81.ザ・ゴール
北島 和泰 さんが、おすすめされていた「ザ・ゴール」ですが、15年程前にこのシリーズを全て読んで、当時ブログ用にメモを残していたので、私なりに理解した内容を書きます。
概要
この書籍は Eliyahu M. Goldratt さん
のマネジメント理論で、TOC(制約条件)理論を一つの物語を通じて学ぶ事が出来ます。
このようなビジネス理論は難しく解説されているものが多く、一般の方にはなじみにくい所がありますが、この本は読み進めていくうちに自然と理解出来るストーリー仕立てです。
ページ数は多いですが非常に読みやすく、次の展開を考えると「わくわく感」があり面白く、ためになりました。
また、仕事と家庭間での問題なども入っていますので、ビジネス以外でも参考になるのではと感じます。
制約条件が工場のスループットを決定する
スループットとは「販売利益の創出能力」を指します。
工場では、複数の工程を経て1つの完成品が作られるのですが、その過程にはさまざまな部品が必要であり、それらが集まってようやく完成品となります。
各工程で最高の稼働率でもって部品を作ることで、より多くの完成品が作れると、普通なら考えそうですよね。
しかし、実際はそうではありません。この理由としては以下です
各工程での処理能力には必ず差がある
1つの完成品を作るには、すべての部品が必要
それぞれが最高の稼働率の場合、必ず余剰部品が発生する。つまり、その余剰部品を沢山作ったとしても部品の在庫が増えるだけである
在庫が増えると管理・維持費が発生する
これらの事を考えると、工場でのスループットを決めるのは
「最も生産能力の低い工程」
と言えます。
制約条件を見つけるには
これは単純に
「工程の前に溜まっている部品がもっとも多い所」
と考えられます。つまり、ボトルネックですね。以降は制約条件をボトルネックとして表現します。
しかし、実際に工場のスループットを決める工程は、複数ある場合がありますので、どこが主となるボトルネックなのか、この判断は慎重に行う必要があります。
ボトルネックの考え方
最も生産能力の低い工程がスループットを決定するのならば
「その工程を休む暇なく稼動させ続ける事がより高いスループットを生み出す」
と言えます。この、時間リソースを有効的に活用していくことが大切です。
ボトルネックを中心に流れ(作業フロー)を考える
「最も生産能力の低い工程を基準」にすべての工程の流れを決定します。
つまり、工程が「止まる隙を与えないような流れを作り出す」を考える必要があります。
例えば、出来た部品を検査する工程があったとします。また、その部品は複数の部品から作られているとしましょう。
その場合ボトルネックの後に、作られた部品のチェックを行い、そこで問題が発生すると、その工程での作業は無駄となります。
もしその問題の部品が、この工程とは関係のない所で作られた部品であった場合、ボトルネックより前でチェックを行えばその工程を無駄に通す必要もなくなるわけです。つまり、ここに改善の余地があります。
また、注意する点としてはボトルネックをぎりぎりまで稼動させ続けても、その後で止まってしまっては結局別のボトルネックを作る事になりかねないため、「流れ」を考える必要があります。
他のボトルネック・問題が発生していないか調査する
作業が改善されると、流れが変化するのでボトルネック以外で別の問題が発生する場合があります。
また、安定するとその工場ではボトルネックを見つける事が出来ない場合もあり、そのような状況では「販売・経営などの別の部門」の改善を考える必要があります。
TOC5ステップ
「ボトルネックを見つけるには」~「他のボトルネック・問題が発生していないか調査する」を繰り返し行い、改善します。
これらは、TOCの5ステップと呼ばれ、以下のように定義されています
ボトルネックを「見つける」
ボトルネックをどのように「活用するか」を決める
他のすべてをステップ2の決定に、「従わせる」
ボトルネックの能力を高める
ボトルネックが解消すれば、再びステップ1に戻る
この考え方はソフトウェア開発にも使えそうですね。その場合であれば
システム能力のボトルネックを探す
ボトルネックとなる処理は極力少ない回数で
処理が一箇所に集中しない工夫
よりパフォーマンスを意識した作りへと改善
システムの能力を測定し、再度ボトルネックがないか確認
と、考えられます。
TOC評価指標
スループット = 売上 - 資材費
純利益 = スループット - 経常費用
投資利益率 = (スループット - 経常費用) ÷ 在庫
在庫 ≒ 企業システムが販売を意図するものを購入する際に投資する金額
経常費用 ≒ 企業システムが在庫をスループットに変換するために支出する金額
工場の自動化システムの場合、このような所に目を向ける必要があります。
行動こそがもっとも重要である
この本の最後に書かれていたことで、私自身の経験からもそう感じますが
「どんなにすばらしい理論があったとしても、それを行動に移せなければ意味がない」
これは皆さんも十分に理解されていると思います。
しかし、実際に改善を行うために行動しても、反対勢力によって押しつぶされる場合があります。
または、協力を得られず、ネガティブな意見ばかりを聞くことも多いです。
これを変える方法としては
「周りの人たちを敵として見ない事と、与・見・聞・考・動に集中する事」
短い時間では効果がないですが、忍耐強く続けていくことで少しづつ必ず変化が現れます。
1人でも同意してくれる人が現れると、少しづつ受け入れられる環境が構築されていきます。
出来る限り周囲の人の協力を仰ぎながら、改善に取り組んでみてください。
お気持ち感謝に尽きません🙇♂️