バンタンと夢の国妄想〜ジミン編
東京にいた頃はディズニーなんてそんなに興味なかったのに、子供を産んで、ディズニーの世界を深く知ってしまって、家族と二度行って、今となっては本当に大好きな場所です…。
バンタンで圧倒的にヒョンラ好きな私ですので、SIN編とクサズ編でお腹いっぱいなのですが、マンネラも書いて欲しいという圧を感じたので引き続き妄想させていただきます。
【ジミンと】
「いいかー、9時にホテル集合だから、ここを8時半には出ないとダメだぞ。時間厳守だ、わかったな!!」
先生が最後の注意事項を伝え「よし、じゃあ行っていいぞ」と言うと制服姿の同級生は一斉に走り出した。後ろから「走るなー!」という先生の声が聞こえると、生徒たちはまるで競歩の選手のように早歩きしてカチューシャや被り物を売る店に人混みを作った。
映える写真を撮りたいという友人は昨日からグループの中で誰がどの被り物を買うべきか決めていて、私は店に入るや否や彼女の指示通りにデイジーのファンキャップをレジに持って行った。店にはジミンくんもいた。彼の友達はトイストーリーのレックスとかハムとかの被り物を手に持っていて、あまり乗り気でなさそうな彼には「お前は定番を被れ」とミッキーのファンキャップを渡していた。きっと今日、人気者の彼はミッキーになるのだろう。
私たちのグループは定番の人気アトラクションを回りながら沢山写真を撮った。アトラクションの列に並ぶ時や道を歩いている時に仲のいい異性のチームにばったり会うとみんな盛り上がった。その中には彼氏彼女の関係の人もいたりして、そうすると当分の間2つ、3つのグループが一緒になって移動する。
私はと言えば、このクラスになってからもうずっとジミンくんに片思いしている。学級委員でテストではいつも学年10位以内のジミンくん。剣道部なのにサッカー部の助っ人に借り出されて得点を決めたりするジミンくん。学園祭ではワンオクのコピーバンドで見事なボーカルまで披露したジミンくん。そんな彼だから私のライバルは多すぎて、地味な私には出る幕がないし、噂では1学年下の物凄く可愛い女の子と一緒に帰るところが目撃されたとかで、私はずっと手の届かないアイドルを推すような気持ちで彼を眺めていた。
ランドの中で制服姿の男子を見かけるたび、私はジミンくんを探した。でも、この広い敷地内で彼にばったり会うという奇跡は私に起きなかった。
日が暮れ始めた頃、私たちはホーンテッドマンションへ向かった。そしてそこで、ついに、ジミンくんを見つけた。
私のグループもジミンくんのグループも6人組だった。12人でぞろぞろと列に並びながら、誰かがこんなことを言った。
「確かここ2人乗りだから、男女で乗らない?」
私の胸はざわついた。でも自分のグループのリーダー的な女子もジミンくん狙いなのを思い出して「ああ、無理だな」とすぐに諦めた。「どうやってペア決めるー!?」と数人が騒ぎ出した時、ジミンくんが、ぼそっと、あの私の大好きな声で提案した。
「被り物で決めない?」
「は?どーゆーことよ?」
「お前はハムだからこっちのハムとペア、お前はミッキーだからこっちのミニーとペア」
「なるほどぉ!さすがうちのジミンくんは賢いですわ!」
彼の説明を聞きながら私の心臓は爆発しそうだった。なぜなら、ジミンくんはミッキーでなく、ドナルドのファンキャップを被っていたから。
エレベーターみたいな小部屋を出るあたりから私たちはペアになって列に並んだ。私は心臓のドキドキがジミンくんに聞こえてしまうのではと更に緊張した。
「怖いの?」
「え?うん、ちょっと、緊張しちゃって」
「意外と怖がりなんだね。これ、乗ったことないの?」
「うん、ディズニーランド初めてだから」
隣のジミンくんを見上げたら彼は目を合わせてニコッと笑った。私は失神しそうになった。
黒い乗り物にふたり並んで座ると背後についたスピーカーから男の声が流れた。緊張のあまり私がずっと無反応で固まっていると、ジミンくんが糸目で笑いながら私の肩を叩いた。
「リラックス、リラックス!そんなに怖くないからそんな緊張しないで!」
大いなる逆効果である。
でも、ジミンくんはやっぱり優しくて、時折私に「あれは◯◯なんだよ」とかハロウィンの時に来たら飾り付けが違うんだとか、このアトラクションのうんちくを話して私の緊張を解こうとしてくれた。だから、幽霊たちの舞踏会に到達する頃には、私は素で「わぁ、すごいこれ」と言葉を発するくらいには落ち着きを取り戻していた。
真っ暗の坂道を降りるとき、突然、乗り物の動きが止まった。後ろのスピーカーから「いたずら好きの亡霊が暴れ出したらしい。諸君はしばらくそのままで待っているように」とそれらしくアナウンスが流れる。でもなかなか動き出さない。
「これも演出なの?」
「いや、違うと思う。どっかで止まったんじゃないかな」
「そう...なんだ」
二人の間に沈黙が流れた。
「あのさ。なんでデイジーなの?」
「え?」
「そのキャップ。店行ってすぐデイジー選んでたでしょ」
「あ、これ?昨日からもう決められてたの。私はアヒル口だからデイジーなんだって」
「ははっ、確かに、似てるかも」
「えー、似てる?」
「いやいや、可愛いじゃん、デイジー」
「…ジミンくんは?どうしてドナルドなの?」
「ああ、これ…いや、なんとなく、ドナルドにしたくなった」
乗り物はガタンと大きな音を立ててまた動き出した。その瞬間、ジミンくんは咄嗟に、私を庇うように腕を伸ばして「大丈夫?」と聞いた。彼のパーフェクトっぷりに、ハートに100本くらい矢が刺さって動けなくなったみたいに、私はなった。周りにお化けがいても恐怖心なんて全く湧かず、ただ私はずっと笑顔で放心していたと思う。夢のような時間だった。
アトラクションを降りて出口に全員が着いた時、ジミンくんがみんなの写真を撮るよと言ってスマホを取り出した。彼は自分以外の全体写真を撮った後、私の隣にやって来て「一緒に乗った記念」と私の腕を引き、自撮りした。
「写真送るからLINE教えて」
「う...ん」
スマホを近づけてLINEを交換し、彼はドナルドとデイジーのキャップを被った私たちのツーショット写真を送ってくれた。
「ありがとう」
「うん。ってかさ、なんでアイコンがお餅なの」
「あっ、それは…お餅が好きで…」
「ははっ、面白いね」
本当は「餅」というあだ名で呼ばれる彼を意識しまくってアイコンを餅のイラストにしていた。彼にバレてしまっただろうか。いや、もうバレてしまっても良い。出口でふたつのグループが別れる時、彼は私の目を見て私に手を振ってくれた、気がした。この修学旅行中にジミンくんともっと仲良くなってやると、私は決意した。
そんなに乗り気でもなく書き始めたのに、さすがのジミンマジックで一気に楽しく書き進め、気づくと3000字近かったので今日はジミン1人で終わります。
嗚呼、ジミンに初恋する人生が欲しい…
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?