いまこそ、センスメイキング思考を持とう!
正し地図は必要ない
アルプス山脈の雪山で遭難寸前の山岳隊が起死回生の下山を果たした。猛吹雪の中、だれもが希望を失いかけていた時に、隊員の一人のポケット中から下山ルートが示されていた地図が見つかった。隊員は「これで帰れる!」 と喜んだ。奇跡的に下山ができた後で、その地図は全く別の山のものだった。このエピソードは、センスメイキングを説明するときによく用いられるエピソードである。危機的な状況にあるときには、正しい、正しくないを論じるこよりも、まずはチームが団結して一歩を踏み出すことが必要であるということを示唆する話だ。
センス・メイキングとは?
改めて、センス・メイキング十は何かを考えたい。
Weick, K,E.(2001:8,75)は、センスメーキングとは、意味の構築や納得、驚きの物語化などと説明している。環境変化が激しい中において、リーダーは、計画づくりに時間を費やすことが重要ではなく、部下に自信を植え付け、何らかの大まかな方向感覚で部下かを動かすことで、センスメーキングを開始させることが必要であると述べている。そうすることで、単なる想像を現実化させる力が生み出されるというのだ。
入山(2019:416-32)は、今の日本企業に最も必要なのがセンスメイキングであると考える。絶対正解のない不確実な環境下で、いかにメンバーやステークホルダーを納得(腹落ち)させ、方向付けていくかというプロセスが今の日本には求められるからである。
センス・メイキングのプロセスとは?
そのプロセスは3つから構成される。環境の感知、解釈の集約(意味づけやストーリー性)、イナクトメント(行動による働きかけ)である。さらには、センスメーキングを展開する上で、重要なのが、セルフ・フルフィリング(自己成就)の考え方だ。認知バイアスの一つとして既に多くの研究が蓄積されているが、リーダーの主観的な信念に基づくある種の「思い込み」がストーリーに埋め込まれていることが重要なのだ。
ポストコロナに必要なこと
ポストコロナ時代にはまさに、このセンスメイキング理論があてはまるのではないかと私は考える。未曾有のウイルスがもたらす社会への影響は、想像を超えており、その出口は未だに見通せない。正しい地図が手元にあるわけではない。しかし、未来はつくり出せる。今こそセンスメイキングのプロセスを展開しよう。求められるのは、たぐいまれなリーダーへの依存ではない。多様なアクターが主体的に行動をおこすリーダーシップの相互作用であろう。
(引用)
・入山章栄,2019,『世界標準の経営理論』ダイヤモンド社.
・Weick,K,E.1995, Sensemaking in organizations,SAGE Publications.(遠田雄・西本直人訳,2001,『センスメーキング・イン・オーガニゼーションズ』文眞堂.)
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