ライブレポ2 (ツー)

 大切に思っている人の、サークルの卒業ライブを見に行った。一人で行くのは怖かったので、友達について来てもらった。
 1年くらい前に、初めてライブハウスに行ったときには、ライブに瞑想とトリップ性があることがわかった。その経験から、今回もすごく良いのだろうと思ったので、1時間前に「美しいものをより美しく思えるような状態」になれるようにした。
 友達と二人でバスに乗って、行った。ライブハウスの入り口を間違えて、しばらく焦ったが、もう少し歩いた先に本当の入口があって、入れたので、一体良かった。
 ライブハウスの中に入ると、チケット代を支払うように言われた。チケット無料でワンドリンク制って何なんだろうと思う。
 ライブハウスについたと愛する人にラインしたら、演奏の前にわたしのほうに来てくれて声をかけてくれたので、喋った。いい人だと思った。
 前回は知らないところで怖かったけれど、今回はチートを使っていたので怖くなかった。私はただステージの美しさを見たいだけだから。

 演奏が始まろうとするとき、私は全然正気だったのだが、彼の姿を見ているうちに、ガンガンになっているはずの音響が全然うるさくなくて、照明は人為的なわざとらしさに満ちていることに気がついた。
 まさにこの空間こそが彼を神様たらしめているのだという実感が湧いた。ステージに立っている彼は皆の視線を受けていて、まるで神様だと思った。
 私は彼をよく知っているので、彼が神様でないことをわかっていたけれど、全然知らない匿名性の高い人間がステージに立っていたならば、その人は神様たり得ると思った。

 みたいなことを考えていたので今思えばちゃんときまってたと思う。とにかく彼の勇姿は素晴らしく、ライブとしてすごく良かった。前回のライブはもう何もかも無知だったが、今回は知っている人が知っている曲をやっていたので、解像度が全然違って、良かった。
 でも、前回のような浮遊感というか、トリップ感が感じられなかったので、多分ライブも薬みたいに耐性がつくものなのかもしれない。

 ライブが終わるや否やすぐに帰路についた。ライブハウスを出てバス停まで歩こうとしていると、彼が追いかけてきて、一言二言話した。
 私は、やっぱり彼は彼で、神様じゃなくて良かったと思った。そして追いかけてくれた彼の健気さに心を打たれた。このまま死んでも一片の悔いもないと思う。
 彼と話して別れ、友達とバス停に向かっていると、どんどん酔いが回る。バス停に着く頃には点字ブロックの黄色の美しさに感嘆の声をもらしていた。
 バスの中でも、友達に神様がなんだ天使がなんだとずっと話していたので、呆れられた。

 オチはない。さよなら

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