「時を超えるイヴ・クラインの想像力:不確かさと非物質的なるもの」(2022年10月2日,金沢21世紀美術館)
本日は,昨日金沢21世紀美術館で始まった企画展「時を超えるイヴ・クラインの想像力:不確かさと非物質的なるもの」を観てきました。
この展覧会は,21美の長谷川祐子館長とビノー・コレクションのCEO,エマ・ラヴィーニュという人の共同企画で構想されたもので,21美の半分以上の展示室を使った,大々的な展覧会でした。イヴ・クラインについては,昨年度,21美で行っていた「BLUE」という展覧会の時の関連イベントとして行われた,小林康夫氏による講演会で名前を知って以来,注目をしていました。自ら開発した「インターナショナル・クライン・ブルー(IKB)」という青の顔料が有名で,その色を貴重とした展覧会ならきっと楽しめるだろうと思い,鑑賞してきました。
というわけで,展覧会全体の基調色がIKB。どの部屋も青系統の色が重要な役割を果たしていました。特に予備知識がなくても,この色の魅力で直感的に展示作品を楽しめるような内容でした。展示室ごとにタイトルが付いているのも特徴で,イヴ・クラインの作品を色々な観点から紹介するような構成になっていました。アクションペインティング的な作品,書道を思わせる作品,火をテーマにした索引...「青の顔料」以外にも色々なタイプの作品が紹介されていました。クラインは日本に滞在していたこともあるそうで,金色を使った作品もあり,シンプルな構成と合わせて,作品には和風に通じる要素も感じました。
それにしてもこのIKBは「非自然的」な色です。自然界には全くない非日常性を感じさせてくれます。その一方,金沢市民にとっては,成巽閣の「群青の間」を思い出させる部分もあり,非日常でありながら親しみを感じるようなところもあると思いました。
いくつかの作品は撮影可でした。次の写真はIKBの顔料を敷き詰めた作品。よく見えませんが,垂直に青い「棒」のようなものが「雨」のような感じで複数本ぶら下がっています。
作品の中には,絵画なのか 立体作品なのかという作品もいくつかありました。クラインと親交のあった,ルーチョ・フォンタナの「空間概念」(単色に塗られたキャンバスに大きな切り傷が2つ入っているおうな作品)もそういう作品です(大原美術館に飾ってあった「赤い空間概念」とは別の色)。このシリーズには,何故か引きつける不思議な魅力があると思います。
今回の展示の中には,現代作家の新作のような作品も一緒に展示されていました。いちばんインパクトが強かったのが,展示室全体が青くなっていたハルーン・ミルザの作品。下の写真で見える白い線は「光」です。
もう一つ印象的だったのが,キムスージャ「息づかい」という作品。光庭のガラスにフィルムを貼ることで,プリズムのような感じで陽光が虹のように変換されていました。本日は快晴だったので,大変きれいでした。常設展示にしても面白いかもと思わせる,絶好撮影スポットになっていました。ついつい何枚も撮ってしまいました。
この展覧会は,来年3月までやっているので,あと数回,また違った天候の時に行ってみたいと思います。それにしても本日は良い天気。21美の恒久展示の数々もその魅力を発揮していました。
特に白い壁面+その影のコントラストがとても美しく,これが本日いちばんの「傑作」だったのではと思いました。
PS.イヴ・クライン展の記念に(あまり用途も考えずに),ショップで売っていたIKBの鉛筆を購入。かなり太い鉛筆です。芯の色がIKBならもっと良かったのですが...普通の芯でした。
本当は万年筆のインクなども欲しかったのですが…こちらはものすごく高価でした。
ちなみに個人的にブルーブラックのインクが大好きで,軸が青い万年筆も持っています(上の写真。IKBとかなり似た色です)。近年,手書きは減っているのですが,今でも週に数回は使っています。今回のIKBもそうですが,好きな色を見ると気持ちが「上がる」ところはありますね。
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