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仕事のモチベーションを考える~なくなったときの対処法は


ビジネスシーンで「モチベーションが湧いてきた」というセリフを聞いたことはありませんか。もしくは、この言葉を口にしたことがあるビジネスパーソンもいると思います。

なぜ仕事でモチベーションが注目されるのでしょうか。


それはモチベーションがビジネスの推進力になるからです。

そうであれば、モチベーションを失うことは、ビジネスパーソンにとって一大事になりかねません。


そこでこの記事では、仕事をするときにモチベーションが必要になる理由と、これがなくなったときの対処法について解説します。


仕事のモチベーションとは


モチベーションの元の意味は動機ですが、ビジネスではさらに深い意味があります。


仕事に意欲的に取り組む気持ち


仕事に臨むビジネスパーソンの心境には大きく、「この仕事にこそ取り組みたい」というポジティブなものと、「仕方がないから仕事をする」というネガティブなものの2つがあります。

モチベーションには、ビジネスパーソンの意欲を駆り立て「この仕事にこそ取り組みたい」と思わせる力があります。


中小企業基盤整備機構は、ビジネスパーソンなどがモチベーションを持つには報酬が必要であると指摘します(*1)。そして報酬には次のものがあります。


■モチベーションの根源となる報酬

●外的報酬:昇給、昇進、ボーナス、福利厚生、ステータス、企業のバリュー、表彰など

●内的報酬:仕事の面白さ、達成感、成功感、満足感、共有感など


外的報酬は勤務先の会社などから与えられるものです。昇給・昇進はまさに報酬であり、給料の額や役職が上がると労働意欲はダイレクトに高まるでしょう。

したがって外的報酬はモチベーションを生みます。


内的報酬の種類や内容は、ビジネスパーソン1人ひとりで異なるはずです。同じ仕事でも、担当者によって面白く感じたり、退屈に感じたりします。

また、2人の社員が同じ目標を達成したときでも、片方は喜び、他方は満足しないかもしれません。

内的報酬は文字とおり、ビジネスパーソンの心の内側に存在します。


*1:https://j-net21.smrj.go.jp/qa/hr/Q0974.html


怠業問題に対するインセンティブからモチベーションへ


外的報酬の昇給とは給料の増額なので「お金の問題」とみなすことができます。お金の多い少ないは、モチベーションに大きな影響をもたらします。


実はモチベーションの議論は100年以上続いています(*2)。

100年前に考えられていたことは、労働者の怠業問題をどうすべきか、ということでした。怠業とは、サボることです。

このとき出された答えが、目標と賃金の設定でした。労働者に目標を提示して、それを達成できたら賃金を高くする、というもの。

賃金上昇がインセンティブ(報奨、奨励、刺激)となるので、労働者は怠業せず目標に向けて働く、というわけです。


それから時代を経て、モチベーションがフォーカスされるようになりました。


インセンティブは労働意欲を高めるのに効果的ですが、インセンティブの設定にはコストがかかります。そのため企業は、業績が傾くとインセンティブを提供できなくなります。そうなると労働者の労働意欲は低下してしまいます。

そこで、インセンティブ以外のもので労働意欲を高める方法を模索しました。それが内的報酬です。

労働者に仕事の面白さ、達成感、成功感、満足感、共有感といった精神的な価値を持ってもらえれば、仕事の推進力になりますし、賃金アップなどのコストがかかりません。


ただ、内的報酬こそが正しいモチベーションの根源であり、外的報酬はそうではない、というわけではありません。

労働者に、その人が「面白い」と感じる仕事を与えても、何年も給料が上がらなかったらモチベーションは低下するでしょう。

モチベーションは、内的報酬と外的報酬がうまく組み合わさったとき最大になります。


*2:https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2017/07/pdf/016-025.pdf

 

仕事のモチベーションを失うケースとは


モチベーションの量や質は変化します。ではなぜ、大きくて強かったモチベーションが縮小してしまうことがあるのでしょうか。

何が起きると「以前ほどこの仕事に強いモチベーションを持てなくなった」と感じてしまうのでしょうか。


自分の仕事観によるもの


仕事観が変わるとモチベーションは低下します。

例えば、困難な仕事を与えられた当初は緊張感もあり、失敗もあり、挫折もあります。したがってその仕事を完遂できたときは達成感を得ることができます。これは仕事の喜びとなり、モチベーションにつながります。


しかし、同じ仕事を何度か繰り返すうちに、緊張感がなくなり、失敗することも挫折することもなくなり、簡単に仕事が終わります。これでは達成感が得られません。


また、例えばある仕事に、社会課題を解決するというミッションが付与されていたとします。この仕事の担当者が業務を終えると、「社会課題を解決できた」という満足感が得られます。さらに、社会課題が解決されて喜んでいる人をみることができたら「あの仕事に携わることができてよかった」と思えるでしょう。

このケースでは、社会課題を解決することに価値をみいだせる仕事観こそが、モチベーションを生んでいることがわかります。


職場環境によるもの


外的報酬は「外的」というとおり、仕事をしているその人に関係なく、外的要因によって変化します。外的要因は職場環境によってかなり変わってきます。


例えば、給料の高さが魅力で会社に入社した人は、その会社の業績が悪化して給料が減額されると、モチベーションの源が損なわれてしまいます。

また、仕事にやりがいを感じていた人が、会社の命令で別の部署に異動になり、まったく違う仕事を与えられてもモチベーションが低下する可能性があります。「こんな仕事をするためにこの会社に入ったわけじゃないのにな」という不満は、モチベーションが低下している証拠です。


身体的、精神的な理由によるもの

 

身体的、精神的な理由によってモチベーションが低下するのは、健康を崩したときです。

病気を発症して体力が低下すると、それまでのパフォーマンスを出すことができなくなり、仕事の完成度が低下して、それにともなって達成感が減ってしまいます。

また、心の病を抱えると、そのせいで仕事への意欲が減退します。

 

仕事のモチベーションがなくなったときの対処法


それではビジネスパーソンが「モチベーションがなくなった」「かつての大きくて強いモチベーションを取り戻したい」と思ったときに、どのように対処したらよいのか解説します。


「仕事をすることは重要である」「仕事をしたいと思っている」を確認する


まずは、「仕事をすることは重要である」「仕事をしたいと思っている」といったことを確認することをおすすめします。

なぜなら、無理やりモチベーションをつくり出しても長続きしないおそれがあるからです。


仕事それ自体の重要性と、仕事への意欲の重要性を再認識することで、モチベーションの重要性を知ることができます。

モチベーションの源のうち、外的報酬として他者から与えられることがありますが、内的報酬は自身でみつけ出す必要があります。

内的報酬を探し続ける姿勢が、モチベーションを維持することに貢献します。


休む


仕事のしすぎでモチベーションが低下している場合、休むことが有効になります。

仕事の量が増えたり、難易度が高まったりすると、仕事が流れ作業になったり、「完璧にこなすことができた」という実感が得られにくくなったりします。

これではモチベーションを維持できません。

休む方法はいくつかあります。長期休暇を取得する、忙しくない部署への異動を希望する、担当を変えてもらう、残業を免除してもらう。自分のモチベーション回復に役立つ休み方をみつけましょう。


何かする


どれだけ「仕事好き人間」でも、仕事をしすぎると飽きてきたり疲れたりします。その場合、別の何かに集中することでモチベーションが回復することがあります。

「別の何か」もいくつかあります。趣味に没頭する、家族と触れ合う機会を増やす、副業に挑戦してみる、といった方法が有効かもしれません。


この「何かする」も、先ほどの「休む」ことも、仕事と少し距離を置くことでモチベーションを回復させる方法です。仕事を客観視できるようになり、仕事を再評価できれば「また一生懸命取り組みたい」と思えるようになります。


見方を変えてみる


「やらされているだけ」と感じていると仕事のモチベーションは湧いてきません。しかしどの仕事も、誰かが必要としています。つまりどの仕事も誰かの役に立っているわけです。


「誰かのためになっている」と感じることができれば、モチベーションが湧いてくるでしょう。

多くの仕事は分担制になっています。自分の前工程の担当者が作業を終え、そのあとを自分が担い、そのあとを後工程の人が担当する、という流れです。

例えばビル建設なら、土地をならす仕事があり、基礎をつくる人がいて、それから鉄骨を組み、外壁を取りつけ、内装工事をしますが、いずれの仕事も「前工程の人→自分→後工程人」という順番に流れていきます。


鉄骨を組む仕事が長く続くと「自分は鉄骨を組むことしかできない」と感じるかもしれません。しかし仕事の味方を変えれば「基礎がしっかりしているから、鉄骨を確実に組むことができる」「自分が組んだ鉄骨のおかげで立派なビルが完成した」と思えるようになり、これがモチベーションにつながります。


上司や同僚、家族に相談する


モチベーションが低下したとき、会社の上司や同僚、または家族に相談すると、解決策がみえてくることがあります。


例えば上司に、「以前は仕事にやりがいを感じていたが最近はそうではない」と伝えると、上司は「なぜそうなったのか」と尋ねるでしょう。

この問いを投げかけられることで、給料に不満があるのか、もっと上の役職を求めているのか、仕事に飽きたのか、職場の人間関係がうまくいっていないのか、パフォーマンスが出せていないのか、といったことがわかります。

それがモチベーション回復の糸口になります。


転職しない場合:異動を申請する


今勤めている会社の待遇に満足している場合、転職してもモチベーションが回復するとは限りません。

その場合は、異動を申請してみてはいかがでしょうか。


パフォーマンスを出せている仕事には「できる仕事」と「したい仕事」があります。好きではない仕事でも、それが「できる仕事」の場合、パフォーマンスが上がってしまいます。しかしその仕事を好きになれないと、次第に意欲が減っていきます。


別の部署に異動してこれまでとまったく違う仕事をすれば、最初はなかなかパフォーマンスを出せないかもしれませんが、しかし「したい仕事」であることがわかれば、やりがいを持って取り組めるようになります。


転職する


今勤めている会社の待遇に不満があり、それがモチベーションを減退させていれば、転職は有効手段になります。

パフォーマンスが高く実績もしっかりあげている場合、それに見合った給料をもらっていないとモチベーションは下がっていくでしょう。パフォーマンスが高くなっているのに給料が高くならないと、外的報酬が実質的に減ってしまうからです。

実績を金銭的に高く評価してくれる会社に転職できれば、待遇に不満を持つことなく仕事に邁進できます。


我慢して今の仕事を続けてみる


ただ転職はリスクがともないます。

例えば年功序列タイプの企業は、若いうちは給料の額が低く、役職もなかなか与えられず、モチベーションを高めにくいのですが、年齢が上がると待遇がよくなるので会社に満足できます。

一方、成果重視タイプの企業は、高いパフォーマンスを出しているうちは待遇がよいのですが、何かの事情でパフォーマンスが低下すると途端に風当たりが厳しくなります。


年功序列タイプの企業から成果重視タイプの企業に転職すると、最初は満足できても、3年5年と経つうちに「前の会社の待遇のほうがよかった」と感じるようになるかもしれません。これが転職リスクです。


モチベーションが低下していることについて「会社のせいである」と感じても、しばらく同じ会社に居続けていると「うちの会社は案外働きやすいかもしれない」と思えるようになるかもしれません。


仕事から離れる


「仕事が嫌だ」と強く感じて、なおかつ心の病を発症してしまった場合、仕事から離れることも選択肢に入るかもしれません。

もちろん仕事から離れると収入が途絶えるので、これは簡単な選択ではありません。


上司や同僚、家族、または精神科や心療内科の医師たちのアドバイスを受けながら、決断するとよいでしょう。

企業によっては、心の病を発症した人に長期休暇を与え、復職を待ってくれるところもあります。職場の理解が必要ですが、復職できればまた職場や会社に貢献できるわけなので、もしそのような社内制度があれば積極的に利用してもよいでしょう。


まとめ~人生に活力を与えるためにも


記事の内容を箇条書きでまとめます。


●仕事のモチベーションの源には、賃金などの外的報酬と仕事の面白さなどの内的報酬がある

●かつて大きくて強かったモチベーションが、小さく弱くなることがある

●モチベーションを失うケースには、仕事観の変化、職場環境の変化、身体的、精神的なものなどがある

●モチベーションを回復させる方法には、休む、何かする、見方を変える、周囲の人に相談する、異動を申請する、転職する、今の仕事を継続する、仕事から離れるなどがある


仕事は人生に大きな影響を与え、人生の大部分が仕事で占められている人もいるでしょう。そのような場合、大きくて強いモチベーションは、人生を豊かにするものでもあります。

モチベーションが減ってきたと感じたら、回復する策を考えてみたいものです。

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