見出し画像

リアルに歯を食いしばる奴

フィステルが消えない。

歯茎にできた白い膿疱のことである。神経を抜く根幹治療をした左上の奥歯が原因で、以来ずっとそこに居座る。

「痛みはなくとも放置すると骨が溶けたり弊害が出る恐れあり」と診断されたのは2年も前のことで、転職や引っ越しなど何か理由を見つけては歯医者を遠ざけていた。

そして今回、問題の奥歯の治療に再度着手した。

しかし結局フィステルが消えることはなかった。

幼少期から通ってる地元の歯医者で、診療は丸眼鏡をかけた丸顔の”マル先生”にお願いしている。マル先生は院長だが相手が子供でも大人でもしっかりと患者が納得するまで説明をしてくれる優しく思いやりのある先生だ。

改めてレントゲンを撮影するとマル先生があるものを見つけた。

歯と歯茎の間に細い黒い線が浮かび上がっている。歯と歯茎がぴたりとくっついておらず隙間があることを示す線だという。それを見てマル先生は「歯根膜炎」を指摘した。

このような状態になるのは、奥歯にグッと力を入れることのあるスポーツ選手などが多いとされているようだ。私は日常生活においてスポーツなどほとんどしないことはおろか、学生時代においても運動部の経験は小学校の陸上・水泳にまでさかのぼる。

しかし思い当たる節はあった。すぐにわかった。

私は小さい頃から歯を食いしばる癖があった。注射や何か痛みを我慢する際だけでなく、自分の思い通りにならないとき、嫌なことを言われたとき、腹が立った時などそれはそれは頻繁にあった。

何か言いたいことがあっても歯を食いしばってじっと我慢する、姉妹でけんかをしても「お姉ちゃんでしょう」の一言で片づけられグッと我慢。友達と話していて自分の気持ちを理解してもらえずグッと食いしばる。それ以外にも意識してみると歯を食いしばる瞬間は生活の中で多々存在しており、車を運転していて前を走る車が急に左折してこちらも減速しなければならなくなったとき、渋滞で進まないとき、予定が狂ってしまったときなど。

グッとこらえて我慢しているつもりでも、身体には負荷が加わり続け、こうして歯根膜炎という形で症状が出ることとなった。

イライラするとどうしても歯を食いしばっていたが、怒りは自分を滅ぼすのみであることがわかり、怒りの処し方を改めて考えることとなった。

歯を食いしばってきた28年間・および結婚生活とはおサラバし、新たな人生の門出として一歩を踏み出したい。

これからは歯を食いしばらない、自分自身を我慢しない人生を。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?