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2023年自選10首


味のしない涙をぼてぼて落としても父の血圧はまだまだ高い

三グラム五千円でも駄目だった 食堂のあとのくちびる白し

もしかして:本を後ろから読む君の別れ付近の長い回想

エモ説法 そこに無いならないですね、かつてそれをあらわしていた言葉

心臓を舐められるような苦しさを胃もたれなんて信じるな ばか

かくれんぼ 視線と視線の隙間にはきっと無数の彼の偏在

ワンルーム 守らなくていい言いつけを破ると母の気配がそこに

棺桶に入れたいものを買い集め花火コーナーで立ち止まる冬

深爪の痛みで薄めた感情を言葉にできず染みにしている

汐留と汐入の違いわからない 睨んでないのに泣かれてかなしい



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