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防災訓練には続きがある

毎年9月1日は ”防災の日” です
過去の自然大災害で得た教訓を風化させず、後世までつなぐために定まったものです

この日の前後、各地・各所で避難訓練や自治体レベルの防災訓練が毎年行われます
介護事業・障害福祉事業を営む事業所においても、恒例行事のように教育や訓練を行っていることでしょう

でも、何かマンネリ化しているとか、本当に大丈夫だろうかと思うことはありませんか
毎回同じ訓練で、シナリオどおりに行動できたら、それでOKと満足していませんか

今回は、教育や訓練に関する一つの考え方・やり方についてお話します


■ 防災訓練の後には

例えば、とある介護施設での避難訓練の様子です

【想定状況:震度6強の地震発生】

初動は、職員の指示誘導のもとにテーブル等の下に隠れます
その後、事務所内に所在している人員掌握と火気停止、防災用携行バッグ等を取り出し
職員が安全な経路を確認しつつ、所在の利用者全員を地域の避難場所に誘導しながら移動
避難場所に全員が集合したところで、状況を終了して施設に帰りました

帰った後は、訓練の後片付け、訓練参加の職員から意見等を聴取しました
職員の意見等は、パソコンでデータ入力して、”防災訓練” というフォルダに保存
そのデータを元に、訓練記録のデータ入力、印刷して記録用ファイルに綴り込みました


この施設では、このような訓練を毎年行ってきましたが、いかがでしょう
基本的な行動を職員全員が体験しておくという目的は果たせたことでしょう
また、職員の意見を鑑み、不具合があたところは改善していくことでしょう

強調しておきますが、このような訓練が悪い例というわけではありません
ただ、BCPを踏まえた訓練となると、足りないことが多くあるというだけです

それは、”防災訓練の想定状況には続きがある” ということです
災害発生当初の人命と財産の保護の後の事業を続ける活動を訓練するのが、BCPを踏まえた訓練の考え方です

とある介護施設の訓練を例に、想定されるその後の状況とは・・・

  • 想定される状況

    • 施設の一部が破損した

    • 介護に必要な設備機材の一部も破損した

    • 電気・水道が止まっている

    • 電話が使えない

  • 次の活動をどうする

    • 一時的でも、避難場所で利用者を保護する際のはどうする

    • 施設や避難場所に所在していない職員や利用者の所在と安否をどのように確認するか

    • 職員を全員集めるのか、動ける職員だけで活動するのか

    • 今いる利用者に対するサービスの提供をどのように続けるのか

    • 新たに要介護者等が支援を求めてきたら

    • 今ある備品等の備蓄を使い果たす前に、どのように調達するのか

防災初動の後には、絶対にあってほしくない・あってはならない事態が続いているのが現実の災害です
この ”事態が続いている” で事業を継続させる活動を演練するのがBCPの訓練というわけです


■ BCPの訓練の一例

BCPを踏まえた訓練も避難訓練のように、時間を設けて全員が参加できればいいのですが
恒常業務もありますので、そんなに時間と労力をかけている暇がないことでしょう

それでも、定期的な訓練で防災意識と避難行動などで経験を積むことができるように
業務・事業の継続のために必要な機会と捉えて、少ない人数・短い時間で新たな経験を積ませるようにします

そこで、一つの訓練の方法について紹介します
いわゆるグループワークというもので、頭の中の体操のようなものです

【業務継続グループワーク】

  • 訓練の目的
    事態発生後も業務・事業を継続させる意思の強化

  • 到達目標
    ・防災訓練等では知り得なかった・思いつかなかった事項への気付き

  • 参加規模
    訓練グループ:4~8名程度
    全般統制:1~2名

  • 訓練時間
    1~2時間

  • 訓練場所
    事務所内

  • 必要資材等
    ・デスク、チェア、ホワイトボード又は大きめの紙、ペン
    ・個々にメモ帳と筆記具

  • 事前準備
    ・災害の種類、想定する被害状況、発災直後に行ったことなどを ”シナリオ票” として書き出す
    ・シナリオ票を参加者全員に事前に配布する
     訓練の数日前に配布し、個々に訓練の準備を進めても結構です

  • 実施要領
    ①開始前に訓練の目的と実施要領を全員に周知する
    ②開始時、全員でシナリオ票を元に状況認識等を再確認
    ③次に発生しそうな事象を一人ずつ順番に発表
     ”あっては困る・絶対に避けたい事象” を8件ほど拠出する
     (ホワイトボード等を使用して列挙表示)
    ④提示された事象に対して何ができるかをグループで考える
     1件ごとに考えるが、1件あたり3~5分間で考える
     考えがまとまらなくてもOK
     (ホワイトボード等を使用して列挙表示)
    ⑤小休止(10分程度)
    ⑥拠出された事象とその対処を見直して整理する
     (ホワイトボード等を使用して列挙表示)
     ・事前に対策や備えが講じられるもの
     ・代替・代用・代理でまかなえそうなもの
     ・その時々の判断によるものは、その基本方針
     ・以上が整っていれば業務・事業が継続できるか否かの評価
    ⑦ワークの終了:グループ員から感想や意見を聴取

  • 実施後
    拠出された事象ごとの対策や対処、意見等を整理して記録
    防災計画やBCPの策定や見直しに活用する

目的・目標、参加者数に応じて内容を変えても良いでしょう
自宅にいる職員をオンラインで参加させることもできるでしょう
また、日ごろからの懸念事項・要検討事項のなどの現実を提示しても構いません

ワークを進めるにあたって一番大切なのは、皆が同じ認識と状況のもとで ”考えること” にあります
日ごろ漠然とした考えをワークで明確にさせることで、現場対応力の強化を図ることができるでしょう

このように、ちょっとしたワークでも効果が期待できます
いつもの定例的な訓練(反復訓練)も大切ですが、それで終わりにしないようにしましょう


■ まとめ

現実の災害に ”状況終了” はありません
災害から被害を最小限にする防災活動の後には、被害復旧と業務・事業と生活の継続があります

防災訓練の後に、業務・事業を継続するための訓練などを行うことには大きな意義があります
ちょっとした時間と労力でも効果がありますので、是非とも行っていただきたいと考えます

やり方が分からなければ、日ごろの業務・事業の運営と同じように情報を入手すれば良いだけです
ネットや書籍から情報が得られますし、専門家からアドバイスを受けることもできます

せっかくの防災の日という機会を、絶好の機会と捉えた活動を進めていただきたいです


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