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心の島 小笠原-19 ストレス解消

どんなに好きな場所でも、暮らしていればストレスを感じるときもある。でも、都会ではいろいろなストレス解消法があるけれど、島では都会と同じ手段が取れるとも限らない。ストレスの波が来たときに、どうやってかわすかという方法を自分なりに持っていないと、ときには暮らしがとても辛くなったりする。ストレス解消法、大事。


小笠原との関わりは30年以上になる。
取材で、個人の旅で、もう何十回行ったかわからない。コロナ禍の3年を除いて行かなかった年はないし、一時期は住んでもいた。その間に見たり、感じたりしたことを1つずつまとめていってもいいかなと思い、書き始めた。本当の雑記だが、興味あったら幸いです。


ストレス解消は人それぞれいろいろやり方があると思う。私だと、都会に住んでいたときにむしゃくしゃしたことがあると、話を聞いてくれそうな人を誘って飲みに行くことが多かった。そして「ちょっと、聞いてよ!」と話して発散する。
でもこれは小さい島ではやりにくい。ストレスを受けた相手が人間だった場合、話す内容はともするとストレスに感じた相手への批判だったりするから、小さい島でそういう話をすると、いつの間にかそのことが相手に伝わってしまうこともなくはない。
人の噂は島の娯楽だったりするから、ある意味しょうがない。
スポーツはしてなかったので、テニスやバドミントン、剣道など、部活動で発散もできなかった。

島にいたときの解消法その1は、愛用の電動アシスト自転車でガーッと走り、急坂をブレーキ操作を絶妙に操って走り下りる。イヤホンで好きな曲を聞きながらこれをやると結構スッキリした。

本当に落ち込むと、誰にも会いたくないこともある。深くメンタルがやられたときは、自分で「書斎」と名付けていたポイントまで自転車で行って、絶景を眺めながらポットに入れてきたコーヒーを飲んでぼんやりしていた。海と空を眺めながら、できるだけ頭を空白にしていると、徐々に気分が落ち着いてきたものだ。根本的な解決にはならないけど、気分を持ち直すにはよかった。
「書斎」は、新夕陽丘。北進線と呼ばれる、島の北に向かう道沿いにある夕日スポットで、ベンチもちゃんとある。トップに出ているのがそのベンチだ。こんなところで昼日中にコーヒーを飲んでボケーっとしているなんて絵に描いたような暇人だけど、よくやっていた。

新夕陽丘からはこんな夕日が見られた

あとは旧ヘリポートという、今は使っていないヘリポートがあるのだが、その手間にある農業用水を汲み上げるポンプ室の上。ここからは営農研修所が管理していた畑がなだらかに広がっていて、当時は牛も飼われていたかな、見えなかったけど(今はいない)。
コンクリートの建物の側面にはしごがついているのでそこからよじ登っててっぺんにすわる。春先だとザトウクジラがブロウしているのが見えたりして、落ちた気分が少しずつ和らいでいったものだ。

それから、水着の上にTシャツ短パンを来て、自転車で脇浜という砂浜まで行って、水着になってただ仰向けに海に浮かぶというのもよくやっていた。これは、帰る2,3ヶ月前に、ようやく「人にどうこう言われることをあまり気にしない」という腹が座ったのでやっていたのだ。これをやると、絶対「昼間さあ、水着で海に浮いてたよね」とかいわれるので。

それから日課のように行っていたビーチコーミング。最初はただ貝を拾ったりしただけだったが、だんだん木の実や陶片などにも興味が広がり、Twitterやブログで同好の士の書いた情報を調べて、漂着物の知識を積み重ねていった。ときおり思いがけないものも拾えて、その時のテンションはそうとうストレスを解消してくれた気がする。
ビーチコーミングについてはまた改めて書きたい。

しかし究極的には、自分というものからはどこに行っても逃れられないんだと感じた1年3ヶ月だった気がする。自分の弱点や、自分が自分にうんざりするポイントは自分の芯の中にあるので、場所がどこでもその芯が溶けない限りどこででも同じストレス、悩みにみまわれる。
だけど、周囲に海や森があることが、そのストレスを和らげて癒やしてくれることも知った。
それもあったからか、今は横浜を離れて三浦半島の海べりで暮らしている。

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