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「よるにまよっては」


「よるにまよっては」2022年
アクリルガッシュ
F0キャンバス


ハタチ過ぎの頃

東京で誰かに見つけてもらえることを夢見て
渋谷へ来たことがあった。

大阪の下町で生まれ育って
あまり旅行などを知らずに大人になった私には
これが初めての大都市東京。

行ったことがなくてもテレビでは見ていた。

若い頃テレビは一家に1台だったので
見られる番組は限られていたりもしたけれど
オーディション番組が流行っていたりもして
東京は希望のあるキラキラしてる場所に見えていた。

私は育った大阪で
高校卒業後は昼夜アルバイトを詰め込みながら
ダンスや歌や演技の入口のようなものの
レッスンにたくさん通っていて
誰かに選ばれることがあるらしい
キラキラの東京に憧れている若者だった。


そんな頃にひょんなことから

君たちを東京の人に是非紹介してあげるよ

という業界に関係あるという大人に出会った。

突然沸いた不思議な話だったけれど
この際なんでもやってみようと
一緒に声をかけられた友人と共に行くことに決めた。

私はアルバイトで稼いだお金を持って
友人は年下だったからお金を頑張って捻出して
ちゃんと親の承諾も得て来た。

その大人に連れられて二人は
初めての新幹線に乗り東京へ向かった。

東京へ到着したらすぐテレビ局へ行くという。

大人に連れられ知らない電車を乗り継ぎ
立派なテレビ局に着くととても広くて綺麗で
建物の中にはとにかく人がいっぱいいた。

食堂のテーブルでしばらく待っていると
話に聞いていた偉い方が目の前に座った。

超多忙な中仕事を抜けてきたというその方は

私たちのような純粋な若い子を
傷つけないようになるべく優しい言い方で

「うーん、この人に紹介すると言われて来てくれたのだろうけど…来てもらっても困るんだよねぇ…君たちごめんね。悪いけどこういうのはもうしないでね〇〇さん。」


とだけ言って仕事に戻ってしまった。


…。


若かったし知識もないし経験もないから
大人について東京まできてみたけれど

どうやらそもそもその案内側の大人の方が
東京の偉い人にあまり良く思われていないようだった。

大人の方は慌ててたし情けなさそうだった。

友人と私はその時どんな顔をしてしまったかとか
大人の方に何て声をかけたのか?責めたのか?も
複雑すぎてもうちょっと今は思い出せなかったりする。

おそらくそのあと私と友人は
この時間とお金が何の意味もなかったことが
あまりにもあっけなすぎて辛くて
案内の大人の方とはここで別れたんだと思う。


今となっては

突然大阪から荒削りの女の子連れてこられても
そりゃプロデューサーは100%困るし
飛び込みも飛び込みだったんだろうなぁとわかる。

この大人の方も何度か同じようなことをして
プロデューサーを戸惑わせているのに
何か思惑があって懲りずにこんなことしたんだろうな。

そこからテレビ局を離れたけど
東京のことはよく知らないし
これからどうしよう?かを二人で話して
有名な渋谷に行こう!ということになった。


テレビの何かで

「スカウトマンは渋谷や原宿にいる」と聞いたことがあったのを思い出した。

こんなよくわからん勢いで東京に来たのだ!
もう面白いことやって帰らないと意味ないよねって

渋谷に行きスクランブル交差点を歩いた。

もうさすがに昔のことすぎて
何十分そうしていたかは覚えていないけれど

私は大してオシャレでもないお登りさん丸出しで
スーツケースをガラガラと引きながら
友人はスタイルも良くオシャレで可愛かったけど
同じくスーツケースをガラガラ引いて

なんども交差点を往復した。

もう途中で面白くなってきてケラケラ笑ってたような気がする。
ふざけてモデルウォークのマネとかもし始めた記憶もある。

結果、スカウトマンどころか
ナンパにすら声をかけられなかったね!
と笑った。

暑いしふざけ疲れて
見上げたところにあったスクランブル交差点で
一際目立つ「もんじゃ」の看板の店に行って
もんじゃ焼きを食べた気がする。

それ以外には109に行ってみたくらいで
もう他に観光とかはしなかったと思う。

「あー何にもなかったなぁ」

と不思議なこの旅を残念がったあと
とにかく宿は安く済ませたいよね!と話し

それこそこの絵の周辺あたりの
適当に選んだラブホテルに泊まった。


何一つ悪いことはしていないのに女子二人
少しソワソワしてそれだけが楽しかった思い出。


それから十数年くらいして

私は東京で暮らしながら演劇をしていた。

過去の経験も踏まえたこともあり
歌やダンスよりも芝居をするようになっていた
キラキラとした憧れは一切なくなって
現実的なことも色々考えて上京していた。

上京して数年でなんとか事務所も決まり
少し仕事をいただけるようにはなっていた。

とはいえ

目に見えて順調!!なんてのには程遠く
オーディションにはドンドコ落ちるし
生活しながら続けていくことへの不安も多く

上京が早くなかったから既に30代だし
もっと仕事の幅を広げるにはどうしようか?
まだ出会えていないチャンスにどう出会うか?

という焦りや現状打破の方ばかりへ
思考が向いて行ってしまっていた。

顔を出せる場という場には顔を出し
元々自分が興味のあるもの以外の
舞台や映画もたくさん観に行ったり
バイトもたくさんしていたけれど
ドラマも色々と録画をして一気に観ていた。

仕事関係で誰かにとにかく人に会おうとして
考えが迷いはじめていた今から数年前。

そういう場で実際気が合って
仲良くなった人も少しはいたりもするけれど
どんどんお金は減っていき
大した変化もなくひたすらに疲れていった。

それでもまた誘ってもらったので

スタッフをしている友人の業界の
忘年会があるからと行ってみることにした。


恐る恐るドアを開けた貸し切りのお店の中は
人でごった返していて騒がしかった。

皆さんお酒もたくさん飲んでいるし
思っていた以上にアウェー感があり
楽しみ方も馴染み方もわからずに
友人が挨拶するのに少しついていくだけだった。

その頃は仕事の今後の不安に重ねて
周りにとやかく言われることにも疲れていた。

テレビを見てても何してても
世の中は恋愛や婚活がテーマの話ばかりだし
周りのデリカシーの無い人に
プライベートそんなんで大丈夫なの?とか
言われたりして漠然とイライラしてたりした。

私自然に生きてるだけなのにさ
あーいちいちうるさいなあって思ってた。

その盛り上がっている忘年会の最後の方に
業界関係で仕事をしていると言う方から
話しかけられた。

連絡先を交換して後日お会いすることになった。
何かのご縁があるかもしれないし、と思った。

その方の行きつけが渋谷らしく
円山町のバーのような普通のお店で会った。

でもね、もうなんか会ってみてね
しょっぱなから違った。

あーそうだよね、そうだよなと。

悪そうな人ではないんだけどギラギラしてた。
出会うっていえば男女のやつだもんな、大体。

なんかまあそれならそれで
ご興味を持っていただけたのはありがたいし
この方とはそういう感じで話してみたらいいか。
って切り替えてもみた。

いやでもやっぱり違った。

そんなことでもないわ。違うわ。
この方はご趣味が突飛すぎた。違いすぎる。

私はそれなりに楽しくそのご趣味の話を聞いて
全てに興味をもって会話をしたけど
やっぱり違うもんは違う。

けどこの方はもうそんな気で楽しそうだ。
目隠しの話をしている。

私は目隠しには惹かれない。笑

あまりに楽しそうに飲み続けてるので
時間は過ぎてだんだん朝に向かってるなあと思い始めた。


…そういえば若い頃に渋谷へ来た時
女子二人でこの辺のラブホテルに泊まったことあったなー。

あの大人はなんだったんだろう
私たちは本当に何も知らなかったなー。

そんなことも思い出したりした。

そしてまた
よくわからない時間を渋谷で過ごしているのは
私が冷静さを失っているからなんだろうな。

この辺って普段から騒がしくて
夜はなんとなく魔界みたいで
エネルギーに溢れすぎていて
色々渦巻いてる雰囲気が怖いから来ないのに。

疲れてたんだ、ちゃんと元に戻ろう。
もう気にしなくていいや、色々。

と思った。

隣にいる男性はとにかくかなり飲んでいて
酔っていて結構ベロベロで楽しそう。

結局朝方に「またね」と解散した。

ありがとうございました!

あなたのおかげで色々違うと気づけました。

目隠しの魅力を聞いても
やはり私には興味が湧かないとわかりました。

あと、ちょっと目が覚めたので
そういう意味でとても感謝してる。

今となってはどちらも思い出の一つで
ただただ自分が迷っていたんだろうと思うし

そういう場所だから渋谷が怖いとか
嫌いになったとかそんなことはない。

好きとか嫌いじゃなくて
魔界の入り口みたいなイメージがしてる。

坂のあるごちゃごちゃの入り組んだ辺りは
色んな人たちの間違ったなぁって時間とか
その一瞬一時に最高に楽しかった思い出とか
たくさんあるんだろうなぁと思う。



おわり。


…長い

…シメがしまってない


4日間悩んで書いては消してをしましたが文章があいかわらず下手で長いのは
誰かにお願いして整えてもらわない限りは
もうどうしようもないなと!

期間中に絵の解説はしたかったからとはいえ
それにしても私はなんでこんな正直に
人生の出来事を書いてしまうんだろう…

そこは考えても仕方なさそうなので
諦めて、公開しました。

エピソード的にも文章力的にも
恥ずかしすぎるものなので展示が終わったら

一旦、取り下げるかもしれない。笑

うん、取り下げます!
とりあえず、展示期間限定ですね!

読んでくださってありがとうございました。

どうか忘れてください。笑



こちらの絵は

GALLERY TATSUYA TOKYOで開催中の「ZEROTEN SQUARE」で展示中です。

▶︎期間
2022年8/6〜8/14
▶︎会場
東京都中央区新川1-11-10明祥ビル2F
▶︎最寄り駅
東京メトロ日比谷線「茅場町」

S0(18×18cm)作品の展示販売。
ゼロテンとオトナノタツコン出展作家の中から
選抜した38人の新作76点を展示販売。 

連日無休で11時〜19時までお待ちしてます!
(最終日のみ17時まで)


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