えてしまった。

よくやったジェダイト。
もう頑張ることはない。
どうか安らかに…。

こうして私は深刻なジェダイト・ロスに陥っているわけだが、いつかまた新たな敵キャラに惹かれ、夢中になってしまうことだろう。

タキシード仮面

正直言って10話までの段階では、私は彼が嫌いだった。
ピンチの時に駆けつけるが、ピンチにならないと駆けつけない。
駆けつけたは良いものの、いつもバラを1本投げて帰るだけ。
なんならピンチなのにやってこない日もある。
そのくせ一人前に助言をしてくる。
全然頼りにならないし信用ならない。

それでも、彼には謎が多すぎるしまだ考察の余地があると思い、じっと様子を伺っていた。
結果、私はタキシード仮面に対する感情がよりわからなくなってしまった。

頼れるのか、頼れないのか。
信用できるのか、できないのか。
味方なのか、敵なのか。
好きなのか、嫌いなのか…。

まだまだ謎だらけだが、今週の時点でタキシード仮面に関してわかった重大な情報が3つある。

①タキシード仮面の正体は衛だが、衛はまだそのことを自覚していない。
②バラを投げる以上のこと(長い棒で敵をつつく、一緒に逃げるなど)をしてくれる時もある。それだけでちょっと嬉しい。
③遠い昔、セーラームーンと何らかの関わりがあったが、何だったかは思い出せない。

新たな情報が出てきたことで、タキシード仮面の謎がより広がってしまった。

また、先週まではうさぎやレイがタキシード仮面に惹かれる理由がわからなかったが、第13話「女の子は団結よ!ジェダイトの最期」の終盤で

「私は簡単には死なない。」

と微笑む姿や、
第14話「新たなる強敵、ネフライト魔の紋章」でピンチのうさぎを抱きかかえて飛び、

「次で決めるぞ。」

と囁く姿、
そして第19話「うさぎ感激!タキシード仮面の恋文」で、なぜいつも助けてくれるのかうさぎに問われ

「無性に熱き血が騒ぎ、助けたくなる。」

と答える姿などを見ていると、少しずつ惹かれ始めている自分もいる。
完璧なナイトではないけれど、いざという時にちゃんと手を差し伸べてくれる存在。
タキシード仮面はそのくらいが良いのかもしれない。

20話まで見て余計にタキシード仮面への思いが複雑化してしまったが、彼については引き続き慎重に見守っていきたいと思う。

セーラームーンと女の幸せ 〜優しさとガッツ〜

「秋山ヒグレ先生、いまだ独身、34歳。結婚願望の強い先生は、自分の縫い上げたウェディングドレスで結婚式を挙げることが人生最大の夢でした。」

第16話「純白ドレスの夢!うさぎ花嫁になる」の序盤で流れる言葉だ。
この回は、「女の幸せ=結婚」という当時の一般的な価値観を強く感じるものだった。

「理想はあくまで高く果てしなく!ハンサムがあればあたくし、チャンスを掴む!目標、25歳までにゴールイン!」

といううさぎのセリフからも、とにかくハイスペックな旦那をいち早く捕まえなければという強い使命感を感じる。
25歳という目標設定も、今の平均初婚年齢からしたら早い方だ。
今となっては秋山先生が34歳で独身でもなんらおかしいことはない。
もちろん誰かと一緒に生きていくことの幸せはあると思うが、それにも様々な形があるし、それだけが幸せとは限らない。

第13話「女の子は団結よ!ジェダイトの最期」でも、セーラー戦士たちが敵のジェット機を攻撃しようとした際、ルナが

「ダメ!ジェット機っていくらすると思ってんの?みんなの一生分のお小遣いでも弁償できないわよ!」

と叫ぶが、女の子は一生お小遣いで生きていく、すなわち結婚して家のことに従事するという価値観をうっすらと感じる。

第19話「うさぎ感激!タキシード仮面の恋文」では、みんなに偽のラブレターが届いた翌日の教室で先生が

「みなさん、ラブレターのいたずらに惑わされてはいけません。女性は常に恥じらいと節度を持つこと。いいですね。」

と呼びかける。

とにかく当時の一般的な価値観においては、「女は清らかに立ち居振る舞い、若さの限りあるうちに結婚という幸せを掴むべき」という観念があったことを、セーラームーンを通して感じる。

考えてみれば、セーラー服という戦闘服も、限りある若さを象徴するものである。
まるで戦うならば若いうちとでもいうような、一生の幸せを若いうちの出来事に支配されているような感じさえする。

そんな世界線を生きているうさぎに対して、第17話「モデルはうさぎ?妖魔カメラの熱写」で衛がこんなことを言う。

「女の子の美しさってのは外見だけじゃあない。中身だ。優しい心と、正しいと思ったことをやり抜く正義のガッツだ。」

珍しく衛が良いことを言ったなと思った。
これまでセーラームーンにおいて女の子を形容する言葉といえば「か弱い」や「うら若き」「清らかな」などどこか弱々しさを感じるものだったが、そこに「ガッツ」という強みが加わったのが良かった。

優しい心正義のガッツ
女の子に限らず、現代を生き抜くにも通用する内面の美しさだと思う。
幸せは人それぞれ、比べることも競うこともできないが、優しさとガッツがあれば少なくとも今がより良くなるような気がする。

「月にかわっておしおきよ!」

そう唱えて、セーラームーンは次週も私を励まし前向きにしてくれるだろう。
今夜も月は高く昇り、変わらず街を照らしている。


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