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いつももっている大切なもの???23-2023/06/07

 5月最終の週末、クラウンの師匠まりちゃんの20年来の友人であり、ケアリング・クラウンの仲間であるイタリアのジネーブラが来日した。ジネーブラは、まりちゃんの師匠パッチ・アダムスと1994年に出会い、以来共にクラウンとして戦地を含めた世界各地を訪れ、現在も活躍するクラウンである。とにかく存在そのものと表現がとってもチャーミング。ずーっといっしょにいたい~と思ってしまう素敵な方。今回2日間のワークショップを開催してくれた上、乳幼児親子サロンやシニアの暮らす場でのクラウニングもされた。私もワークショップに参加し、乳幼児親子サロンでのクラウニングを共にすることもできた。クラウンとして自分のエネルギーの発露そのものをカラダで学ぶ?感じる?そんなワークショップであったし、クラウン・ジネーブラの現場でのふるまいを直に見て、直に聞いて、直に感じる、そんな体験となった。
 
 ワークショップの事前、「いつももっている大切なもの」を持参するようにとの指示があった。いつももっているもの?真っ先に浮かんだのは「赤ハナ」。あとは最近いつも持っている「木製自分の絵入りカズー」。ほとんどクラウンが集まるワークショップに赤ハナもっていっても、何にも面白くない。でも偽ってほかのものを持っていくわけにもいかない。当日ジネーブラからの課題?テーマ?は、その「いつももっている大切なもの」にまつわる物語を参加のみんなにきかせよ、というものだった。
 
 実は私はその場になって、急遽「赤ハナ」じゃない持ち物に変更した。みなが大切なものを手元に携え、自分の物語を披露してもよい人が手をあげ語り始めた。なかなかこういう時、昔から私は手を挙げられない。だが、2-3人が話してくれた後だったか、誰も挙げないじわんとした時間が来た瞬間手を挙げてしまった。語り始めたものの途中で涙が溢れて、うまく語れなかった。ので、あーあという思いがちくりと残った。
 
 急遽変更した「いつももっている大切なもの」は、玉三郎さんの写真入りパスケース。昨年(2022年)5月八千代座(熊本県山鹿市にある大正時代からの芝居小屋)での最後の坂東玉三郎公演をいっしょに鑑賞した親友のお母さんが買ってくれた。親友=たかちゃんのお母さんが買ってくれたことが嬉しくて、いつも持っている。

 たかちゃんのお母さんは、私に会うといつも、その昔私の母と電話で話したことを話してくれる。「さっちゃんのお母さんはほんとうに明るい声の明るい人だったよ、今も忘れない」と。たかちゃんは、大学時代の同級生。わが家(@東京)に遊びに来て泊まっていくことになった時自分のお母さん(@熊本)に電話し、たかちゃんのお母さんと私の母は電話で話したのだ。たったの1回だけだったはず。でもたかちゃんのお母さんは、会うたび会うたびその話を私にしてくれる。たかちゃんのお母さんからこの話を聞くことが嬉しくて、それを聞きたくてまた熊本山鹿へ行かなくちゃ、とさえ思う。
 
 自分の家族(父母と姉)がみな旅立って25年以上、私の周りには私の家族を知らない人ばかり。知り合って20年以上になるツレも、3人には会っていない。だから、私の家族を知っている人、憶えていてくれて思い出まで語ってくれる人の存在は、とんでもなく貴重でありがたい。
 いつももっているモノは、たしかに玉三郎さんのパスケース。だが、心の中の奥底に、いつも壊れないように大切に大切にもっているのは、たかちゃんのお母さんの優しい声と語りだった。ワークショップの課題?でそのことに気づいた。そして、たかちゃんのお母さんの語りから、私の心のなかに母の声も蘇って響いてくる。あの日途中で涙が出てしまったのは、蘇った母の声のせいかもしれない。
 今なら玉三郎さんのパスケースがなかったとしても、「いつももっている大切なもの」は「たかちゃんのお母さんの声」と言ってしまいそう(笑)。
 
 ジネーブラのワークショップから、大切なモノにまつわる物語がそれぞれの人にあるのだなあとしみじみ想った。モノに象徴されなくても、大切にしている思い出や記憶がそれぞれの心の奥底に保管されているだろう。クラウンとして出会う人たちから、そうした大切な物語を聴くことができたら幸せだな、、、とふと思った。そんな大切な物語を話してみたいと思ってもらえる、そんなクラウンでありたいなあと思う。
(表紙の写真は、2023年5月26日飯倉学童クラブにて、乳幼児親子サロンでのクラウニング後、ジネーブラとクラウンねえさまたちと共に記念撮影した写真)
 

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