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家を買うということ

 9月12日の朝日新聞に「マンション管理 更新阻まれ」という見出しの記事が出ていました。また、10月16日の日経新聞の土曜版に「戸建ての修繕費積み立て必須」という見出し記事が出ていました。家を買われた方、買われる方にはいろいろな示唆があり、想定していなかったことが明らかになったショッキングな記事だったかもしれません。

 朝日新聞の記事の内容を手短に要約すると、マンションの管理を委託していた管理会社から管理費の値上げの要求があり、値上げができない場合は管理契約を更新しないと言われるとのことです。その背景には高年齢者雇用安定法の改正で企業において定年退職の年齢が引き下がり、管理人や清掃員の雇用環境が悪化し、採用が難しくなっていることに加え、最低賃金の引き上げがマンションの管理人や清掃員の人件費の上昇につながり、管理費が上がらないとそのコストアップを吸収できず、管理会社にとって利益の出ない取引になるということです。さらに、管理会社は日常管理で利益が出ない取引を修繕工事の請負で利益を出す構図になっていて、修繕積立金が少ないマンションは管理更新を拒否されることになりかねないと記事には書かれています。

 今マンションでは設備と区分所有者、管理従事者の3つの老いが進行しているとされています。区分所有者の老いは、管理費の値上げや後述する修繕積立金の値上げや一時金の徴収に同意しにくい事情を抱える方も出てきます。私自身がマンション管理会社にいて、安倍政権が最低賃金の引き上げ、働き方改革を標榜したときから、記事に記された傾向が表れ始めていたと実感していて、この記事の意味するところは、その傾向がさらに強まってきて、今後もさらに続くということだと思っています。

 そもそも、マンションは、日常管理は管理費を払って、管理会社にやってもらい、自分で管理する必要がないし、修繕は購入時から資金の積立が修繕積立金として行われるので、将来の備えも大丈夫というのがメリットと思ってしまいますが、そもそもその認識が違うかもしれません。

 マンションデベロッパーは管理費や修繕積立金といったランニングコストも含めて価格設定をしますが、ランニングコストは通常はマンションデベロッパーに直接入るお金ではないので、販売優先でランニングコストを安く設定することもあるようです。将来修繕に必要となる額を目標に積み立てていないことも考えられるということです。あと、修繕積立金で行う修繕は共用部分とされる部分だけなので、内装等専有部分にかかわるリフォームは戸建て同様に相応のお金が必要となるのとにも留意が必要です。

 通常マンションの修繕工事は鉄部塗装は5年周期、外装や屋上やバルコニーの防水処理で10年~15年周期、管工事で30年以上とされていますが、大規模修繕工事では1回目、2回目で外装や防水処理、3回目以降でそれに加えて、管工事を行うのが一般的です。ただ2回目ぐらいの大規模修繕工事で積立金を使い切ってしまうマンションも少なくなく、修繕積立金を値上げして、資金ができるのを待つため、工事を先延ばししたり、一時金を徴収したりということも多くあります。さらに管理費や修繕積立金、一時金徴収には規約の改正が必要で工事の実施とともに、区分所有者のそれぞれ3/4又は1/2以上の同意が必要になるので、同意が取れずに工事にかかわる資金の捻出や工事そのものができないといった状況も起こりうるのです。

 一方、日経の記事の内容は、戸建てを購入して、25年を目途に迎える修繕のピークでやりたい修繕をすべて行うと900万円の費用が掛かり、これを25年で積み立てるとすると毎月3万円の積立が必要になるので、早めに積み立てを開始しようという記事でした。

 日経の記事は戸建ての場合の修繕積立金の話になります。戸建ての日常管理は、通常所有者自身が清掃やごみ捨てをやり、植栽の手入れもしたりするので、マンションにおける管理費はかかりません。将来予想される修繕の資金に関しては住宅ローンの返済などに頭が行ってしまうので、購入時にはあまり意識せず、前もって積み立てておくといった発想にはならないと思います。記事は、資金の積み立てを推奨しており、積み立てておかないと、借金を背負ったり、不具合を直さないと住環境の悪化につながるとしています。 戸建てには、マンションと違い、修繕は懐具合と相談して自分の判断ですべてできる気安さはあります。

 私自身は最初小規模なマンションを購入し10年ほど住んでいて、子供の誕生を契機に、今の戸建てを買い替えて約25年になります。いずれの購入時にはやはり、修繕のことなどほとんど考えていませんでした。マンションの時は言われるがままに管理費と修繕積立金を払い、戸建てに移った後は修繕のための資金プールは特段してきませんでした。それでも、外壁の塗装は2回してきましたし、トイレや洗面設備、給湯器の交換、クロスの張替え、床暖房の設置、フェンス交換などをやってきました。リフォームのタイミングは、資金的な何かしらの都合がついたときに、その時必要だとおもったことを優先順位をつけてやってきたという感じです。

 家を買うということは、ご自分のライフステージの中で一番大きな買い物をすることになるのが、一般的だと思います。戸建てにするかマンションにするか、迷うことも多いと思います。修繕のことだけを考えると、自分の経験からは個人的には戸建てのほうがいいかなと思っています。

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