見出し画像

60代ASD、初の海外(トルコ)に挑む(9)明日に向けて


明日のための休息

その夜も食欲はあまり回復せず、十分な塩分(水分も)が取れなかったせいか、さらに強い悪寒に見舞われた。もちろんろくに体力は回復していない。

翌朝、何とかレストランには行った(かもしれない、記憶があいまい)が、とにかくバスで移動できる状況ではなかった。アンカラでの車酔いがまざまざとよみがえる。

この日は有名な観光地でもあるパムッカレに行く予定だった。パムッカレは遺跡の円柱などが温泉の中にあるという稀有な場所で、また石灰棚の広がる光景でも有名だ。入るといわずとも遺跡の沈む温泉を見たいものだと思ってきたのだが、クシャダスからは200㎞程度東(つまりは内陸部)にある。東京ー長野間の距離だ。

私はまたもや本日の参加を断念した。明日は移動であるうえ、このツアーの白眉の一つであるエフェソス遺跡の見学がある。エフェソスで動けないとなったら(最悪ではないにせよ)本当にがっかりだろう。

ホテルの庭

そういうわけで、またもや一人ホテルに残ったのだが、昼過ぎ、さすがに空腹になってきた。いい兆候だが、どうやったら食事が取れるか、皆目わからない。

とりあえずホテルの庭に出てみた。目の前はエーゲ海。

ホテルの庭。ここでのんびり過ごすようにできている。
今日は雲がやや多い。透明なエーゲ海が紺碧の色を帯びる。

ホテルの庭には売店があった。が、昼休み中で開いていない。庭でおとなしく待ち、開店後中に入った。
幸いそれまで何回も飲んで気に入っていたチェリージュースと、日本でも売っているドリトスというスナックを見つけた。脂っこいが、少なくとも味の見当はつく。糖分と塩分を補給するため、その2点を4$で購入した。まあ高いが、そんなことは言っていられない。
部屋に持ち帰り、少しずつ胃に収めた。

ツアーの参加者たち

このハードな日程のツアーを、ほかの参加者は楽々とこなしている。(実は私以外にも途中で「休息」していた人がいると後から聞いたが、わずかだ)
それも見渡したところ、若い方はあまり多くなく、私よりも年上ではないかと思われるような方がずいぶんいらっしゃる。おそらく日常運動を欠かさないような人たちなのだろう。

このツアーの引率者であるK先生は、長いことI大学で西洋古典学を教えられていて、そのころから学生を連れてこうしたツアーをたびたび行っていたらしい。
今回の参加者の大半は、このK先生のツアーに過去何回も参加して、どんなツアーかわかっているのだ。英語を当然のように話すし、旅慣れてもいる。

明日は前に進む

まあ正直言って、これは体力もなく英語もろくに話せない私のようなものが初の海外旅行に選ぶようなツアーではないのだった。
それでも、私は参加したことを後悔してはいなかった。(いたらこんな記事など書いていない)

英語もトルコ語も話せない私が個人旅行でトロイアに行くことを考えたら、ついていくだけでいいツアーはずっと楽で安全だ。
同行者の皆様には多くのご迷惑をおかけすることになるが、申し訳なさのためにツアーを途中で抜けることは思い浮かばなかった。

トロイアまではまだしばらくエーゲ海沿岸を北上しなくてはならない。それまでに体力を回復することができれば、私の人生の目的の一つ、「『風繁きトロイエーの郷』とうたわれたその地に立ち、風に吹かれる」は達成される。

エーゲ海に沈む夕日。波も穏やか。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?