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日本書紀と白秋のウミスズメ

中村庸夫『魚の名前』(東京書籍、2006)の「ウミスズメ」「海雀」48ページ。「出雲の海岸」に、たくさんのウミスズメが「打ち上げられ、それを見て雀が海に入って魚になったとして、「日本書紀」に「雀魚」と記録に残されている魚です。」――そして、岩波文庫の『日本書紀(四)』(坂本太郎・家永三郎・井上光貞・大野晋 校注、1995。全5冊)の346ページ(「日本書紀 巻第二十六」から)、〔 〕ルビ、「北海〔きたのうみ〕の浜〔はま〕に、魚〔うを〕死〔し〕にて積〔つ〕めり。厚〔あつ〕さ三尺〔みさか〕許〔ばかり〕。其の大〔おほ〕きさ鮐〔ふく〕の如〔ごと〕くにして、雀〔すずみ〕の啄〔くち〕、針〔はり〕の鱗〔いろこ〕あり。鱗の長〔なが〕さ数寸〔あまたき〕。」347ページの注に「鮐は河豚。」そして346ページ「『雀海〔うみ〕に入〔い〕りて、魚〔うを〕に化而為〔3字ルビ な〕れり。名〔なづ〕けて雀魚〔すずみを〕と曰ふ』といへり」――そして、北原白秋の詩「海雀」(ここには、中公文庫「日本の詩歌」の1冊『北原白秋』1974、173ページ)は、「波ゆりくればゆりあげて、」「銀の点点、海雀。」海鳥のウミスズメの詩であると言われることもあるけれど(この中公文庫173ページの、紫色の文字の注でも、そうであると言われている)、鳥類学の三上修が「ウミスズメは一般人が目にできる鳥ではない。」と指摘しているので(「現代詩手帖」2024年8月号、特集「動物と読む現代詩」の文章「現代詩の沼、鳥研究の沼」84~85ページ。ただし、この文章では魚であるウミスズメを言っていない……)、白秋が日本書紀の魚(と、むかしから、雀が海に入ってハマグリになると言われていたこと)を思い出して書いたと言えないだろうか――

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