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ポストコロナ時代におけるコミュニティーの新しいカタチ

 1.はじめに

 コロナ禍にいる私たちにとって、この先の未来は、あまりにも不確定要素が多く、見通せないのが本音ではないでしょうか。とはいえ、この間さまざまな状況の変化があり、今まで気づかなかったことが見え始めているのも確かでしょう。 

   2.都市型コミュニティーへの変化

 2020年5月に安倍晋三首相が全ての国民に一律10万円の給付を決めました。京都大学教授の広井良典氏は、5月28日付けの朝日新聞の記事の中で、この政策決定の背景には日本社会特有の「横並び」文化があると述べています。良くも悪くも「一体感」という基盤に形成される「空気」やいわゆる「忖度心」があるというのです。同氏は、このような意識で形成される組織を「農村型コミュニティー」と呼んでいます。一方、それに対比し、個人が独立しながら、ゆるくつながるような関係性や理念の共有や公共性が基盤にあるのが「都市型コミュニティー」と定義づけ、コロナ禍では、このようなコミュニティーが芽生えたのでないかと述べています。

 確かに、コロナによって、テレワークが一気に増えたことで、「職場」というコミュニティーにおける概念が大きく変化したことが象徴的です。NHKが5月19日~29日にかけて実施した国内大手100社へのアンケート調査の結果では、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、実に80%以上の企業が、テレワークの活用など新しい生活様式に対応した働き方を検討していると言います。 今、日本社会では、コミュニテイー形成のあり方が、日本型の典型である「農村型」から、個人の自立性に軸足を置いた、ゆるくつながる「都市型」へ急速に移行していると考えられます。

 3.地方へ分散する契機

 このように、関係性の強弱によって、ネットワークのあり方が「農村型」から「都市型」への移行が進むことによって、「都市」一極に集中していた人口は、地方へ分散することを加速させます。つまり、関係性は「都市型」に移行しつつ、人口移動は「都市」から農村をはじめとする「地方」へ分散する契機をもたらすことが考えられるわけです。

 法政大学政策創造研究科教授の石山恒貴氏は、その著書「地域とゆるくつながろう」の中で、地域や組織と濃密に関わるか、否かの2者択一ではなく、多様な選択肢があっても良いと提唱しています。肩肘張らずに、地域や組織と「ゆるく」つながることが、やがて地域活性化の進展や副業等の多様な働き方のきっかけを創り出すのではないかと考えています。

 4.ポストコロナ時代への新しい示唆

 今回の、人と人との関係性や働き方の変化は、コロナがもたらした数少ない好機と言えるでしょう。すなわち、「横並び」の一体感に基づく「農村型」コミュニティーから、個人の主体性に基づく「都市型」コミュニティーへの意識と行動の変容は、ポストコロナ時代に新しい示唆をもたらしてくれたと言えるでしょう。


引用

・京都大学教授 広井良典「コロナ禍の日本と政治」『朝日新聞』2020年5月28日 朝刊4面

・NHK NEWS WEB 「テレワークなど新しい働き方 企業の8割検討 新型コロナで」 2020年5月30日号 (https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200530/k10012451281000.html 閲覧日:2020年5月31日)

・石山恒貴ほか『地域とゆるくつながろう!ーサードプレイスと関係人口の時代ー』 静岡新聞社 2019年

















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