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正義の味方 “労働基準法”

今「シン・ウルトラマン」が映画館で上映されている。
子供の頃、大好きだったのがウルトラセブン。私の場合はウルトラマンよりもウルトラセブンの方が好きだった。

悪い怪獣を負けそうになりながらも最後は完膚なきまでに倒して宇宙に帰っていく姿は、子供の私をテレビの前に釘付けにしたものだ。
怪獣におびえる民衆のために傷だらけになりながらも戦うウルトラセブンは、まさに私の中のヒーローそのものだった。

私は労働基準法を説明する時に、「労働基準法は正義の味方!」と説明する。しかし、この正義の味方は私の心を掴んだあのウルトラセブンとはちょっと違う。

労働基準法13条にこんな条文がある。「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。」。

何とも通り過ぎてしまいそうな条文なのだが、この13条が労働基準法を正義の味方にしてしまう必殺技なのだ。
個別に合意した労働契約が労働基準法に満たない内容の場合、その部分だけ無効としてしまうという。その部分だけ無効にされてしまうからたまらない。
労働契約自体を全部無効にして、最初から仕切り直すことができればいいのだが、正義の味方はそうは言わない。そして、何とも厄介なのが、労使が合意した内容さえも無効にしてしまう力があるのがこの必殺技13条だ。

例えば、「うちは残業代を払わない代わりに、世間相場の2倍の基本給になっているからね。」と言う社長に、社員が、「ありがとうございます!その方が私も嬉しいです!」と合意した場合でも、正義の味方はやって来てしまう。
みんなが平和に過ごす労働現場に、あの必殺技の13条を引っ提げてくるからたちが悪い。
そして、「残業代を支払わない」というその部分だけを無効にしてしまうというのだ。「残業代を払わない代わりに基本給を高くしているのに、残業代を支払うならば、基本給をもっと低く設定したい。」ということは労使の合意なくしては許されず、高く設定した基本給をベースに残業単価が計算されて、高額な残業代の支払いをしなければならなくなってしまう。
両者が円満に合意している平和なところに現れて、問題を大きくして宇宙へと飛び去っていく。

ウルトラセブンとは違い、この正義の味方は眠っていていただくのがいいということになる。そのためには、労働基準法は意識を変えて遵守するということが大事になってくる。
他の法律とは違い、合意も関係ないという意識が大切だ。特に労働者の健康に直結する事項については注意をしていただきたい。
労使が円満な職場を創ることに大きな努力が必要なのが、現代の中小企業だ。しかし、その円満の中に労働基準法に抵触する部分が無いようにしなければならない。

正義の味方が目を覚ます前に、もう一度社内の労働条件、就業規則を見直してみては如何でしょうか。

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