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バンタンと夢の国妄想〜SIN編

ディズニーリゾートに行きたい。
バンタン沼のお陰でその気持ちは多少は和らぐんだけど、たまに無性に行きたくなってしまう。
だから私は、夢の国とバンタンを掛け合わせて脳内でトリップすることにした。

【ソクジンと】

このところ家でダラダラと過ごしがちな私たち。金曜の夜か土曜の昼過ぎくらいに彼が家にやってきて、一緒にご飯作ってDVD見たりゲームしたり。私なりに可愛いルームウェアとか着てみたりするんだけど、彼は私の小さな努力に何にも気づいてくれない。この間なんて、ちょっとお高いアロマキャンドルをテーブルに出しておいたら「停電でもしたの?」なんて聞いてくる始末。まあ、そういうところが好きなんだけどね。

夕飯を食べながらネトフリ見て、一緒に片付けして、ふたりソファでそれぞれスマホを見ていた時だった。突然、私は天啓を得た。

「ねぇ!今度の休み、ディズニー行こ!」
「ん?」
「ディズニーシー!ねぇ、私たち行ったことないじゃん!」
「ネズミの国か?」
「ちょ、敬意!」
「ははは」
「待って。まさか、行ったこと、ない…?」
「いや、小さい時に行ったぞ。なんか…マイケルジャクソンが飛び出してくるやつ」
「…それ、いつの話よ」

私の心はすでにディズニーシーのケープコッドにあった。ダッフィーとソクジン。考えれば考えるほど、最強のコンビじゃない?

「なんだ、こんなキャラ見たことないぞ」
「これがダッフィー、そして、これがダッフィーの彼女のシェリーメイ」
「…」
「ねぇねぇ、可愛いでしょ?」
「…何の映画に出てた?」
「そういうんじゃなくて、ダッフィーはここにしかいない、ミッキーが大切にしてるぬいぐるみから生まれたキャラなの」
「ひゃっひゃっひゃっ!じゃあ、ぬいぐるみのぬいぐるみってことか」
「…ミッキーはぬいぐるみじゃない」

本音ではディズニーバウンドコーデして行きたかったけど、出不精で面倒なことが嫌いな彼だから私は言わなかった。ただ、ちょっとだけ、ベビーピンクとベージュのコーディネートを「ほら見て、シェリーメイちゃんっぽいでしょ?」と見せびらかした。キャンドルもわからない彼だから、何も伝わらないだろうけど…。

でも、まさかなことが起きた。待ち合わせの東京駅に、彼は、ブラウンのドット模様の可愛いトップスにブラウンのパンツで現れた。

「ジン…もしかしてダッフィー意識してくれたの?」
「や、ただなんとなく、あったから着て来た」

私は嬉しすぎて彼の腕にぎゅっと身体を巻き付けた。彼は満足そうに微笑んだ。

シーに初めて来たと言う彼は、エントランスで目をキラキラさせて「おー、これは凄いなぁ」と驚いた様子。

ランチは勿論ケープコッドクックオフで。ダッフィーのショーが始まったらチラチラと舞台を観ては恥ずかしそうにソーダを飲む彼。

「どう?可愛いでしょ?」
「うん、見慣れるとな」

私はすぐ隣のショップへ行った。このデートが永遠に忘れられない素敵な思い出になりそうで、普段グッズを買わない私も今日という日を記念してダッフィーの何かを買いたくなった。

「この歳でぬいぐるみ買うのか」
「だめ?」
「いや、まあ」
「うーん、やっぱりぬいばでいいかなぁ」

そう言ってぬいぐるみバッチのコーナーに行ったら、後ろからダッフィーとシェリーメイのぬいぐるみを抱えた彼がやって来た。

「大は小を兼ねる。これで、いいな?」

そう言って、彼はぬいぐるみを買ってくれた。レジで丁寧な接客に若干怯んだ様子で会計をする彼の横顔がすごく愛おしい。

一日マイペースに遊んで夕日も沈んだ頃、マーメイドラグーン付近を歩いていたら人だかりを見つけた。どうやらエリック王子がいるらしい。遠くから覗いたエリック王子は確かに王子様っぽいけど、私の隣を見たらもっと素敵な王子様がいた。私の彼の方が勝ちだな、とほくそ笑む。そうだ、今度、ハロウィンの時に王子様のコスプレしてってお願いしてみよう...

アメリカンウォーターフロントにて♡

【ユンギと】

彼の車でIKEAへ行った帰り、目的のものも買ってさてこれからどうする?もう帰るか?なんて話していた時、彼がナビの地図を見ながら呟いた。

「夢の国にでも行きますかぁ?」

ユンギと付き合ってもう1年。私の中で彼とディズニーって全く結びつかなくて、彼と夢の国に行くなんて一度も、想像したこともなかった。だから彼の発言に私は物凄く驚き「うん!行く!」と叫んだ。

やっと駐車してエントランスに着いた時、時計は17時を回ってた。もう少し待てばアフター6だけど、行くと決めたら行く、値段のことなんて気にしないケチさゼロの彼が大好き。

ディズニーランドのレセプションでサクッと二人分チケットを買って来てから「あっ、こっちで良かったんだっけ」と一言。

「うん、こっちでいいの」
「完全にこっちしか頭になかったわ」
「私、あっちは今度泊まりで行きたいな」
「おう。わかった」

ワールドバザールを抜けてシンデレラ城が見えて来た時、私は彼の手を握った。一瞬驚いたような反応をしたけどそのまま私と手を繋いで歩いてくれた彼の顔をちょっと覗いたら、なんか、嬉しそう。

「どっち行く?右?左?」
「そりゃあ左だろ」
「そうなの?」
「まずはカリブの海賊に行くぞ」
「え、なんで?」
「あそこはウォルトディズニーがめちゃくちゃこだわって作った最重要アトラクションだぞ」
「へー。…てかなんでそんなに詳しいの?」
「あー、前に本で読んだ」
「ユンギってさ、ディズニーとか来るタイプだったんだね」

ちょっとふてくされた私に気付いてユンギは立ち止まった。

「なんか怒ってる?」
「昔の彼女とも来たことあるの?」
「は?ないよ」
「ほんと?」
「ったく。お前が初めてだよ」

私の鼻をつまんでユンギは笑い、「行くぞ」とまた歩き出した。

ユンギと歩くディズニーランドはいつもと景色が全然違った。彼は誰も気付かないようなディティールに気付いては「これはきっと◯◯なんだな」とか考察する。「この木は珍しいなぁ」とか「この装飾はオープン当時からあるのかな」とか。そしてその度、私はこの平凡じゃない頭のいい男と付き合っている優越感で幸福という大きな渦の中に飲み込まれ満たされるのだ。

私たちが一番楽しみにしていたエレクトリカルパレード。時折スピーカーの方を見ては音響の構造を考えてる様子のユンギを見て、私は愛しさで胸がいっぱいになる。

パレードの後、ハングリーベアレストランでカレーを食べていたら花火が始まった。ふたりでスプーンを持ったまま空を見上げる。花火の音とディズニーの名曲が重なって、カレーの匂いの中でロマンチックな気分になってしまった。

夜のディズニーランドの道は街灯が仄かに温かい光を灯すだけで、すごく暗い。私たち、いつもどれだけ明るい夜道を歩いてるのかしら、なんて思いながら私は空いているベンチにユンギを誘った。

「どした?疲れた?」
「ううん。なんか、座りたくて」
「おー、ここからの景色もいいなぁ」
「ユンギ…」
「ん?」
「チューしよ。誰にも見えないから、多分」
「おいおい」
「いいじゃん」

照れたユンギは私の額にキスをした。

「夢の国ではここまでな」

その代わり、私の手をぎゅっと握ってくれた。

ワールドバザールからアドベンチャーランドへの道にて


(次回クサズ編へ続く…と思う)

※妄想ひとつで驚くほど幸せになれました…

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