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想定することは備えの一歩

5月25日に東京都から「首都直下地震等による東京の被害想定」が公表されました
前回は東日本大震災の翌年(平成24年)に策定されましたので、10年が経過しています

この10年間、色々な自然災害も発生しましたし、防災にかかわる認識の浸透、技術革新などがありました
また、災害だけでなく、事故・事件からも多くの教訓が得られました

今回の被害想定には ”言われてみたら、そのとおり” なんてことも含まれています
ですが、当たり前のように思えることも、言われてみて気付くなんてことがあることを思い知らされた内容でした

中小企業・小規模事業の中でも社会ニーズが極めて高い社会福祉事業者にとっても災害等の発生を想定しておくべきですが、想定していてもパニックに陥るような事態が発生することは当然考えられます

今回は、中小企業・小規模事業が策定する被害想定ということにスポットを当ててみます

参考サイト:首都直下地震等による東京の被害想定(東京都防災ホームページ)


■ こんな事態を想定していますか

社会福祉事業を運営している方に次の状況を想定して、お尋ねします

事業所がある地域で大きな地震が発生し、家屋や道路、インフラに被害が出ています
自分らの事業所も少なからず被害が出ていますが、何とか事業は継続できそうな状況です
そんな大変な状況の時・・・

  • 通所系の事業所の場合で、毎日通所してきている利用者のご家族から、その利用者の安否確認の連絡が来ましたが、利用者本人が事業所に来ていない場合、どうしますか

  • 訪問系の事業所の場合で、利用者のご家族から直ぐにでも来てもらいたい旨の連絡が同時訪問数の限界を超えていますが、どうしますか

  • 入所系の事業所の場合で、他の介護施設や行政から、要介護者を一時的に受け入れてもらえないかとの依頼が来てますが、どうしますか

  • 利用者や利用者の家族から、被災したことで、しばらくサービス利用費の支払いができないが、落ち着くまで待ってもらいたいとの話がきましたが、大丈夫ですか

自然災害の被害が広範囲にわたる場合、人・物・お金・情報を失うことで、事業の存続をも脅かす事態になるかもしれません
その一方、障害福祉サービスを必要とする人たちのニーズが高まることも考えられます

事業を復旧して継続させるためだけではなく、多くのニーズに応じられるだけの事業体力はあるでしょうか
そもそも、災害などが発生した場合、どんなことが考えられ、自分らの状況がどうなるのかイメージできてますか


■ リスクを想定できるから備えられる

今回の首都直下地震等による東京の被害想定が策定された目的は「今後の都の防災対策の立案の基礎とするため」とあります

前回の策定からの10年間で東京都の防災対策を取り巻く状況や観測には変化があり、古いデータを基にした想定では、今後の防災戦略が立てられないため、改めて見直したというのが趣旨です

つまり、東京都が抱える災害という ”現在のリスク” を見直し、発災した際の対処(備え・構え)も改めて整えようというものです
いわゆる ”リスク管理” と ”危機管理” のために、想定状況を見直したということです

今後、この想定状況を基に、東京都の防災関連計画も見直し、それを受けて防災態勢や防災用資器材の整備が進められることになるでしょう

この活動は、規模は違うものの、中小企業・小規模事業所も同じように事業上のリスク管理と危機管理、各種の事態や事象に対する ”備え” と ”構え” が絶対に必要となります

しかし、事業規模の都合、限られた時間と労力しかありませんので、想定されるリスクの分析や被災した場合の対処などの策定や見直しを事業主や経営陣だけで進めることは、ものすごく大変なことだと思います

そこで、強くお勧めするのは、書籍やネット上にある多くの情報から正確な情報を選んで活用することです
それなりの権威のある人や組織が分析したデータが簡単に入手できます
また、今回の都が公表した資料にも「被害想定における被害の関連フロー」というものが掲載されていますが、そのような参考資料も多くありますので、是非とも活用してください

そして、自分らの事業上のリスクを整理し、そのリスクが現実の危機となったことを想定し、事業や事業にかかわる方々がどのようになるかを想像(想定)してみてください

  • 災害等が発生した際の被害予想などのデータを入手する

  • そのデータを基に事業上のリスクを整理する

  • 整理したリスクが現実の危機となった際に事業や事業にかかわる人々が被る影響を想像して整理する

  • リスクを回避し、災害等の危機に対する備えを整理する

  • 備えるべき事項を整備する

想定できるということは、何らかの対策を講じられるということです
また、これらの整理をすることは、自分らの事業の ”強みと弱み” や ”できること・できないこと” を認識できますので、日ごろの事業運営にも活用できると思います

■ ”風が吹けが桶屋が儲かる” 的な発想も必要

最初にお尋ねした ”被災したときでも頼まれたら” の課題ですが、災害などがもたらす二次的・三次的な想定状況です

事業所の人員や施設・設備に被害があると、事業運営そのものに直接の影響が出ます
その一方で、時間が経つにつれて間接的な影響も出はじめます

一つの事象は、関連する物事に次々と影響を与え続けます
風が吹くという原因は、桶屋が儲かるという結果をもたらすという話ですが、中間の過程にやや疑問はあるものの、あながち間違いではありません

想定できる事象の次には、どんな事象が現れそうなのか、その次には・・・その結果、どうなる というようにイメージを膨らませることが大切です

絶対に ”大地震が起こると、事業が潰れる” という流れにならないように考えを巡らせてください


■ 想定することは無駄ではない

完璧な想定なんかは、預言者かタイムマシンでもない限り無理なことですが、 ”災害と被害なんて、どうなるのか誰も分からないのに想定なんてできるはずない” と言わず、思い付くものから形にし、整理するようにしましょう

最も致命的なことは、”何も考えない、何もしない” ということです
何か少しでも進めた人は、それが的外れであったとしても、何かをしたとうことが後の活動などに反映できます

私の経験上、”すべきことを何もしなかった者は、終わるという結果を残し、何かをしていた者は、結果を求めて終わらない” という人たちを多く見てきました

今回の東京都の被害想定は、その内容・データの妥当性について議論が起こりそうな気配もありますが、最も妥当だと思うのは、被害想定を見直したということと、それを世間一般に広げているということです

被害想定に少しでも興味を持って見た人は、地震災害時に何らかの形で活用することで生き抜ける可能性を高めたと思います

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