【たべる】ライ麦パンのフレンチトースト

効率化を追求したパンという食事

 日本の主食が米であることには論を待たない。しかし、その比率はパンが多くを占めるようになった。戦後から一貫して上がり続けたパン比率が増加した要因はさまざまだろう。そのひとつに、給食が大きな役割を果たしたことは否定できない。

 戦後、欠食児童の栄養補給という役割を担った学校給食はパンが主食だった。パンは学校で食べるもの。そんな刷り込みが戦後間もない頃から始まる。それは当然な話かもしれない。なにしろ、あんぱんを考案したとされる銀座木村屋は、明治天皇にあんぱんを献上したことで知名度をあげた。

 それほど、パンは高級品だったのだ。給食に出されるパンは、こっぺぱん。木村屋の高級品とは異なる。それでも、庶民にとって、パンは縁の遠い食品だったことだろう。給食によって。しだいにパンは食卓にのぼるようになった。そして、朝に食べられるようになる。

 一分一秒を惜しむ出勤前・登校前の忙しい朝、パンはそのままジャムやバターを塗れば食べられる。なんなら口にくわえて家を飛び出すこともできる。米は、おにぎりにしなければそれができない。明らかに時短だった。

 こうして、しだいに忙しい朝にパンが定番になり、パンは朝に食べるという固定観念が広まったとように思われる。私見だが、「パンは朝」という概念が広まる過程には、ビジネスホテルの普及、つまり出張族の増加なども一因にあったと思う。

 昭和30年代、高度経済成長をひた走る日本では、それこそ多くのサラリーマンが誕生した。その一方で、地方への出張なども増えた。ビジネスホテルの朝は慌ただしい。

 チェックインは客が分散する。しかし、チェックアウトは同じ時間帯に客が集中する。しかも、チェックアウトは一分一秒を争う作業になる。だから、朝食も時間効率が優先される。

 ビジネスホテルの朝食が米よりパンを重視するのは、当然の帰結だったのかもしれない。ビジネスホテルの朝食は、時代とともに作業効率化が進められ、現在はブッフェスタイルも増えている。

 ブッフェスタイルを採用していなくても、パンだけおかわり自由といった感じで、山盛りにして大テーブルに置いておくビジネスホテルもある。いまや、ネットカフェでも朝食を無料で提供する店が出現しており、そこには食パンとフライドポテトが供されている。

 本来なら、キッチンで温められたパンがテーブルまで運ばれてくる。それがビジネスホテルでもネットカフェでも、客がトーストターで焼き、自席まで運ぶ。そんな光景は当たり前になった。が浸透し、省力化・効率化が求められた結果だ。

ガスで炊く米

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