見出し画像

防災は事業の戦略・戦術

この記事を書いている7月中旬ごろは、日本国内では線状降水帯が起因する大雨災害が発生しています
また、海外では猛暑続きで、大規模火災なども発生しています
更には、国家間の戦争が起因する食料とエネルギーの問題、円安物価高、新型コロナウィルス感染拡大など、個人・社会・事業を取り巻く環境が大きく揺らいでいます

数年前にこれらを予見し、具体的な対策を講じてきた人・政治・事業があったでしょうか
いつ来るか分からない危機・リスクに対しての備えや構えが必要であったと、今を思えば痛感している方が多いはずです

それでは、これから起こるかもしれない危機・リスクに対して、十分と思える備えと構えを具体的に描けていますか
多少の防災グッズや貯えを備えている方もおられるでしょうが、万全な備えと構えというものを構築できていますか

実は、この ”十分な” や ”万全な” というワードには大きな勘違い・誤りがあります
この勘違い・誤りによって、今は何とか頑張っている自分らの事業を容易に止めてしまうことがあります

今回は、介護事業・障害福祉事業のBCPを考える上での防災対策と事業継続のための戦略について、お話したいと思います


■ 防災という名の害

事業における防災をどのように捉えているでしょうか

  • 人、施設、設備を災害などから守る

  • 災害などで被害を被っても、できるだけ小さいものにする

  • そのためには、施設を補強し、施設内も耐震対策を講じ、飲食物などの備蓄をする

  • 防災計画や緊急避難マニュアルなどを作っておく

いずれも、間違いではなく、また、効果のある防災態勢が期待できます
しかし、こんな思いや考えもあるのではないでしょうか

  • どんな災害などを想定して、どんな対策を講じればいいのだろう

  • 今から施設や設備を補強するのは予算的に無理

  • 備蓄の必要性は感じているが、何を、どの程度準備すればいいのか

  • そもそも、今の事業・業務で手一杯で、防災対策にかける時間も労力もない

自然災害が目立つ昨今、事業に万全で十分と思える防災態勢を取り入れようとすると、あれもこれも準備しなければと考えがちになります
もちろん、防災態勢を整えておくことは重要ですが、防災を特別扱いし過ぎると、事業そのものに影響を与えることがあります

  • 施設の補強工事でしばらく休業にしたので収入が減った

  • 備蓄用の食料品や備品を大量に購入したが、保管場所がないので整理できていない

  • 防災対策の構築を従業員に指示しているが、いまいち理解されていない

真に必要であれば、時間、お金、労力をかけて準備すべきではありますが、事業や業務が止まったり、被害がった際の復旧にかける事業体力がなくなるようでは、”防災という名の害” でしかありません


■ 防災も事業戦略・戦術の一部

介護事業や障害福祉事業、医療事業は、社会要求が高く、常に要求されている業種です
止まることが許されず、災害などが発生した時には要求される数と質が増すという特性があります

何があっても、自分らの事業が止まらない・止めないということは事業主・経営陣の命題です
それは、日ごろの経営でも、災害等の非常事態でも同じです

どんな状態・状況にあっても事業を継続させるということは、それ相当の戦略がなければできません
(事業を運営・経営されている方々に、あえて述べるものではありませんが・・・)

確かに災害などから人命や事業を守ることは大切ですが、守った後のことまでも考えておくのが事業戦略です
その戦略に基づく細部の戦術が防災計画やBCP、施設・設備・備蓄の整備に当たります

戦略がしっかり打ち立てられていないと、戦術も方向性を失って迷走します
その結果、行っている・行おうとする対策が防災という名の害となり、事業に悪影響を及ぼすことになります

総括すれば、事業を守る戦略・戦術とは ”生き続けるための戦略・戦術” で、事業主・経営陣が打ち立てるものです
自分らの事業の ”現在・非常時・その後の将来” を総合して考えて、備えて、正しい判断と指揮指導を行わなければなりません

防災も事業戦略・戦術の一部で、特別扱いするものではなく、日常の事業の運営・業務の遂行に溶け込んでいるべきものなのです


■ 結果としてカタチになる

スマホは、多くの方がお持ちでしょう
そして、分厚い取扱説明書を見てお疲れになることでしょう
ですが、取説の他に、クイックガイドとかが添付されてますよね
また、取説を見なくても操作できる部分が多いですよね

スマホを使ってやりたいこと・やれることが決まっているので、少々の戸惑いはあっても使い続けられます
何かあれば、誰かを頼って聞いたり、取説を見たりすることもできるので、完璧な知識や技術がなくても使い続けられます

事業の運営・経営も同じだとは思われませんか

事業としてやりたいこと・やるべきこと・やれることが明確であれば、少々の浮き沈みはあっても継続できることでしょう
何かあれば、今ある事業資産と事業にかかわる人々の経験・知識・労力をもって継続することができるでしょう

明確な ”やりたいこと・やるべきこと・やれること” が”戦略と戦術であり
”誰かに頼る” が事業資産、人の経験・知識・労力であり
防災計画やBCP、各種マニュアルなどが取説ということになります

事業の戦略・戦術があるから、従業員ら関係者に伝える手段としてカタチになっているのが各種計画やマニュアルです
BCPなどの策定・作成の際は、この考え方を間違えないようにしてください


■ まとめ

  • 防災態勢を整えておくことは重要だが、防災を特別扱いし過ぎると、防災という名の事業の害となる

  • 防災も事業戦略・戦術の一部で、特別扱いするものではなく、日常の事業に溶け込んでいるべきもの

  • 事業を守る戦略・戦術とは ”生き続けるための戦略・戦術” で、事業主・経営陣が打ち立てるもの

  • 事業の戦略・戦術があるから、従業員ら関係者に伝える手段として各種計画やマニュアルがカタチとして作れる

今からBCPなどを策定しようとしている場合も、今までの各種計画を見直そうとする場合も、事業戦略とBCPなどの各種計画と実際の事業の運営・経営が同じ内容になっていなければならないことも併せて意識しておいてください


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?