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推しのマンガ:『新九郎、奔る!』

こんにちは。今野富康です。

本も読むんですが、かなり漫画も読んでます。

並行して10種類か、そこらは読んでいる感じです。ちなみに、連載は読まないです。単行本でまとめて読みたい派なので。

漫画本も個人的には選ぶのに結構苦労します。

つまんない漫画はひきたくない、笑

もちろん、面白い!と思っている人もいると思うんですが、どうしても好みがありますからね。

それで記念すべき1つ目の紹介漫画は、、、『新九郎、奔る!』です。

主人公の新九郎は、伊勢新九郎。
つまり、後に北条早雲と呼ばれる人です。

本来なら伊勢宗瑞(いせ・そうずい)の方が正しいんでしょうが、北条早雲の方が通りが良いですよね。

時代は応仁の乱から戦国初期にかけての時代。
将軍の執事の家柄に生まれた新九郎が、諸々の困難を乗り越えて一人前の武士に成長していく物語です。

平たく言えば、笑


物語は新九郎が子どもの頃からスタートします。

作者は『究極超人あーる』『機動警察パトレイバー』などなどでも有名なゆうきまさみさんです。
ゆうきまさみさんの漫画なので、面白いだろうという期待値で読み始めましたがやはり面白いw

『新九郎奔る!』のおすすめポイント

おすすめポイントその1:キャラ間の軽妙なやり取り

おすすめポイントは、ズバリ!『真田丸』を彷彿とさせるような、軽妙なキャラクターたちのやり取りです。

個人的には、新九郎一家の会話が三谷幸喜さんの『真田丸』で描かれた真田家の会話に見えて仕方がない、笑

なんだったら、いずれ大河ドラマにしてほしいくらいです。


おすすめポイントその2:室町時代の慣習や諸事情がリアル

まあ、室町時代にもいろいろあるわけですよ。人間関係とか、組織内のいざこざとか、利害関係とか、当時なりのルールや慣習も。

そういった込み入った話をちゃんと説明しながら、面白く読ませるってかなり高度なことだと思うんですよね。

読み手からすると、さらっとやっているように見えるのですが、歴史物だけに事前のリサーチとかかなり大変なんじゃないかなあ。

例えば、「幕府」という制度そのものが将軍とその仲間達で権力を持つ仕組みなんです。これは、鎌倉、室町、江戸全てに通底する話。

よって将軍のご機嫌とか、ご意向とかは幕臣(これは江戸時代っぽい言い方ですが)にとってはともかく重要。忖度しまくり、根回し、袖の下もとても大事だったりします。

これって、現代人の私たちの価値観からすると「不公正だ!」「贈収賄だ!」という話になるじゃないですか?ところが、これが当時のスタンダードなわけですよ。

むしろ私たちが慣れ親しんでいる「法の下の平等」という考え方は、近代西洋思想の影響です。もっと言えば、普遍主義という概念を踏まえたもの。でも、室町時代にはそんなものはない。

「新九郎、奔る!」の中でそういった概念が対比的に説明されているわけではないんですが、端々に当時の価値観で登場人物が語っている箇所があるので読んでいてものすごく勉強になります。

おすすめポイントその3:京都見物の見どころがマニアックになる

先日、京都に行ったんですが「今出川通り」に差し掛かって思わず、「ここか!」と声が出てしまいました。
作中に今出川殿という人物が登場しまして、その呼び名の由来は今出川に在所があったからなんですよね。

今出川殿というのは、足利義視。
将軍である足利義政の弟です。

義政になかなか子が生まれなかったので、還俗して後継者になる予定だったのが今出川殿(足利義視)です。ところが、義政に子が生まれたものだから話がこじれてついには「応仁の乱」という大乱にまで発展してしまった。その辺りの経緯を面白く読めるのが『新九郎、奔る!』の素晴らしいところです。

いや、実際、本で読んでも登場人物は多いは、敵と味方の入れ替わりは激しいはで、よくわからなくなるんですよ、このあたりの出来事は。

そこのところが、漫画にしてもらったことで格段に把握しやすくなりました。

ちなみに、今出川どおりの目と鼻の先に、足利義政が作った銀閣があります。

だから、余計にびっくりした。
「近所やん!」「ちゃんと話し合ったら、応仁の乱なんて起こらんやん!」と、笑

こんな人にオススメ

ありきたりな歴史物、例えば戦国物とか三国志とか幕末物に飽きてしまった人には特にオススメです。あと、バトルものに飽きた人にも良いと思います。

とにかく主人公が強くて無双するタイプの漫画では全くなくて、かなり人間臭いし、時に情けない感じに描かれているので、血圧を上げずに読めます。連載を継続するために、無理矢理作ったような強引な山場とかはちゃめちゃなどんでん返しもない、笑 (こういうのは某少年誌Jなんかには多い。まあ、こっちはこっちで好きだけどw)

リアリティとエンタメを程よくミックスしているので、楽しく読めます。そして、1冊ごとの情報量が多い!普通は武士を主人公にした漫画で、「領地経営」とか「借金苦」とか出てこないですけど、新九郎ではその辺りの現実もかなり描かれています。


在京の領主が増えた結果、現地で領地を経営している家来に乗っ取られるなんてことも起きた時代です。ええ。

個人的にはすごく納得感があって安心して読めるので、歴史漫画を読んでいて「それはねーだろ!」とついツッコミを入れてしまう人にはオススメしたいところ。

読み始めやすさ度メーター

オススメ度: ☆☆☆☆
マニアック度: ☆☆☆☆☆
読み始めやすさ: ☆☆☆

オススメ度4の理由は、めっちゃ面白い一方で読者は選ぶと思うからです。時代が時代ですし、複雑なので。
とにかくわかりやすくてスカッとしたい人には向かないです。大人向けな感じ(エロというわけではなく)。

マニアック度5の理由は、当時の政治状況をかなり丁寧に描いてくれているからです。なんとなく室町っていうと京都中心に話が進んでいく感じがするじゃないですか?ところが、中部地方や関東でもいろいろあるし、中国地方でも揉め事はあるわけです。そういった事情を新九郎目線でしっかり描いている。今までの漫画ではなかったんじゃないかなあと思いました。

この辺りが、ゆうきまさみさんの着眼点の凄さなのかもしれません。

読み始めやすさ3の理由は、現在13巻まで出ているということ。そして、最終何巻まで出るかが現時点ではわからないことです。これは仕方ないですね。むしろまだまだ続いて欲しい、笑

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