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DAUと継続率に振り回される邪悪なスマホゲーム運営の現実

今回は、スマホゲーム運営のエンジニアとして4年ほど仕事をした経験から「DAUと継続率という指標を正義としてゲーム運営する邪悪さ」について書きたいと思います。

ゲーム運営においては売上が1番重要です。
そして売上が上がるための大切な指標としてその日遊んでくれているユーザー数(DAU)と継続率という指標があります。

基本的に、スマホゲーム運営はこの二つの指標と合わせて、課金系の指標(※1)を元に、売上予測を立てたりイベントやガチャなどの効果を分析します。

※1 課金ユーザー1人あたりの課金額「ARPPU」や課金率「DAUのうち課金したユーザーの割合」など。

課金系の指標の話は機会があればまた別の記事で。
また、DAUや継続率といった指標についての解説もネット検索すれば詳しいものがたくさん見られるのでここでは説明しません。
ちなみにこの記事は詳しくてわかりやすいです。
http://analytics.hatenadiary.com/entry/20131105/p1

では、DAUと継続率を正義としてゲーム運営をすることの「邪悪さ」の一例を示したいと思います。

ゲーム運営のある1コマ ---

ユーザーにゲームを楽しんでもらうために10日間のイベントを用意しましょう!

イベント期間のDAUと継続率、および売上はこのくらいを達成したいですね。

DAUと継続率を上げる施策として絶対に外せないのが「ログインボーナス」です。
イベント期間中は特別なログインボーナスを用意しましょう!
イベント期間のログインボーナスを全て受け取った人は10連ガチャチケットが貰えるようにしましょう!
そうやってユーザーを毎日ゲームに誘導したいですね。

さらに、イベント期間中にやることがなくならないようにポイントを稼いでアイテムを獲得する周回マラソンタイプのイベントにしましょう。
1日に3回まで周回イベントで獲得できるポイントが優遇される仕様にしたので毎日3回は周回しておかないと損ですね!

さらにさらに、このイベント期間中はイベントクエストに連れて行くと獲得ポイント倍率がアップするキャラ(イベント特効キャラ)が排出されるガチャが1日1回タダで回せます!
毎日ログインして回しておかないと損!!

さらにさらにさらに、特効キャラを連れて1日3回イベントクエストをこなしていたら、ポイント報酬が全部取りきれそうな気がしてくる設計にしましょう。ポイント報酬の最後はなんとなんとゲームで1番レアなあのアイテム!!
イベント期間のどこかでもう少し周回頑張ってもらいましょう!!!

こうして数々の施策により、イベント期間10日間のDAUと既存継続率は目標値を達成。
それに伴い売上も見積もり通りの数値となり、運営チームは会社から褒められ、若干の達成ボーナスがもらえることが決定しました!
めでたしめでたし。
次のイベントも頑張りたいですね!

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こんな感じで運営されていそうなゲームに心当たりはありませんか?
僕は何度もこういった運営を目にしてきました。

僕、これ嫌いなんですよね。
だってこのイベントをきちんと遊んだユーザーって、1日1〜2時間を10日間毎日、合計20時間くらいは消費するんですよ?
でもこのイベントが楽しいのなんて大体30分くらいで、それ以降は報酬で釣ってつまらないプレイをユーザーに強いているだけのゲームが多いです。

このイベントの例であれば、イベント期間のうちどこか任意の30分を遊べば楽しめて報酬も全部獲得できる仕様のほうがユーザーの時間を拘束せずに楽しんでもらえるのに、そうしない理由ってなんですかね?
運営都合のDAUと継続率達成のためとしか考えられません。

20時間あったらバイトすれば2万くらい稼げていいもん食べて遊んだりできますし、
スーパーマリオオデッセイをクリアするまで楽しむこともできますし、
かなり気合の入ったブログ記事の1本や2本が書けちゃいます。

「ユーザーに楽しんでもらうため」という目的はたしかにゲーム運営の中にあります。
その達成基準をDAUと継続率(と売上)に設定するところが間違えている。
このゲームを遊ぶことを含めてユーザーの人生を豊かなものにしてもらいたいという視点があれば「いかに少ない時間でより楽しんで貰えるか」と考えるはずです。
それを、DAUと継続率が高い方がユーザーの熱量が高いという認識してしまうところが邪悪だと思うのです。

直近の話題作の例だと、ドラガリアロストのイベントがまさにそれですね。
マルチイベントも施設イベントも30分で楽しい部分が終わり、あとは報酬を獲得するために同じクエストを周回することになります。
なぜ、楽しい最初の30分とともに全ての報酬を獲得できないのでしょうか?
任天堂というユーザー体験を重視する企業が協業しているにもかかわらずこの邪悪さ。
闇鍋ガチャなんかよりこちらの方が圧倒的に邪悪です。
本当にユーザーのことを考えているのであればなんの変化もない周回を長期間繰り返させる仕様にするわけがありません。
明らかにDAUと継続率を維持したいための邪悪な仕様です。

こういった運営都合の数値のために楽しくない時間をユーザーに過ごさせるのは邪悪な運営だと思うので、この考え方に賛同できるプランナーやディレクター、プロデューサーが増えてくれることを願います。

最後に。
僕がnoteの他の記事( https://note.mu/ogataiki/m/m87f2ae6f8b21 )で書いている内容も「ユーザーにとって本当に良いことは何か?」という視点のものとなっています。
これからもそういった内容の記事を追加していくつもりですので、気に入った方は是非いいねやフォローをしていただければ嬉しいです。

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