シャープ宣伝部でもまれてた頃
私が社会人デビューしたのがSHARPでした。
宣伝部に配属になり、当時、ワープロ(書院)とかコードレス電話、ポータブルFAX、電子手帳(ザウルス)、液晶ビューカムなど、新商品のメディアPlanningやメディアを活用したプロモーションを担当していました。
液晶テレビで会社が大成長する前のステージでしたが、とにかく独自性のある商品が次から次に出てきて、本当に勢いがある頃でした。
ザウルスなんかは、うまくやっていればiphoneの立場になっていたかも。。。
https://jp.sharp/products/sla300/index.html
液晶ビューカムは、本当に感動的な商品でした。。
https://corporate.jp.sharp/info/history/only_one/item/t28.html
この頃の家電製品の流通チャネルは量販店ももちろんありましたが、まだ町の電機ショップ(いわゆるパパママショップ)が良く売っていたのです。
そして、パパママショップ向けの販促プロモーションとして、町のイベント会場を借りてSharp製品の展示会を開催していました。「合同展示会(合展)」といいます。そこに町中のパパママショップが自分のお店のお客さんを招待し、ものすごく賑わう展示会場で、招待客と商談を行い購買まで完結する方式です。もちろん、買ったお客さんを招待したパパママショップの売り上げとなります。
ほとんどの家電メーカー(松下電器、サンヨー、東芝とか)がこの”合展”を行っていました。となると、招待されるお客さんも飽きてきます。パパママショップの社長も熱心に合展に自分のお客様を誘わなくなったり。そこで、SHARPが繰り出したIdeaが、豪華客船の中で”合展”を行い、1年半かけて全国の港をまわるというものでした。その名も「シャープコロンブス号」。町のイベント会場での”合展”に飽きていたお客様も、豪華客船の中でやるとなれば興味津々で家族総出で参加です。パパママショップの社長さんもいつも以上に自分のお客様に招待状を送ったり声を掛けて積極的に集客をしてくれました。シャープの公式ブログの中でも100年史の1つとして紹介されてます。
https://cocoromembers.jp.sharp/contents/archives/1308
当時、私はメディア担当だったので、新商品のTVCMは2週間くらいで億単位の予算を投下していました。この頃はTVのセットインユース(テレビを見ている人の数=その時間の各局の視聴率の合計)が今より圧倒的に高かったのです。今はネット、スマホによって、TVを見る人の総数が減っています。ドラマの視聴率も10%超えたらヒット!なんて言ってます。この頃は、フジテレビの月9ドラマで20~30%は当たり前でしたし、プロ野球中継もつねに20%超えでした。なので、TVCMによるリーチ到達効果が非常に大きかったのです。TVCM、新聞、ラジオ、雑誌(旧マス4媒体)で商品のAwareness(認知)は十分高めた状態なので、あとは刈り取り(販促)として合展が活用されていました。認知者を態度変容(商品を実際に手に取ってみてみよう)、行動変容(買う!)まで導くには、店頭が勝負となります。とはいえ、いきなりパパママショップや量販店に足を運ぶお客様はよほど購入意向の高い人です。なので、コロンブス号のような施策で、足を運ぼうという興味を持たせ、豪華客船の中という"非日常”の空間で感情を刺激し、その場で商談(Closing)までもっていくという作戦なのでした。
このコロンブス号は私がSHARPに入社して間もなく終わったのですが、当時のSHARPの戦士たちのIdeaの源泉は尽きることがありませんでした。なんと、次のIdeaとして、テレビ局のスタジオで”合展”をやっちゃおう!と。その名も「シャープ・テレビフェスティバル」。全国のテレビ局の本物のスタジオの中、テレビ局の敷地のあらゆるところをイベントスペースにしてSHARP製品を展示し、テレビのカメラや撮影セットの体験コーナーなどを設けました。コロンブス号の時と同様、パパママショップの社長さんが”テレビ局のスタジオに入れるよ!”と積極的に集客し、お客様も普段TV局のスタジオに入ることは滅多にないことから、フェスティバルは大盛況でした。そしてよく売れました。私はこの施策の直接の担当だったので、1年をかけて全国のテレビ局を行脚しました。
テレビ局のスタジオでテレビを売るという冗談のようですが、大真面目によく売れたものです。
戦略は、認知者の購入意向をさらに高めて販促(Closing)するという目的を設定し、目的達成のために、販促の場だった”合展”を、流通チャネルにもエンドユーザーにも興味のあるロケーションによって集客し、気分高揚の中でClosingする、というものです。
1990年初頭のマーケティングですが、なかなかいけてますよね。
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