【書籍・資料・文献】『革新自治体』(中公新書)岡田一郎

議院内閣制と二元代表制 国と地方で異なる政治システム

 安倍一強と言われる国政。対して、地方の構図は単純ではない。今般、地方統一選挙統一率は低下の一途をたどる。

 統一率が低下すると、各都道府県市区町村がバラバラに選挙を実施することになる。

 各選挙がバラバラに施行されると話題性も薄れ、それは投票率の低下を招くとも言われる。

 しかし、統一率が低下したということは、首長が不祥事を起こしてきちんと辞任させられた、議会が解散したということの裏返しでもある。

 不慮の死などもあるので一概には言えないが、統一率の低下は民主主義がきちんと機能したという証左でもある。

 そもそも地方選を同時に施行する必要はあるのか?

 日本全国、各地の政治課題は異なる。不交付団体の東京都、都構想の是非を議論する大阪府、基地問題で揺れる沖縄県。たった3都府県を見ただけでも、明かだ。

 国政では、自民党が長らく与党として君臨してきた。55年体制と呼ばれる政治体制は、自民党が一時期に野党に転落して中断していたものの、現在に至ってもなお継続している。

 一方、地方に目を転じれば、自民党が必ずしも与党側にいるわけではない。先に挙げた東京都・大阪府・沖縄県の3都府県では自民党は野党に甘んじている。

 そもそも、地方の政治システムは国政の議院内閣制とは異なり、二元代表制を採用している。議会で自民党が与党でも、首長が自民党系ではない場合も珍しくない。実際、先の3都府県も直近の選挙では自民党が推した候補ではなかった。

 首長が自民党系候補だとしても議会では自民党が野党だったり、その逆だってある。いわゆる、ねじれの状態ということになるが、首長の権限は絶大だ。

 ゆえに、昨今の首長選で候補者が特定政党から「公認」されることは珍しく、複数の政党から「推薦」「支持」「支援」といった形で擁立される。その萌芽、幅広く票を集められるからだ。

 そうした特定政党からの出馬を是としない風潮は、首長の権限が絶大であることの裏返しでもある。特に、2000年の地方分権一括法以来、この潮流は加速した。

革新自治体の誕生

 しかし、保守合同によって55年体制が築かれた直後の地方における政治は違った。自民党が擁立した候補者が長らく当選を続け、非自民党候補者が首長に当選した自治体は革新自治体と呼ばれた。

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