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どこか遠くに行きたい気持ちがずっとある。(2023/10/5)

どこか遠くに行きたい気持ちがずっとある。ここではないどこか。ここにはずっといられない。そういう思いが頭をかすめることがある。今いる場所がいやなわけではない。むしろ今までいた場所で一番居心地がいい。だから時々、ここにこのままずっといてはならないと思う。

よくわからない感情だ。でもここにずっといたいという気持ちとここにずっといてはならないという気持ちは矛盾したまま同居している。同居したままでも構わないと思う。こうして言葉にしてみると矛盾しているように見えるけど、僕の中では矛盾していない。ずっとここにいたいと思う自分の気持ちもわかるし、ずっとここにはいられないと思う自分の気持ちもわかる。

10月のこの街を歩いていると、金木犀の花の香りが僕の鼻をかすめていく。どこからともなくやってきてこってりとした甘い香りを僕に残し、どこかに去っていく。その余韻の中から、ここではないどこか遠くに行きたいという気持ちが湧いてくる。金木犀の香りはこの場に僕を釘付けにすると同時に、ここではないどこかを強烈に喚起する。ここに充足していると思っていた自分の中に、満たされない何かを抱えた自分もいることを思い出させる。

その満たされなさは欠如や欠落とは違うもののように思える。それはそこにあるはずのものがないという悲しさや無力感を伴ったりしない。落ち込んだりしない。どうして今ここに満足できないんだと自分を叱りつけたりすることもない。ここではないどこか遠くへ行きたいというかたちで、満たされないという感じが出てきているというだけなんだと思ったりする。

今日、仕事の帰りに本屋に行って雑誌を買おうと思っていた。雑誌だったらなんでもよかった。今まで自分が見聞きしたことのないことがそこに書かれているのであれば、どんな雑誌でも構わなかった。でも、お昼においしいラーメンを食べたらすっかり忘れてしまった。食べて、眠くなって、そのうち寝ようと思って見始めたドラマがおもしろくて、結局さいごまで見てだらだらしてしまった。気づいたら夕方だった。

こんな生活をだらだら続けていたいという気持ちもあるし、そういう生活から少しずつ抜けていきたい気持ちもある。自分の気持ちひとつでどうにでもなったらわけないよなと思う自分もいるし、自分の気持ちひとつでどうにでもなるんだったらなんでもやろうぜと思う自分もいる。どっちが間違っているということもなく、どっちも多少なりとも正しさを含んでいると思う。

でもやっぱり、今のままでいいんだっけ、という気持ちが、今は強い。

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