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南の島にて

前回から時間が空いて、もう夏に片足を突っこんでおりますが、春の話をします。

3か月もまえのこと、南の島に行ってきました。仕事ではなく家族旅行でしたが、ハンカチが自分の生活にあまりに染みついていたため、旅先でいろいろな思いがよぎりました。ハンカチ屋視点で感じたことを思いかえしてみます。

旅のおともに欠かせないハンカチ

東京はそのころまだ10℃そこそこの日もあったけれど、島の気温は23℃くらい。これを書いている今もう東京は30℃ですから「23℃は肌寒いでしょ」と思うかもしれませんが、そのときは暖かいことをとてもうれしくありがたく思っていました。

空港の外に出ると、すぐに日差しの強さに驚きました。南国の太陽って、とにかく近くに感じられます。じりじりと光線が上から刺さるだけでなく、白い砂地からの照りかえしもすごいものです。帽子はかさばるから持っていきませんでしたが、ハンカチはきっと活躍するはず! と何枚も持っていったところ大活躍でした。

65㎝角の大判ハンカチは、日よけとして頭に巻きました。これまで、おしゃれのつもりで首元にスカーフとして結わくことはあったものの、自然に囲まれた土地で、実用性のみを考えハンカチをまとうのは初めてのことでした。

まちこ巻きに近しい巻き方

薄い布をまとうだけでふしぎに涼しくなります。帽子より風もとおるし、乾きやすくて蒸れることもありません。天然素材が首や顔のまわりにやさしく触れるのも、からりと乾いた気持ちのよい潮風がぱたぱたと布を撫で去っていくのも、気持ちのよい感覚でした。このサイズがまたちょうどよく、ハンカチとしてふだんはポケットに入れておいて、必要なときにさっと巻物に変身するところが便利です。首に巻くだけなら52㎝角のサイズもおすすめします。

首にちょっと巻ける52㎝サイズ

筆者は海岸に行くと必ず貝殻やちいさな生きものをじっと見て回ります。同行者に止められなければ平気で2時間くらいは波打ち際を歩いたりしゃがんだりして漂着物を物色してしまいます。このビーチにはかわいらしいヤドカリがたくさんいて、一生懸命歩くのをずっと眺めておりました。

石や貝のなかに気に入ったものがあれば一度集めます。ここでいつもハンカチを広げて、並べます。家のなかが貝だらけになってしまうから、たくさんは持ち出しません。選んだ3つくらいを、その海の思い出としてハンカチにくるんでおみやげにします。毎日そんなふうにいろいろなハンカチが助けてくれて、旅をたのしく安心にしてくれていました。

貝やサンゴの選定中

※貝がらやサンゴのかけらは個人の観賞用として楽しむためのものです。販売目的の採取や大量に持ち出すといったむやみな行為、原型をとどめているサンゴの持ち出しは禁止されています。くわしくはその土地の自治体や海岸の管理者にお問い合わせください。


忘れたくない景色をハンカチに閉じこめておく

旅程のなかのとある一日、島から船に乗って沖合のサンゴ礁まで移動し、シュノーケリングを楽しみました。わたしが訪れた場所は、ハンカチのクリエイターとしても活躍されている長嶋祐成さんが暮らす石垣島のすぐそば。シュノーケリングではデバスズメダイも見られると聞いて、旅立つまえから長嶋さんのハンカチ「サンゴ礁の或る日常」のような光景が広がっているのかな、と期待していました。

H TOKYOのクリエイターハンカチ、長嶋祐成さんの「サンゴ礁の或る日常」

船上から見える水の色も、翡翠みたいに奥行きのある緑色がこれ以上透きとおることがあるかというくらいに透きとおっていて、ため息がでました。

シュノーケリングをしたポイント

海中はまた想像をはるかに超えるきらめき。水色に光るデバスズメダイの大群のなかをゆらゆらと進み、サンゴ礁とそこに暮らす生きものたちの日常をちょっと覗かせてもらいます。警戒して家族を守るクマノミの顔、迫力のあるゴマモンガラの顔。魚たちそれぞれに表情があるのがわかって、巨大な生命体のような波に全身をもまれながら「都会に戻っても、こういう場所があることを忘れずに日々生きていたい」と強く思いました。自分の感覚、人間の感覚だけで考えないこと。自然やほかの生物が対等にそばにあって、むしろ人間は彼らから多くのものを恵んでもらってなんとか生きていること。

長嶋さんの描く生きものは、生命力に満ち満ちています。空から差しこむ光を反射して虹色に輝き、透明感にあふれ、それぞれにちがう表情を持っている。長嶋さんの絵を見ていると感じるその生命力は、実際に海に潜ることで深く理解できたような気がしました。

人間よりも小さな者たちから大きな自然を感じとり、敬意をもって彼らのすがたを描いている長嶋さんの作品を、わたしたちはたくさんハンカチに仕立ててきました。これは持ち歩く自然。これは持ち歩く海のうねり。遠いサンゴ礁でこの瞬間も一生懸命に泳いでいる彼らみたいに、いつだって自分もまっすぐにいられるようにと願いながら、ハンカチを眺めて水の感触を思い出しています。

ハンカチというプロダクトにも、長嶋さんの作品にもいっそう愛着がわく南の島の旅でした。ちょうど長嶋さんのハンカチ10種が勢ぞろいするフェアがはじまります。水族館のようなお店を楽しんでもらえたらうれしいです。


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