俺はClubhouseをやめるぞ ジョジョーッ!
一部の人々に話題になっている、音声SNSと呼ばれるClubhouseアプリにハマってしまい、2週間ほど経つ。
このClubhouseは「音声SNS」と言われているのだが、初めは
「音声...テキストを入力する代わりに、ボイスを吹き込んでやるのか?」
と思っていた。しかし実態は、チャットそのものをチャット本体/聴衆側に分け、そのチャット本体と聴衆側をどっちも行き来できる、というやつである。
イメージ的には、明治時代の講堂かなんかで演説をぶってる板垣退助のところに、「俺にも言わせろ!」とキミも壇上に上がることが可能だ!な図を想像してもらうと良い。
当時の政治派ラッパー、TICE.K(タイス・ケー)
”退助”と呼ぶと、「実家にいるみたいだからやめろ」と怒る奴だ。
正直言って、コンテンツの魅力としてはPodcastとDiscordで事足りるのだが、それをお互いくっつけたところと、日常生活で全く接点のない人々と出会い的には平等に話して繋がれるのが、大きな魅力である。
こんな腐れ外道のゲーム屋が、新体操選手や陶芸家と話せたりするのは、実社会ではほぼあり得ないであろう。”出会い的には”、と太字にしたのは理由があるので後述するが、とにかくそれが新鮮で、本当に化学反応的に楽しい時間をすごせる(ことがある)。
しかし2週間くらい経つと、「ちょっと待て貴様」と思うことも増えてきたので、そこを時系列的に書いていきたいと思う。
■登録数日:ハマりはじめ
お袋は名古屋のバーのオーナーだった。それで、童貞によくある親への反発もあったと思うのだが、俺はドラマとかでよく見る「(酒を飲んで)見ず知らずの人と話す場」という楽しさは、ウサンくせえと思ってたし、まるで想像できなかった。
そもそもドラマとかで、悩んでいる主人公キャラに、バーのママとかが「人間てのはサ、おかしなもんでね…」とかクソみたいな人生訓を話すシーンが俺は大嫌いなんだよ!
俺のお袋は”ハゲかつケチってのはタチが悪い”とか”ロビン・ウイリアムス顔は大体尻の穴が小さいちんけな奴”とか、めっちゃレイシストみたいなことばっか言ってたんだぞ!
実際は俺の想像とは違うんじゃないかと思って、一人で蒲田とかでやってみても、やっぱりちっとも面白くないまま人生を過ごしてきたわけである。
しかしながら、この方の人脈の部屋がたいそう面白く、「ああ、俺は単に食わず嫌いだったんだな」と今更気づいたのである。
もしくは蒲田スタイルが合わなかった、かだ。
今はオッサンが飲み屋で常連になる気持ちはわかる。おそらく俺がClubhouseをクリックするモチベーションと同じなのだろう。
今日はどんな面白い人が来るのだろう。そして会話の主役と脇役が常に交代し、先がわからないゆえの会話の面白さ。
これはなかなか良いではないか。そしてお袋はこんな楽しい場を仕切る役をやっていたのかね。心の中でこのケチ野郎とか言いながら。
■登録1週間後:注目をちょっと浴びて調子に乗る
基本的にアーケードゲームを作っている俺とはいえ、バーチャファイターとかWCCFみたいな、あのへんのレジェンダリーなゲームとは縁がない。ゆえにアーケードゲームを良く知らない初対面の人とかに自己紹介するときは、
「はい、ソニックとかUFOキャッチャー、最近だと音ゲーとかの部署(の近く)で働いてます」
と、カッコ内を小さめに言って、その場を誤魔化してきたわけである。
しかしながら先日、同業他社の方のClubhouseで、俺が作ったゲームがえらい評価されており、それをリアルタイムで聞いた俺は有頂天になってしまった。
なぜなら当時そのゲームは、社内では俺のディレクションがヒドイ(毎日チーム内で喧嘩してた)と評判になり、かつ市場ではゲーオタからはクソゲーと、社内外から共に散々コキ下ろされたゲームで、リアタイで褒めてくれたのは米国人と中国人だけだったからだ。
はじめて日本語で褒められた俺の気分は、まさにウルフ・オブ・ウォールストリートのディカプリオの絶頂期である。苦節ン十年、ようやく俺もゲーム★クリエイターなんや!と、たかだが5分程度扱われただけで、このアッパーぶり。どんなドラッグでもかなわない高揚感である。
■登録8日後:そして案の定、落ち込む
それで調子コいた俺は、いろんなゲーム系の議論に参加するという暴挙に出るわけだが、毎度毎度会話が終わったあと、とてつもない恐怖に襲われる。
「俺は上から目線で話してたのではないか?」
な恐怖である。自己顕示欲というビーストは油断するとやって来る。若い時ならそのビーストに変身しても「☆テヘ☆ペロ☆俺☆バカ☆」で通用するが、おっさんがやるとただの不快でしかない。
よって放送終了後、数時間は「ああ、あそこで俺は絶対イキった様に聞こえたハズ!」と、悶々とするのである。だが、だが...
俺の中のビーストが抑えられなかったんだ…ッッ!
と、中二病っぽく誰かのせいにするおっさんというのは、世の中で最も価値が無いものの1つである。
■登録10日後:ほかの部屋に行って、さらに落ち込む
そこで話すのは控え、いろんな部屋を聴くことにした。しかしその中で一番苦手な空気があるというものに気づいた。それは、発信者内での「事情通氏」と「拝聴させていただく氏」の関係が、時間軸に合わせてどんどん上下にハードコアに広がっていくやつである。わからんでもない。ビーストは餌があると強大になっていくものだ。
ここで先に書いた「出会い的には平等」というところに戻るのだが、出会い的には本当に平等なのだが、プロフィールとか見て、仕事の話にもっていかれることがあり、そこでクライアントとかの関係に近いものになると、その手のは起きやすい。
そういう流れになると、思わず「おい拝聴させていただいているキミ!3.2.1、今だ逃げろ!」と、ジェイソン・ボーンがガーディアンの記者をナビするように叫びたくなるのだが、その前に耐えられなくなった俺が逃げてしまうという体たらくである。
そしてベッドで「あの人を救えなかった俺は...」と、特撮ヒーローものの、違う監督のエピソード、みたいな内面の格闘がはじまり、と同時に
「うわあああ、俺がああなったらどうしようー!」
と、”事情通の俺ビースト化している自分”を想像してはまた悶々とするのであった。
ハリウッド映画なら、俺は上半身裸で目が覚め、隣りに寝ている妻(まともだったころのメグ・ライアン風)が「...心配ない。あなたは帰って来たの。もうここは戦場じゃないのよ」というシーンである。
■登録2週間後:とりあえず寝る前はやめる
Clubhouseが(欧州の)在留邦人に良い点は、時差の関係でこちらの就業開始時頃が、日本での会話が盛んになるところである。英国は今は冬時間なので、日本の-9時間。こちらの朝9時だと、日本は18時なのだ。
そして音声なので、基本仕事しながら聞き流せるのが丁度良いのである。
だから、2週間はほぼ業務中はつけっぱなしで色々チェックしていたのだが、上記の「俺は…俺は...」という後悔ばかり残ってしまい、心身ともに相当疲れてしまった。
そしていい歳こいたオッサンが、たかがラジオもどきのアプリごときで「俺ってなんてダメなやつなんだ」と毎日悩むというのは健全ではないので、とりあえず家に帰ったら、もう立ち上げないことにしたのである。
俺はClubhouseを(夜は)やめるぞ ジョジョーッ!(バーン)
と、脳内はディオの気分で今日も俺はアプリを消す。夜はな。
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