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アンケートの回答率がなぜ重要か「上げる方法を考える」


マーケティングにおいてアンケート結果が重視されるのは、消費者や顧客の本音を知ることができるからです。企業がアンケートで消費者の本音を知れば、消費者の要望を踏まえた商品をつくることができ売れるはずです。


ところが実際は、アンケート結果を元に商品を開発してもヒットしないことがあります。

このようなことが起きるのは、アンケートが適切に行われていないからと推測できます。

適切なアンケートを実施するにはいくつか注意点がありますが、この記事では回答率に注目してみます。


回答率が高いアンケート結果は、信頼に足るデータになるでしょう。

その理由と、回答率を上げる方法を解説します。


なぜアンケートで回答率が重要になるのか


アンケートで回答率が重要になるのは、回答率がアンケート結果の信頼性を左右するからです。回答率が高くなると信頼性が高まり、回答率が低下すると信頼性が低下します。そのため回答率は高いほどよいといえます。

では、アンケート結果の信頼性とは何なのでしょうか。


「アンケート結果はデータ」回答率がデータの信頼性を左右するから


アンケート結果はデータになります。現代のマーケティングではデータに基づいた活動が求められるので、アンケート結果が示すデータはマーケティングを成功させるカギになります。


例えば、アンケートで「商品Aは好きですか」と尋ね、「好き83%」という結果が出ればこれがデータになります。

しかしデータには信頼できるものと、できないものがあります。


回答率が高かったアンケート結果(=データ)は信頼性が高く、回答率が低かったアンケート結果は信頼性が低い、とみなされます。

信頼性が高いデータを元にマーケティングを展開すれば、成功する確率は高くなるはずです。


ではなぜ回答率がデータの信頼性に影響を与えるのでしょうか。


未回答のなかにも答えがあるから


回答率が高いということは回答予定者の多くが回答したことを意味するので、アンケート結果には多くの回答予定者の意見が反映されます。これがアンケート結果の信頼性を高めます。


一方、回答率が低いアンケートは、未回答者が多かったことを意味します。そのアンケート結果は多くの未回答者の意見を反映していないので信頼できない、と評価されてしまいます。


「真実ではない回答率」に注意


この記事では回答率にフォーカスしていますが、アンケートの配布数や回答予定者数にも注意する必要があります。

例えば、アンケート用紙を10枚用意して10人に配布して全員が回答したら、回答率は100%になります。しかし10人ではサンプル数が少なすぎてその結果を信頼することはできないでしょう。


回答率は、アンケートの配布数や回答予定者数を減らすと上げることができますが、その回答率は「真実の回答率」とはいえないでしょう。


理由は4つ


ここまでの考察から、アンケートで回答率が重要になる理由には次の4つがあることがわかります。


■アンケートで回答率が重要になる4つの理由

●アンケート結果はデータであり、データには信頼できるものとできないものがある

●回答率を上げると多くの回答者の意見を吸い上げることができ、データの信頼性が高まる

●回答率が下がると多くの未回答者の意見が反映されないので、データの信頼性が低下する

●アンケートの配布数や回答予定者数を一定数以上にしたうえで回答率を高めなければならない


回答率の計算方法


アンケートの回答率は以下の計算式で算出します。単位は%です。


●アンケートの回答率(%)=回答数÷アンケート配布数×100


例えば、1,000人にアンケート用紙を配布して300人から回答があれば回答率は30%になります。


最低回答率の設定は難しい


先ほど、アンケートの回答率は高いほどよい、と紹介しましたが、では信頼できるアンケート結果を得るには、最低何%の回答率が必要になるのでしょうか。

この答えは「難しい」となるでしょう。


回答率は30~40%以上が望ましいとする説がありますが、その多くはエビデンス(科学的根拠)が明確ではありません。

最低回答率の設定が難しいといえるもう1つの理由は、政府の調査でも回答率がバラバラである点です。

総務省が、各省が行っている調査の回答率を調べたところ100%から37.1%までバラバラでした(*)。

国の政策を決めるときに参考にする調査でも「何%以上の回答率がないと信頼できない」という基準がないので、やはり最低回答率の設定は難しいといわざるをえません。


*:https://www.soumu.go.jp/main_content/000589501.pdf


自社で回答率の目安を決めるしかない?


では企業がアンケートを実施するとき、最低回答率を何%に設定すればよいのでしょうか。

これは、自社で決めるしかない、となります。


例えば、回答率30%のアンケート結果が信頼できなかったら、次のアンケートは40%を目標にしてみる、といった具合に決めていくことになります。


ただ100%を目指す必要はないでしょう。なぜならアンケートは回答を強制するものではないので、回答しない人が出てくるのは仕方ないからです。

また、回答を強く求めると真実ではないことを書かれてしまう危険があり、そうなると回答率が上がっても信頼性は落ちます。

さらにいえば100%の回答率を目指すとコストがかかってしまいます。

そのため、自社で設定した回答率に達成した時点で集計、分析に入ってよいでしょう。


アンケート回答率に悪影響を与える要因


アンケートの回答率を上げるには、回答率が下がる要因を排除する必要があります。


■回答率に悪影響を与える要因

●アンケートの狙いが回答予定者に伝わっていない

●回答の負担が大きい、ストレスになる

●質問が多い

●回答するメリットを感じられない

●アンケートの実施企業や依頼者を信頼できない


このような要因があると回答の拒絶につながってしまいます。

このことを踏まえて、回答率を上げる方法を考えていきましょう。


回答率を上げるアンケートのつくり方

 

回答率を上げる方法は次のとおりです。

 

■回答率を上げるアンケートのつくり方

●アンケートの狙いを知らせる

●回答のストレスを減らす

●質問数を減らす

●謝礼をする

●回答予定者の信頼を得る


どれも重要なので1つずつみていきます。


アンケートの狙いを知らせる


回答予定者にアンケートを実施する狙いを知らせると、回答するモチベーションを高めることができるでしょう。

例えば、メーカーが自社製品を改良することになり、既製品の利用者にアンケートを実施してどのような改良を望むのか尋ねることになったとします。このとき「製品改良のためのご意見を聞きたい」と、その狙いを回答予定者に伝えれば、回答予定者は「自分の意見が次の製品に活かされるかもしれない」と期待します。そのように期待した人は、回答してくれるはずです。


回答のストレスを減らす


アンケートに回答することは、回答者に少なからぬストレスを与えます。設問が多くなれば「面倒だな」と思うでしょうし、質問文が難解だと「何を聞きたいのか」と感じます。

回答のストレスが大きくなると回答率が下がるので、ストレスを与えないアンケートをつくる必要があります。

以下の点に注意して設問をつくってみてください。


■回答者にストレスを与えない設問

1)「はい、いいえ」または「選択式」で回答できる

2)質問文も選択肢の文章も簡潔にする。文字数を極力少なくする

3)直感的に迷わず回答できる設問にする。考え込ませない


1つでも回答につまずく設問があると放棄する人もいる、ということを念頭において設問をつくっていきましょう。


質問数を減らす


質問数が増えるほど回答率が下がる、と考えてよいでしょう。質問が多いほど回答者は回答に苦痛を感じるようなり、拒否したくなります。

回答率が上がらなくて悩んだら、質問数を減らしてみてください。


ただ、質問数を減らすことは聞きたいことを減らすことでもあるので、調査能力は低下してしまいます。

したがって、どうしても聞きたいことがたくさんある場合は、複数回にわけてアンケートを実施することになりますが、そうなるとコストがかかります。


回答率、質問数、調査内容、コストは合わせて検討する必要があります。


謝礼をする


アンケートの回答予定者に謝礼をすると、回答率が上がるでしょう。

謝礼には、金銭や自社製品、企業のノベルティなどが考えられます。

報酬が出るアンケートには、回答者は真剣に答えようとします。「お金をもらっているのだから、きちんと考えて誠実に回答しなければならない」と思ってもらえます。

つまり謝礼を出すと、回答率が上がるだけでなく、「真実の回答」をしてもらいやすくなりアンケート結果の信頼性が増します。

 

回答予定者の信頼を得る


回答予定者がアンケートを実施する企業を信頼していないと「回答したくない」と思わせることになり、回答率が低下してしまいます。

アンケートを依頼する人(企業の担当者)は回答予定者に、自身の身元や調査の目的などを明確に伝えましょう。

また、自社の個人情報の取り扱い方針も提示してください。「アンケート結果はこのこと以外には使わない」と知らせることで、回答予定者は安心して回答できます。


設問数と回答予定時間の目安

 

回答者は、設問数が多くなると回答が面倒になり、回答に要する時間が長くなると途中で断念したくなります。設問数と回答予定時間は回答率に影響を与えるでしょう。

ただ、「何問が適切」「何分が適切」という数字はありません。

 

例えば、重要な調査なので回答者に十分な対価を支払い、回答者もそのアンケートの重要性を理解してくれれば、200問、1時間でも誠実に回答してくれるはずです。

一方、どれだけ簡単に回答できるアンケートでも、その狙いが回答予定者に伝わらないと回答を拒否されてしまうでしょう。

 

では、適切な設問数と回答予定時間はどのように決めたらよいのでしょうか。

 

適切な設問数と回答予定時間の決め方

 

適切な設問数と回答予定時間は、回答率と合わせて決めていくとよいでしょう。

例えば、最低回答率を40%と設定してアンケートを実施したところ35%になってしまったら、次のアンケートでは設問数を減らしたり回答予定時間を短くしたりします。

 

逆に、最低回答率40%と設定して実際の回答率が50%になった場合、設問数を増やすことができる、と考えることができます。設問数を増やすと、得られる知見も増えます。

 

まとめ~実施しただけでは意味がない


アンケートは実行しただけでは意味がありません。また、アンケート結果を分析しただけでは、大きな成果は得られないでしょう。

アンケートは、正しい方法で行い、信頼できるデータを得て、適切に分析したときに初めて果実を得ることができます。

アンケート結果を信頼できるデータにするには、回答率を上げる必要があります。回答率を上げると「反映できる意見」が増えて「反映できない意見」が減るので、より多くの人の考えや意見がアンケート結果に盛り込まれます。

「この回答率以上でなければならない」という数値はないのですが、自社で適切な回答率を割り出し、その回答率に到達させる工夫をしていく必要があるでしょう。

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