見出し画像

「野望の地平」にはFE風花雪月の全てが詰まっている

※この記事は、この世に生を受けた一介のVtuberが好きなことを好きなように語ったエッセイっぽいものです。
※今回特にシナリオ後半の展開に関する軽いネタバレが含まれるため、未プレイの方はご注意されたし。というかぜひご自分でプレイいただきたい。

時に、「ファイアーエムブレム風化雪月」というゲームをご存じだろうか。

SNS等で「シナリオ100点、道徳0点」と言われていたあのシミュレーションRPGシリーズの最新作である。

傭兵上がりの主人公はファンタジー世界の大陸「フォドラ」のとある学園の教師となり、ゲーム再序盤に3つの学級から1つを選ぶ。それぞれの学級の生徒たちはフォドラ内の三つの国の出身である。
授業や訓練戦闘、時に悪の組織と戦いながら、それでも前半は釣りや野良猫との戯れ、生徒たちとのお茶会等を交えつつ、比較的ゆったりとゲームが進んでいく。

が、ゲーム前半で手塩にかけて育てた担当学級の生徒たちが、ゲーム後半の戦争パートで他学級(他国)の生徒とガチで〇し合うというあんまりにもあんまりな展開に、上記のようにシナリオの質の高さを称えながらも酷く絶望するプレイヤーが相次いだ(観測範囲内で)。
特に周回プレイにおいては、前周で主人公と結婚した生徒をぶっ〇すことすら可能という倫理観ゼロのシチュエーションに、プレイヤーの情緒はジェットコースターどころかスカイダイビングである。これを比較的無感情な主人公が淡々とこなしてしまうのだから始末が悪い。
(ただ、こういったお情緒無重力ダイブにより新しい世界の扉を開いた人もいる…かもしれない。知らんけど)

SNSという場の性質上、そういったセンセーショナルな部分がピックアップされがちだが、育成ゲームやキャラクターゲームとしても完成度が非常に高く、担当学級に応じたルート分岐や、他学級からのスカウト状況に応じた生徒たちのボイス付きセリフパターンなど、正に大満足のボリュームである。
他学級から引き抜いた生徒がかつての級友と殺し合う際もフルボイスというのは軽く正気の沙汰ではない。スタッフ本当にありがとう。
(強いて言うなら最上級職のエピタフの扱いはもうちょっとだけどうにかならんかったのかと思う、ちょっとだけね)

そして、ただでさえ魅力的な本作を力強く支えるのが、オーケストラを軸とした重厚なサウンドである。
本稿ではその中でも、とある一曲に焦点を当てて妄想を繰り広げたい。


「野望の地平」ってタイトルがもうズルい

2部前半の通常マップ等で流れる「野望の地平」。5年後の戦争編で最初に聴く戦闘曲のため、印象に残っているプレイヤーも少なくないと思う。
シナリオ前半のラストで崖下に落ちて消息を絶った主人公が目覚めた時に、5年の歳月を経て大人に、将に、兵士になって生徒たちと再会する。特に青獅子と金鹿ならば必ずこの曲が流れる中で生徒たちと再会するため、状況も相まって激アツ間違いなしだろう。

(余談、筆者は初周が金鹿であったがイグナーツの成長が一番目頭にキていた。お前漢になりおってからにホンマ。次いでヒルダちゃんとマリアンヌの戦いに臨む姿勢が様変わりしていたのも、彼女らが置かれた凄惨な状況を想いつつ5年分の成長を感じざるを得なかった。だが初週の嫁はリシテア。人類は悠木碧ボイスに弱い

もうタイトルからして優勝している。なんだ野望の地平って。
「野望」という一見するとネガティブなワードと、「地平」という未来や果ての無さを感じさせるワードを組み合わせ、三学級それぞれの在り方や目指す先をこの5文字だけで想起させてくる。
しかも英題が「Chasing Daybreak」、直訳すれば「夜明けの追走」でこれは2部最初のマップ名とほぼイコールだが、夜明けの追討戦自体だけではなく戦争の終結や野望の成就という「Daybreak(夜明け)」を追い求めるという意味で、これもまたシナリオにバッチリはまっていると言える。

オタクはダブルミーニングが大好きな生き物(参考:筆者の前回の投稿物)だし、オタクは邦題と英題で大意は同じなのに絶妙に異なる解釈ができる表現が大好きな生き物なので、この5文字に俺の心はときめくしかなかったのである。


楽曲の構成とシナリオのコンビネーション技

そして本楽曲、音作りが非常にカッコいいのは最早言うまでもないのであるが、楽曲の構成や展開を紐解いていくと、それが風化雪月の物語を内包したものであることが分かる。(※個人の解釈です)

まず再序盤、これまでの作中ではなかなか聞き覚えがない重厚なイントロにより、一瞬にして世界の様相が様変わりしてしまったことが容易に想像できる。軍靴や蹄鉄の進軍を思わせるサウンドに重ねて、裏で響く打楽器の音は戦場の砲火を連想させる。明らかにここまでのシナリオと「違う」のだ。

次いでAパート?(正しい呼び方があるかもしらんが何分筆者が学問としての音楽に疎いため便宜上こう表現する、すまぬ)が始まるが、これがまた大変にメロディックであり、勇壮さと悲壮感を兼ね揃えたストリングスが心を沸かせる。
更にAパート内でも前後半に分かれるが、後半は主旋律をトランペットにバトンタッチして高らかに吹き鳴らす。
これだけでも、「始まってしまった戦乱」「もう後には退けない悲哀」「そんな個々人の想いもお構いなしに始まる無情な戦い」という様々な要素が感じられる。(※個人の解釈です)

更に一瞬のトーンダウンを経てBパート、荘厳なコーラスから始まるこの部分では、3学級それぞれが目指す「夜明け」が示唆される。(※個人の解釈です)
女性コーラスの声は女帝たるエーデルガルドの歩む覇道を、一瞬挟まるあまりオケらしくない笛の音は異国をルーツとするクロードの壁無き世界を、そしてやや不安定なメロディーが暗く淀んだディミトリの復讐心を…
主人公・プレイヤーの選択次第で如何様にも解釈できるこのパートは、混迷する5年後のフォドラの有り様そのものと言えるだろう。(※個解)

そして、みんな大好きCパートの時間である。
戦争編の戦闘曲なのに(あるいは戦争編の戦闘曲だからこそと言えるかもしれない)一転してピアノとストリングスによる「」のパート。まるで5年前を惜しむかのように、あるいは現在を嘆くかのように、「泣き」のメロディーが心を打つ。

かつては寝食を共にし、学級間で競い合った友が今は敵軍にいるのだ。彼らの胸中は複雑極まるだろう。(ここは人によってはセピア色の回想が入るかもしれない。とにかく印象的なのである)
加えて、他学級からの引き抜き要素により元同級生や幼馴染が戦うことすらあり得る。その悲壮感たるや凄まじいものがある。故に戦火がもたらすものは悲しく、虚しい。


それでも、それでもなのだ。
最後は一転して荒々しい旋律が戻り、それぞれがそれぞれの見据える地平のために、力強い金管の響きと共に譲れぬ野望への決意を固める。
過日を想ったとしても、それでも彼らは戦って前に進むしかないのだ。


…いかがだろうか。タイトルの通り「野望の地平」には風化雪月の全てが詰まっている、そう言っても過言ではないだろう。(※)


作曲家、近藤嶺が描くBGMの新たな在り方

一曲の中にこれだけのエッセンスを込めてもなお過不足なく破綻しない作品を作り上げたのは、名コンポーザー近藤嶺である。
もし名前を聴いたことが無い人も、「大神」の「太陽は昇る」の人と聴けばピンと来るかもしれない。

オーケストラを主軸にした壮大かつヒロイックな曲作りに加え、和の楽器を取り入れた異国感の併せ技は「大神」や「ファイアーエムブレム if」等でも存分に発揮されている。
曲を聴けばその場面が思い浮かぶというのはゲーム音楽あるあるだが、近藤氏はその中でもメロディーでガツンと殴りに来るパワーが一際強いように感じる。ちなみに俺は「太陽は昇る」を聴くとパブロフの犬的に目頭から汁がダバァする。

そしてその力強さは、単にバックグラウンドで流れているだけのBGMという在り方を、後ろからではなくストーリーの横に並び立ち、プレイヤーに代えがたき思い出を刻み込む存在たらしめていると言える。正に「音で物語る」とでも言おうか。
無論、古今東西様々なゲーム音楽が同様の位置づけにあるが、とかく風化雪月は上記の通りシナリオと楽曲の親和性が俺にとってべらぼうに堪らんかったのである。マジでいい。すっげぇいい。全人類野望の地平を聴いてくれ

だからこそこんなにも筆者の妄想は捗り、とりあえず野望の地平を聴いてくれと振れ回る奇怪な存在が出来上がったのである。全人類野望の地平を聴いてくれ頼む


以上、野望の地平聴けおじさんによる楽曲語りでした。
みんなも曲を聴いて一緒に感動と悲しみと絶望で顔面を両手で覆ってみような。

※予定は未定だけど今後も好きなゲーム音楽について語ることになる、かもです。俺大好きなんだゲーム音楽。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?