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息抜きついでに理解するクレカ業界の企業研究

1.概要


クレジット会社は利便性・システム・キャンペーンを武器に多額の利子や手数料を取るビジネスモデルを持つ会社です。
近年は消費者データの重要性が増しているため、消費者動向が分かるクレジット業界は以前より重要性が増したインフラ企業とも言えます。
また、社会的な面での意義も高く、今まで税金が取れていなかった地下経済(税対策などによって徴税不能とな取引)からも、税金をきちんと取れる重要な役割を果たすと期待されている業種でもあります。

社会的な意義も高く、ホワイト企業も多い業界ですが、私として文系の学生がカード会社に就職することはあまりお勧めできません。
カード会社は基本的に代理店の管理が仕事になりますので、一般的なマネジメントスキルなどは身に付くものの、逆に金融に関する専門性は身に付きにくい職場だからです。
逆に、データやシステム、商品開発に従事したい理系の学生にとってはむしろ強くおすすめしたい就職先になります。



カード業界には、以下のような関連企業が存在します。

・アクワイアラー
カードブランド加盟店の開拓や審査、管理をする会社で、各クレジットカードブランドからライセンスを受け取り、様々な店と契約を行っていくことで、カードブランドの加盟店を増やしていきます。消費者が商品を購入した際は、アクワイアラー加盟店に対して購入代金を支払い、後述するイシュアーからその支払った購入代金を受け取ります。

・イシュアー
カード利用者と契約し、クレジットカードの発行や、カード会員の管理、利用代金の請求などを行います。消費者は、イシュアーと契約を結ぶことで、AMEXやVisaをはじめとする国際カードブランドが利用できるクレジットカードが発行されます。
イシュアーは国際ブランドに対してライセンス料金やネットワーク利用料を支払う代わりに、国際ブランドからライセンスの使用許可を提供されます。
消費者が店舗でお金を支払うと、イシュアーに対して購入代金が支払われるので、イシュアーをその購入代金をアクワイアラーに支払います。アクワイアラーは支払われた購入代金を、前述した加盟店に支払います。

・国際ブランド
国際ブランドはアクワイアラーやイシュアー向けに、決済インフラを提供したり、カードブランドのライセンスを発行したりします。決済などを担当するアクワイアラーやイシュアーを管理する立場にあり、ブランド力を維持するために偽造カードの規制や、カード発行プロセスの監視など、その国際ブランドの信頼性を維持するための業務を行います。

・決済代行会社
決済代行会社は加盟店に対して、複数のアクワイアラーとの契約を取り持つ立場にあります。加盟店としては複数のカードブランドやアクワイアラーと契約を行いたいですが、ブランドごとへ加盟を申し込み、入金のタイミングもブランドごとに異なってしまうと非常に不便です。
決済代行会社は複数のアクワイアラーと契約することで、複数のブランド申し込みを一本化したり、入金を一本化することで、加盟店に対して利便性を提供しています。


2. クレジットカード業界の今後


最後になりますが、現金文化が浸透している日本において、カード会社は非常に弱い立場にありました。多くの事業主が税金対策で現金での支払いを好み、キャッシュレス決済の使用を拒んできた背景があります、
しかし、近年は様々なサービスの拡充、カードが必要なECサイトの普及からカードの普及率が上がり、カード会社もその地位を上げて来ています。
今後はよりキャッシュレス決済の社会的意義やニーズが伸びていくことが考えられます。

余談 : カードは現状以上普及しない派の論理
なぜ日本では現金による決済が主流となっているのでしょうか。その理由を解説します。

まず、消費者の観点からみると先進国のキャッシュレス決済比率が約40〜60%に対して、日本は20%と非常に低いです。
このカード決済普及の遅さは、日本の造幣技術の高さや、治安の良さに起因します。

まず、日本は治安が良く盗難や紛失の余地が少ない上に、偽札の流通が少なく現金の信頼度が非常に高いです。

また、コンビニをはじめATMの設置箇所が多く、現金がすぐに手に入るのでキャッスレス決済に頼る必要がありませんし、札は丁寧に数えて渡すなどの文化から決済ミスの可能性も低いです。

極め付けは、先進国の病とも言うべきか、富裕層が親世代に集中しているためキャッシュレス決済への不信感が非常に高いため、信頼度の高い現金決済にニーズが集まったことが後押しして、日本でキャッスレス決済の展開は思うように進みませんでした。

また、事業主の立場から解説します。
カードが使われない理由として、
① そもそもニーズがない
② 税金を払いたくない
③ コスパに合わない

上記3つの理由が存在します。

まず①に関して、例えば加盟店の業種が蕎麦屋や、古いスナックだと考えてみましょう。
メインの顧客層が50代以上の場合は、そもそも現金でしか決済を行わない為カードブランドと契約する必要がありません。

次に②に関してですが、そもそも現金決済のみを使って利益が出ている状態で、わざわざ手数料を支払ってまでカード会社の決済インフラを使用するメリットがありません。現金決済の方が、税金対策にも都合が良いです。

最後に③について、上述した通りクレジットカードを導入すれば、加盟店側は手数料も払うことになりますし、機械の導入コストもかかります。カードブランドを導入することで売上が向上すれば良いのですが、クレジットカード導入による収益向上が見込めない場合は余計なコストが掛かったり、売上が下がるだけになってしまうので、導入のメリットが低い可能性があります。


カードは現状以上に普及する派の論理

キャッシュレスが進む可能性がある理由についても、消費者と事業主で解説します。キャッシュレス決済を導入するメリットとして、治安の回復や決済の利便性・経済性の向上が見込めます。

治安の回復について具体例を挙げると、クレジット決済が普及すれば消費者は現金を持たなくなるため、犯罪に巻き込まれるリスクが減ります。金銭目当てでの犯罪を行う意味が減少するため、犯罪率の低下も見込めます。

また、決済の利便性・経済性の具体例について語ると、近年の若者はまめにポイント還元キャンペーンなど様々な制度を利用しているので、ポイント経済による消費の向上も見込めま。

また、そもそもカード決済しか受け付けない店舗の登場や、ECサイトの普及により、クレジットカードを用いた決済の利便性も、世間に認識されつつある状況です。

また、事業者の立場からクレジットカート決済を導入するメリットを説明します。これは端的に言うと、顧客のニーズがあるためです。
事業者側から見ると、若者をターゲットとするビジネスでは、カード決済に対応しないと目的としている層に利用してもらえないリスクがあります。

その為、一部の業種については。キャッシュレス決済を導入せざるを得ない状況にあります。


5. 会社別特徴概要


① JCB
日本の銀行連合クレジットカード会社です。日本のクレジットカード会社の中で、あらゆる面で最大の規模を持っています。
ブランド運営、発給、加盟契約すべてを扱っている会社で、前述したブランド・アクワイアラー・イシュアー・決済代行全ての性質を持っています。

ちなみに、JCBはアジアで特に人気のカードブランドです。アジア圏は日本人観光客が多く、日本と繋がりが深い国が多いため、多くの店がJCBに加盟しました。

また、JCBに加盟するメリットとして、決済の利便性が挙げられます。
通常、クレジットカードはそのカードがどの国で発行されたかを識別する「国コード」が記録されています。

これは、中国で発行したVISAは中国でしか使えない、日本で発行したMasterCardは日本でしか使えない、といったように、発行地域で利用制限を掛ける目的で導入されている仕組みです

一方、JCBは「国コード」が記録されていないので、日本で発行したJCBカードを他国で決済に用いることが可能です。
例えば、iTunes Storeで一部の商品を審議の問題や地域別の価格の違いなどの理由で、日本でのみ販売する場合があります。

通常の国際ブランドであれば、海外で発行されたカードをその商品の購入のために使用することはできませんが、JCBの場合は問題なく使用することが可能です。

② 三井住友カード
英語の略称はSMCCという。三井住友銀行の系列会社です。SMCCは三井住友金融グループカード&クレジット(SMFGカード&クレジット)の子会社で、持分の65.99%を親会社に握られています。

また、特徴的な点としてNTTドコモが34%持っています。親会社との関係で、三井住友カードの決済口座を三井住友銀行にすると、様々なサービスを使用できます。

SMBCファーストパックという年会費割引サービスや、カード代金を指定日に支払えなくてもカードが止まらないサービスなど、親会社と連携したサービス展開が強みです。以前はまでは主にVISAブランドの取り扱いがメインであったが、最近はMasterCardも多く扱っています。

③ MUFGニコス
三菱UFJニコスは日本最大の金融グループである三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下:MUFG)の中核企業です。

三菱UFJニコスの強みは、MUFGのみならず、農林中央金庫、JAバンクなどの基盤を活用した決済サービスで、日本のクレジットカード会社で3位の規模を誇っています。(ちなみに、2位はなんとVISAJAPANです)
また、銀行のように多数の合併を経験していることも、珍しい特徴の一つです。

因みに面白い失敗談を語ると、MUFGのVisaカード、MasterCardは、Smartplusというブランドネームでタッチ決済プラットフォームの展開を推進していました。しかし、首都圏では既にNTTドコモのiDや楽天のEdy、そしてJCBのQuickPayが既に浸透しており、Smartplusはほんとんど浸透することはありませんでした。一番残念なのは、三菱商事の関連会社でもあるローソンでも、とうとうSmartplusが使えなくなってしまったことです。

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