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水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

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皆さんには水の声は聞こえるだろうか? 水の声は私を遥かに速い泳ぎへと導いてくれました。 そして、その水の声が私の人生を大きく変えたこと。 不思議な体験をさせてもらった事。 今まで…
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#眠れない夜に

【No.16】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

校内水泳大会 (決勝編) 俺は最後の7コース目だった。 この7人が選ばれたときの順位は秒数が早かった順位7人。 だからといって俺が7番目というわけではない。 くじ引きのような感じで7コース目で俺は泳ぐ事になった。 ある意味では最悪の場所である。 一番端なので、声援がうるさくて水の声が聞こえずらい場所だった。 しかも、隣の6コースは大嫌いな小松…。 全くもってついていない…。 不安になりながらも俺達7人はスタート台に立った。 最後の競技という事もあり、プールは大盛り上がりで

【No.17】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

50メートルターンを終えた辺りから異変に気づく。 他のコースに腰から下の足だけが見えるのだ。 泳ぎ疲れたわけではなかった。 その選手達は自分たちの事をそっちのけで俺と鈴木の一騎打ちを見ていたのだ。 息継ぎの時に見えた上半身の姿は、俺と鈴木を応援している姿だった。 そして、それまで以上に怒涛のような声援が聞こえだしてきた。 鈴木は俺の前か? 後ろか?  意外にも俺は鈴木を意識し始めていた。 俺のこの時からの泳ぎには水の声は聞こえていない。 そうだ。彼女もまた、この一騎打ちを見

【No.18】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

告白 次の瞬間、クラスメートが俺を迎えてくれた。 一際物凄い勢いで、それは訳がわからないほどだった。 その中に中田もいた。 久しぶりに見る中田の笑顔。 中田も笑顔だったが少し泣いているようにも見えた。 俺はこの時はじめて胴上げというものをされた。 空中に浮く感じの、かなりおっかなかった胴上げ。 その後に拍手が巻き起こり、中田や他の連中たちと抱き合い、喜びを共にしていた。 俺はクラスメートからクラスの一員として初めて認められたような感じだった。 新木が俺の目の前にきた。

【No.19】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

新木は新しく買ったばかりのような、それこそお嬢様の服装で座っていた。 新木の前に立っても、俺の姿に気が付いていなかった。 時折、その真新しいピンクのスカートに涙を落としていた。 俺は声がかけられなかった。 しばらくその場に立っているのがやっとだった。 マスターが新木にハンカチを持ってきてくれた。 『安物だけど、使ってね』 その言葉で、俺に気が付いた。 新木『…んね…ごめんね』 泣きながら彼女は必死に何かを伝えようとしていた。 その姿から、俺は何も言葉が出なかった。 俺『