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オノ・ヨーコ氏と電話で話した話

私は現代芸術の巨匠オノ・ヨーコ氏と電話で話したことがあります。
本当に、ホント。

時は2011年の夏。
その頃の私はぐちゃぐちゃでした。

念願だった本の初出版が叶いそうなのに、田舎の父が死にそうになっていて、介護や危篤と言われるたびに仕事を前倒しで片付け、予定をキャンセルして飛行機を予約する日々。保育園児の子どもを抱えながら、家事も仕事も介護も全部を完璧にこなそうとして、できない自分にイライラし、失望していました。
そんな夏のある日、忙しい合間にもアートの祭典「横浜トリエンナーレ2011」へ行きました。こんな気持のときこそアートは必要なんです。今の現実とは別の視点をくれて、全く別の世界に連れて行ってくれるから。。。

その美術館の中に、オノ・ヨーコ氏の作った作品「テレフォン・イン・メイズ」がありました。透明な迷路の真ん中に電話が置いてあって、気まぐれにオノ・ヨーコ氏から電話がかかってくる…というアートです。
この作品の展示があった2011年は、震災のあった年で「人との絆」を表現しているアートとのことでした。

オノヨーコ氏カット_001



とはいえ、そんなラッキーなことはないだろう…と思い、美術館の作品をゆっくり楽しんだ後、併設のレストランでお昼御飯を食べました。
「そろそろ次の展示会場へ移動するか」と、美術館のロッカーに預けていた荷物を取りに戻ったときのことです…

リリリ・・・リリリ・・・

電話が鳴っていました。しかもそのアートのコンセプトを知らない人が多かったのか気がついている人がいない…。さすがにスタッフさんが、近くのお客さんに声を掛けたようで誰かが電話を取り、話していました。

「もしかしてこれ…今行ったら、オノ・ヨーコ氏と話せるんじゃ!?」

早速、透明の迷路に入り受話器を持ち話している人の後ろに並びました。先に受話器を取って話している人も「はあ…ええ…」とドギマギした答えをしていて、緊張している感が伝わってきます。
わあ、自分に受話器が回ってきたら何話そう…ええ…ええと(真っ白…)
すると先に受話器を持って話していた方が―

「次の人にまわしてくださいって…どうぞ」

自分の順番キターーーーー!

緊張してほぼ何を話したか覚えていないんですけど…
オノ氏は今日、出張先のロンドンから自宅のあるニューヨークに帰ってきたばかりで、現在ニューヨークは夜中であると言われました。
私が言えたのは―

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それにオノ氏はこう答えました・・・・

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おう・・・巨匠に言われると、ぐうの音も出ない…
ああもう、アート。これがアート!
不思議な力で今私は巨匠と同じ時間を生きて、歴史の瞬間がつながっているんだ。
一瞬にして宇宙に飛んだ気分!!!!

ええと、自分何悩んでいたんだっけ?
―っていうか自分すげーラッキーじゃない??
私じぇんじぇん、持ってる持ってる~~~~まだまだ行ける~!
オーイエーーーーーーー!!!!!


その後この出来事は、ビートルズ好きになった息子への自慢話のひとつとなったのですが、その話をして以来「これが、アートよ」は我が家で破壊力のある決めゼリフとなっております。

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失敗しても、片付かなくっても、先に進まない今日も、努力が実らなかった仕事も、もんもんと解決しない出来事も―
「これがアートよ」
とつぶやいた瞬間に、なんだかすごい高価で作り込まれた意味のある作品に思えてくるような…こないような⁉

「んなわけないだろーっ!!!笑」

と、皆で笑う鉄板ネタになっています。

なので、皆様もなんとなく上手く行かなかったとき、盛り付けた料理が崩れたとき、旦那の脱ぎ捨てた靴下を床で見つけてイラっとしたとき…つぶやいてみてください。

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人生にアートは必要だ!