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"心のよりどころ" という備え

BCPだけでなく、防災計画や避難計画、各種マニュアルを策定するときに考えることがあります

  • 発生する可能性のある脅威

  • その脅威が発生した時に受ける被害

  • その被害の発生で自分ら・事業がどうなるのか

一般的には、自然災害と感染症パンデミックが脅威となる事態でしょう
でも、自分たち・自分らの事業に脅威となる事態は、それだけでしょうか

予想もしなかった脅威となる非常事態が発生したら、自分ら・事業はどうなるのか
それに対して、何を・どのように備えておけばいいのか
考え始めたらキリがありませんが、考えて・備えて・構えておくことは大切です

そこで今回は、何に対して・どう備えるかの考え方について解説します
キーワードは、"心のよりどころ" です


■ しなやかに乗り越える

人は、何らかの事象や他者の言葉に心を痛めることがあります
過度のストレスが人の心を折り、何もできない状態となることもあります

災害の被災者や事故・事件の被害者が受けるストレスは、日常のストレスとは異なります
大きな災害で被災した人や事業が再起不能となったという話はご存じでしょう

それは、現実に直面して心が折れたからです

予想もしていない突然の事態に混乱し、何をすればいいのか分からない
その上、自分や事業にとって大切な人やモノを失えば、心が折れて当然でしょう

しかし、同じような状態となっても、なんとか回復・復興する人や事業も存在します
何が違うのか、人の個性や事業の特性なのか、被害の程度が違うからか

答えは、"心が折れなかったから" でしょう

どんなに備えが万全であっても、被害が比較的小さくても、心が折れたら再起困難です
再起できた人は、心が折れることなく、逆境を乗り越えることができたからでしょう

災害などから生き残っても、同僚や従業員、自分自身の心が折れてしまっては、何の対処もできません
どのような事態に遭遇しても、しなやかに乗り越えることができれば、何とか先に進めます

そういう観点で言えば、災害対処のための各種計画やマニュアルの策定は、人の心の状態まで考える必要があります
では、どうすれば、事業主である自分や従業員、関係者の心を「しなやかに強くする」ことができるでしょうか


■ よりどころ

人や事業の生死にかかわる非常事態に立ち向かうには、相当の気力と体力を使います
どんなにストレスに強い人でも、心の限界を超えるような非常事態には耐えることが難しいでしょう
何の予測も準備もしていなけえば、受けるストレスは極めて大きくなります

でも、もしも、前もって何らかのイメージがあり、少ないながらも備えがあったとしたら
どうすべきかの道しるべがあっなら、信じられる人が周りにいたらどうでしょう

非常事態にあって、何をすべきか分かると助かるはずです
一緒に相談し、協力し合える人がいたら、もっと助かるはずです

折れそうな心を支えてくれるのは、文字どおり、"心のよりどころ" です
そして、心のよりどころを日ごろから持つということは、非常に重要なことです

  • 非常事態の発生で受ける被害状況のイメージする

  • そのイメージから、事前の対策を講じ、必要となる備えを準備する

  • いざとなったら、どのように判断し、行動するかを決めておく

  • 相談や協力する人たちと話をしてみる、事前の取り決めをしておく

遭遇する非常事態に万全な態勢ではなくても、これだけでも有るのと無いとでは違いがあります
"心が折れるかも" と思える状況・状態に対して、前もって "よりどころ" を作っておく
自分らや事業の "よりどころ" となる人・モノ・コトとは何なのかが分かれば、それが対策となり得ます


■ 物事ではなく、人で考える

一般的に防災計画やBCPなどは、非常事態に対する被害の低減や回避、被害からの復旧が主体となります
"どんな時・状況で、誰が、何をもって、どのように、どうするのか" の取り決めごとをまとめたものです

非常事態に遭遇して冷静に判断できない状況でも、各種の計画やマニュアルがあれば行動できます
計画やマニュアルどおりに物事が進まなくても、何かのヒントになります
ヒントがあれば、心が折れそうでも行動できることでしょう

計画やマニュアルを策定するとき、物事を中心に考え、それに基づいて準備することでしょう
そこには "人の心の状態・あり方" という考えが不在となっていませんか

  • 緊迫した状況に自分らや事業が置かれても、速やかに判断して行動を決心することができるか

  • 避難行動が必要な状況にあって、高齢者や障がい者などは、どんな感情や想いとなるのか

  • 自分が負傷していて身体が不自由でも、いつもどおりの心理状態で判断・行動できるか

  • 家族の安否が分からないのに、自宅や職場の復旧に専念できるか

計画やマニュアルで示す全ての事項は、可能な限り、人の心・心理状態を想像して策定すべきでしょう
言い換えると、計画やマニュアルの策定が進まない原因の一つは、ここにあります

  • モノやコトばかり考えず、人の心理・感情を考慮しながら行動の基準を決める

  • その行動基準に基づいて、細部の手順や要領を決め、必要となる備えを準備する

  • いざとなったら、人は、こんな心理状態になるということを研修で伝える

  • 心が折れそうな状態を想定・想像しながら訓練で体験する

このような考え方で策定を進めた計画やマニュアルは、いざという時の "よりどころ" となるはずです

※ 防止効果のある対策も策定できる

災害などの非常事態に備えるための策定だけでなく、事故・事件・不祥事の防止にも役立ちます
人の心理・心のあり様を想像することは、事故等の防止に非常に役立ちます

  • 遅刻しそうで慌てていると、安全確認不足で事故が発生しやすい

  • 人気がなく、建物周囲が雑然としている家屋には空き巣に入られやすい

  • 職場にある現金の管理を一人だけに任せていると紛失や横領の原因となりやすい

これらをイメージできたなら、それを防止する策を講じれば防止できるでしょう

  • 出勤に遅れそうなら、迷わず・早めに遅れることを連絡し、心を落ち着ける

  • 家屋周辺は常に清掃・整理し、夜間ライトなどの設置により警戒していることを示す

  • 職場にある現金の管理は複数名とし、定期的な第三者点検を行う

ちょっとした策で効果がありますので、人の心理・心のあり様をイメージすることが重要です


まとめ

人は、心が折れると何もできなくなります
人がいるから事業が成り立ち、事業を支えます
そんな大切な人たちを守るのは、モノやコトだけでなく、心の支えが重要です

防災計画やBCP、各種マニュアルは、いざという時の道しるべとしての道具でしかありません
その道具を機能させるのは、関係する人たちの存在と相互協力です

どんな非常事態が発生しても、お互いに生き抜くための "よりどころ" を作っておく

防災計画、BCP、各種マニュアルを策定するときに迷ったら、このことから考えてみてください


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