見出し画像

ペルソナの設定がなぜマーケティングで求められるのか~つくり方やメリットを解説


ペルソナは、「理想の顧客像」や「架空の顧客」「重要なユーザーを模した架空の人物」などと訳されます。

マーケティングでペルソナの設定が重要視されるのは、そうすることで顧客目線のマーケティングを展開できるからです。その結果、ヒットする商品・サービスを生み出す確率が高くなります。


この記事では、ペルソナとはどのようなものなのか、を紹介したうえで、なぜマーケティングで重視されているのか解説します。さらにペルソナのつくり方も確認していきます。


ペルソナとは


企業にとっての理想の顧客とは、自社商品・サービスを信頼して買ってくれる消費者、となるでしょう。

既存の商品・サービスであれば実際の購入者が理想の顧客になるわけですが、これから開発する商品・サービスにはまだ理想の顧客は存在しません。

そのため理想の顧客の像であるペルソナを設定して、それを理想の顧客であると想定して商品・サービスを開発したり、マーケティングを展開したりします。


ペルソナを設定するとマーケティング担当者(以下、マーケター)や開発担当者は「このペルソナならこの商品・サービスをこう使うに違いない」と想像することができます。


リアルな人を設定する


ペルソナは、極力リアルな人に近づけます。したがって「20代男性」と設定するのではなく「29歳男性、かとう・はじめ、大卒、入社7年目」といったように詳しく人物設定をしていきます。

ペルソナに持たせる属性や性質は例えば次のとおり。


■ペルソナの設定に必要な要素

●名前

●年齢

●住所

●職業

●年収

●学歴

●性格

●価値観

●家族

●友人

●趣味

●休日の過ごし方

●買い物をする場所

●好きなブランド

●多用するSNS


なおペルソナの具体的なつくり方については後段で解説します。


ペルソナとターゲットの違い


ペルソナはマーケティングのターゲットになりますが、両者は似て非なる概念です。

ターゲットはより抽象的で、ペルソナはより具体的です。

ターゲットは属性で区分けした集団であり、ペルソナは個人です。


また、ペルソナのことをターゲットの詳細版と単純に考えてもよいでしょう。

「20代男性」をターゲットと呼び、「29歳男性、かとう・はじめ、大卒、入社7年目、性格おっとり」をペルソナとしてもかまいません。


なぜマーケティングでペルソナが重要なのか


マーケティングでペルソナの設定が重要になるのは次の3つのことが可能になるからです。


■なぜマーケティングでペルソナが重要になるのか

●見込み客への理解を深めることができるから

●ユーザーの視点を持つことができるから

●社内でユーザーイメージを共有できるから


1つずつみていきましょう。


見込み客への理解を深めることができるから


企業が正確にペルソナを描くことができれば、それは見込み客に近づくはずです。

見込み客とは、まだその商品・サービスは購入・利用していないものの、いずれ購入・利用する見込みのある消費者のことです。

見込み客がそのまま見込みだけで終わるか、購入する顧客に変わるかは、企業の「一押し」にかかっています。


企業がペルソナを設定してペルソナ研究を進めれば、その「一押し」として何をすれば見込み客が購入を決断するのか思いつくはずです。

またペルソナ研究は、見込み客が購入に踏み切らない理由も明らかにするでしょう。

ペルソナを設定することで「このペルソナなら、このようなアプローチをすれば購入するはずだ」「このペルソナが抱えるこの支障を取り除けば買いたいと思ってもらえるだろう」といった考え方ができるようになります。


ユーザーの視点を持つことができるから


ペルソナを設定すると、マーケターも商品・サービス開発担当者も、「このペルソナならどう考えるか」と考えるようになります。

その結果、ユーザーの視点を持つことが当たり前になります。

例えば消費者には、高機能ならば多少価格が高くても購入する人と、価格が高いと高機能でも購入しない人がいます。ペルソナを設定しておけば「このペルソナはどちらなのか」と考えることができます。


社内でユーザーイメージを共有できるから


企業が商品・サービスを販売するまでには、開発や販売、営業、マーケティング、広告などさまざまな工程があり、さまざまな人が関わることになります。

このときペルソナがあれば、開発担当者、販売担当者、営業担当者、マーケター、広告担当者が同じ顧客像(ユーザーイメージ)を共有できます。

これは社内の関係者全員がユーザーイメージの共通認識を持つことになり、それぞれの業務間の連携がスムーズに進むでしょう。


ペルソナ作成のメリット・デメリット


ペルソナを作成することのメリットは、見込み客への理解を深め、ユーザーの視点を持ち、社内でユーザーイメージを共有できることで得られるメリットになります。それは次のとおり。


■ペルソナ作成のメリット

●見込み客へのアプローチの確度が上がる(購入につながりやすくなる)

●商品・サービス開発が正確になる(開発担当者やマーケターがユーザー視点を持つのでヒットする商品・サービスを生み出しやすくなる)

●社内の各工程がスムーズに進むようになり生産性が向上する(無駄な作業が生れず、齟齬や軋轢が起きにくくなる)


ただペルソナには、情報収集にコストと時間と手間がかかる、という欠点があります。

ペルソナを1回つくるとそれが社内の共通認識になってしまうので、つくったペルソナが間違っていた場合、すべての施策が「見当はずれのもの」になりかねません。

そのためペルソナは、コストと時間と手間をかけて情報を集めて正確につくりあげていかなければなりません。


ペルソナのつくり方


ペルソナは次のような手順でつくります。

●情報を集める

●集めた情報からペルソナ(理想の顧客像)を描き出す

●ペルソナの運用・見直し


1つずつ確認していきます。


情報を集める


ペルソナは、実際に存在する顧客・消費者などからつくっていくことになります。そのため顧客や消費者に関する情報が欠かせません。

まずは既存客の情報などから、対象商品・サービスのターゲットになりそうな層を探します。

続いてターゲット層のなからペルソナ候補になりそうな人を抽出して、インタビューをしたりアンケートを取ったりします。

また、社内で営業担当者や販売担当者は既存客をよく知っているので、その人たちの意見を聞くことも情報収集になります。


ペルソナはユーザー像を絞り込んでつくっていきます。そのとき推論したり仮定を立てたりします。そのため、合理的な根拠がないと精度が落ち、それはすなわちペルソナと実在の人との乖離を意味します。

それでは意味がないので、ペルソナづくりのためのリサーチは、しっかり予算をかけて行ったほうがよいでしょう。


情報は、年齢、職業、年収、家族などの定量データと、趣味嗜好、価値観、家庭環境などの定性データの両方をまんべんなく集めることが大切です。

対象商品・サービスを「買いそうな人」や「確実に買うであろう人」をみつけることが、情報収集の目的となります。

こうした情報収集を積み重ねることで、より具体的でリアルなペルソナができます。


集めた情報からペルソナ(理想の顧客像)を描き出す


情報を集めたら、ペルソナの骨組みをつくっていきます。集めた情報を箇条書きにするとよいでしょう。さらに、そこから派生する情報も追加していきます。

例えば、「●31歳●アパレル企業の事務職●腰痛と頭痛に悩んでいる」と書き出すことができたら、さらに「●腰痛と頭痛の原因は長時間パソコンに向かっていること●痛みを和らげる方法を知りたい●よい器具をネット通販で購入したいと思っている」といった情報を加えていくことができます。


ここまでのペルソナに肉づけできたらストーリーをつくっていきます。

ストーリーをつくることで、ペルソナに感情移入できるようになります。

先ほどの情報をストーリーにするとこのようになります。


●アパレル企業の事務職、31歳、そろそろ中堅と呼ばれる年次に入った。節目の年齢を超えたせいか、最近、腰痛と頭痛に悩まされるように。自分では「パソコン業務を長く続けているからだろう」と思っている。ただ、病院にかかるほど症状が悪化しているわけではない。そこで健康器具でこの痛みを緩和できないかと、ネット通販サイトを物色している。


以上の内容をまとめるとこのようになります。


■属性

●よしだ・ようこ

●31歳、女性

●都内の賃貸マンションで1人暮らし

●短大卒業後、アパレル企業に入社し現在に至る

●職種は事務で、最近課長代理に昇格

●多忙なことから買い物はもっぱらネット通販

●悩み:腰痛と頭痛。ただ病院に行くほどではないと感じている

●腰痛と頭痛の原因は長時間パソコンに向かっていることと推測している

●ニーズ1:痛みを和らげる方法を知りたい

●ニーズ2:よい器具をネット通販で購入したいと思っている


■ストーリー

よしだ・ようこはアパレル企業の事務職、31歳。そろそろ中堅と呼ばれる年次に入った。節目の年齢を超えたせいか、最近、腰痛と頭痛に悩まされるように。自分では「パソコン業務を長く続けているからだろう」と思っている。ただ、病院にかかるほど症状が悪化しているわけではない。

そこで健康器具でこの痛みを緩和できないかと、ネット通販サイトを物色している。


これが「ペルソナ」です。


ペルソナの運用・見直し


一度つくったペルソナをそのまま長期にわたって使い続けると、マーケティングに狂いが生じてくるでしょう。

ペルソナは、これを運用しながら定期的に見直していく必要があります。

ペルソナの見直しは当然の作業といえ、なぜならユーザーを取り巻く社会はめまぐるしく変化していて、それにともなってユーザーも変わり、ユーザーのニーズも変化していくからです。

例えば、コロナ禍の前後で人々の生活スタイルや行動パターンが大きく変わったのは記憶に新しいところだと思います。

作成したペルソナは「一時的な正解」と考え、常にブラッシュアップしていきましょう。


ペルソナ作成時の注意点


ペルソナをつくるときの注意点を紹介します。


思い込みでつくらない


ペルソナは、担当者の思い込みや会社の理想でつくらないようにしましょう。思い込みや理想には根拠がなく、それでペルソナをつくってしまうと「本当のペルソナ」から離れてしまいます。

特に「こういう人に買ってもらいたい」「こういう人ならこう使うはずだ」といった視点を持ってしまうと、どんどん「本当のペルソナ」から遠くなってしまうでしょう。


リアルな情報を使う


先ほど、ペルソナをつくるときに情報収集に力を入れ、予算をかけてインタビューやアンケートを実施したほうがよい、とアドバイスしましたが、これはリアルな情報を重視したいからです。

ペルソナづくりはどうしても推論や仮定が入ってきてしまいます。これはやむをえないところなのですが、しかしその推論や仮定のベースになるのはリアルな情報であるべきでしょう。

「インタビューで~という意見が多かったので、こういった推論ができる」といったように示せるとよいと思います。


まとめ


ペルソナを作成すると、マーケティング担当者は顧客目線を持てるようになります。人々のライフスタイルがこれだけ多様化すると、画一的な顧客像では顧客を特定できません。ペルソナのような詳細な設定が必要になります。


またペルソナをつくるとマーケティング・チームだけでなく、他部署の関係者も顧客像を共有できるようになります。社内の関係者が「同じ顧客像」を認識することで、マーケティングがスムーズに動き出すはずです。


ペルソナづくりは推論や仮定が介在するので、その推論や仮定が思い込みや理想をベースにしていたら、「本当のペルソナ」から乖離してしまいます。

リアルな情報を得て、そこからペルソナをつくっていきます。


そしてペルソナは一度つくって終わりにせず、社会と時代の変化に合わせてブラッシュアップしていってください。

ユーザーのニーズに応えて商品・サービスをつくってこそ、売上増、利益増が見込めます。ペルソナづくりはその第1歩になるはずです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?