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お酒の特別な貯蔵法(手続きの話)

 10月1日は日本酒の日。この間までは新たな酒造年度の始まりの日だった。今年の収穫米での仕込が始まる。
 造りが始まることで、新酒への期待が高まるが、この時期に出荷される日本酒は、夏を越して最も飲み頃の品質となる。全国の国税局による鑑評会の対象酒でもある。

 日本酒にとって、夏の間の貯蔵方法は重要であり、各蔵元では熟成のさせ方を工夫し、中でも特別なものはニュースとしても取り上げられる。
 暑い夏の間貯蔵する場所は、風穴や鍾乳洞内、湖底など自然を生かした、消費者が涼しさをイメージする場所への貯蔵が多い。天然で電力も消費せず、一定の低温でゆっくりと日本酒が熟成していくイメージを醸し出す効果もある。
 また、最近は、これらの場所を使って、長期熟成させることも行われている。

【貯蔵する場所の話
 蔵元は好き勝手に、販売用のお酒をどこにでも貯蔵していい訳ではなく、貯蔵する場所によって手続きが異なる。
 販売用のお酒を貯蔵できる場所は次の二通り。
 ① 税務署から許可された酒類製造場内(みなし製造場は含まない。)
 ② ①以外の場所
 手続面では、①の酒類製造場内は、通常のお酒となんら変わらないので特に負担が増えることはない。
 お酒の製造場以外の場所でのお酒の貯蔵は、税務署に対する手続きが必要になる。
 ②の場所に貯蔵場所を設置する場合に、方法は次のとおり大きく二つ(細かくは三つ)、手続きも異なる。
 A 酒税を課税していないものを置く場所:「蔵置場」(設置は許可)
 B 酒税を課税したものを置く場所:「蔵置所」(設置は届出)

 ここで、酒税の課税方法について、少し説明すると、酒税は、お酒の製造を許可された場所(酒類製造場)から搬出(移出)すると同時に課税される。逆に搬出したお酒を酒類製造場に搬入(戻入)したときは、課税された酒税分を、申告して支払う酒税の額から差し引く(酒税を戻す)というシステムを取っている。
 Aの場所「蔵置場」は、酒税法28条「未納税移出」の規定で、設置要件に該当し税務署長から許可されれば、酒税を課すことなく製品の移動ができる場所。
 Bの場所「蔵置所」は、酒税法43条の規定であり、設置要件に該当していれば、税務署長に届け出ることで設置可能。
 蔵元としてコスト面を考えると、貯蔵によって商品化までに時間がかり、現金化は遅くなる。また、貯蔵によるコストも増加するため、販売目的ではない出荷で酒税は課税されたくない。酒類製造場から搬出しても課税されない場所で貯蔵したいのであるが、税務署は許可しないことが多い。
 許可しない理由として、施錠できるなど隔離された場所であることなどが必要なため、自然を利用した貯蔵場所では、許可条件を満たせない場合が多いこと。また、「蔵置場」の設置要件が限られており、「貯蔵のため」という理由の要件はない。あえて該当させるとすれば、自社内に貯蔵スペースがない「製造場狭あいのため」を要件とするほかにない。

【表示の話】
 
商標や原材料などの表示方法は「酒税の保全及び酒類業組合に関する法律」(略称:酒類業組合法)の規定で、製造場から移出する際に表示しなければならいとされている。
 では、雪中や洞窟、湖底など貯蔵のために製造場から搬出する日本酒への表示はしなければならないのか。ラベルを貼っても、販売目的ではないので消費者利益にはならないし、貯蔵中に濡れるなどして剥がれるため、費用が無駄になるなどマイナスが多い。
 先に記述したAの場所への搬出は、表示の義務はないためラベル表示などは必要がないが、Bの場所への搬出は、通常の出荷と同様に、ラベル表示どなをしなければならない。課税による出荷の場合には、表示を省略できる規定がない。
 Bの場所で貯蔵した日本酒の製造年月表示は、詰替えをしない限り当初のままである。特別な貯蔵であるにもかかわらずである。

【特別な日本酒】
 特別な貯蔵した日本酒には、ストーリー性が必要。そのストーリーの裏には、蔵元のご苦労がある。
 購入される方々に、蔵元のご苦労を理解してほしい訳ではない。わかってほしければ、蔵元がPRしている。目的はそこにはない。
 中小酒蔵は、租税特別措置法の軽減税率によって、酒税が軽減されているが、長年の適用により、酒蔵ももはや織り込み済み。さらには納価を上げられない状況。
 であるならば、蔵置場の取扱いも「通達」。製造コストを下げる政策は、補助金、支援金だけではない。国税庁は各種手続きをこの際見直してほしい。

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